見解ガザにいるシンワル氏の殺害は時間の問題であり、組織維持のために政治局長を海外に置いてきたハマスが、ガザにいる同氏を政治局長に選んだ時から殺害は「想定内」だったはずだ。殺害されたとしても「組織の弱体化」とか「戦闘員の士気低下」とはならない。記事でシンワル氏を「奇襲の首謀者」とするが、それはイスラエルの主張であって越境攻撃は軍事部門カッサーム軍団の決定であり、政治局長のシンワル氏の主導ではない。シンワル氏は強硬派の政治局長ではあるが、9月に発表されたパレスチナ世論調査で「越境攻撃は正しかった」とするガザの世論は初めて過半数を下回り、ハマスも強硬論からの転換を迫られている。シンワル氏殺害が事実なら、停戦交渉でイスラエル軍の完全撤退などの原則を曲げても、戦闘停止を優先するという民意を反映した柔軟路線に転換する契機となるだろう。それは戦闘を終わらせるためであり、抵抗運動の継続に変わりはないだろう。
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コメンテータープロフィール
元朝日新聞記者。カイロ、エルサレム、バグダッドなどに駐在し、パレスチナ紛争、イラク戦争、「アラブの春」などを現地取材。中東報道で2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。2015年からフリーランス。フリーになってベイルートのパレスチナ難民キャンプに通って取材したパレスチナ人のヒューマンストーリーを「シャティーラの記憶 パレスチナ難民キャンプの70年」(岩波書店)として刊行。他に「中東の現場を歩く」(合同出版)、「『イスラム国』はテロの元凶ではない」(集英社新書)、「戦争・革命・テロの連鎖 中東危機を読む」(彩流社)など。◇連絡先:kawakami.yasunori2016@gmail.com
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