教員不足の原因は、教員の過重労働改善が延々と進まないことにある。先月文科省が発表した教員の労働実態調査では、未だ「過労死ライン」(月80時間残業)を超えている教員が中学校で36.6%、小学校で14.2%と高い数値であることがわかった。病気休職の教員は年間5,000人で高止まりし、退職者も後を経たない。過酷な労働環境が認知されることによって、公立教員の採用倍率は、2000年度の13.3倍から2021年度には3.9倍まで低下しており、20年で実に1/3以下にまで激減している。これまで産休や病休の代わりを担っていた非正規教員たちも減ってきている。その一方、最近では、部活による過重労働の改善に取り組む労働組合や、教員の過重労働を招いている法制度(給特法)を問う裁判を闘う教員も新たに出て来ている。現場で働く教員が声を上げることで、教員の労働環境はもちろん、生徒の教育環境の改善にも繋がっていくだろう。
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コメンテータープロフィール
NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。