解説イスラエル軍のガザ攻撃で建物の瓦礫に埋もれる遺体が推定1万体というのは、急に出てきた数字ではなく、毎月積みあがった数字だ。日本の都市とちがって、隣人関係が密接なガザのパレスチナ社会では、ビルが崩れれば、救急隊だけでなく、近隣総出で救助活動にあたる。行方不明者の把握も正確にできる。イスラエルは4万5千発のミサイルをガザに投下し、爆弾の総量6万5千トンに上ることは今春から言われ、ガザで半数以上のビルが崩れた。4月時点での国連推計でガザの瓦礫の総量は3700万トンで、これは東日本大震災の東北3県の瓦礫の推計総量2247万トンの1.6倍である。ガザの救助隊が瓦礫除去を人力で行い、重機が不足していることはイスラエル軍攻撃が始まってすぐから報じられてきた。瓦礫の下に遺体が1万人埋もれている事態は、ガザの人道危機にも停戦にもまともに対応してこなかった米欧日本をはじめとする国際社会の責任と考えるべきだ。
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コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com