Yahoo!ニュース

川上泰徳

川上泰徳

認証済み

中東ジャーナリスト

報告

見解ネタニヤフ首相は「ハマス壊滅」を掲げ、米国もそれを支持しているが、10月の攻撃開始から8カ月になろうとしているのに、壊滅どころか、制圧したはずのガザ北部でなお戦闘が続き、イスラエル軍の死者が出ていることを考えれば軍事的にも政治的にも「ハマス壊滅」は不可能ということである。それはハマスがパレスチナ民衆とつながり、支えられているということを示す。イスラエルはこれまで民衆とハマスのつながりを切ろうとして民間地域への意図的な攻撃を激化させ、大半は非戦闘員である3万5千人を殺害し、住民の大半を難民化させたが、住民の多数がハマスを支持する状況は変わらない。ネタニヤフ氏がなお「ハマス壊滅」を掲げるのは攻撃を長引かせる意図でしかない。休戦交渉での「新提案協議」も、米国がイスラエルに攻撃の停止を明確に求め、圧力をかけない限り、ネタニヤフ氏が首相職を維持するため、「戦争」を続ける時間稼ぎになるだけだろう。

コメンテータープロフィール

元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com

川上泰徳の最近のコメント