見解事故に遭われた患者さんとご家族に心よりお見舞い申し上げます。 医療事故の調査は再発防止のために行われるものであり、責任の追求と補償は別に考えるべきとされています。あくまで報道からの情報ですが、補償は別に行うこととし、再発防止のための対策を立てている点で、国際水準にのっとった事故調査が行われたものと思われます。 日本の医療事故では、多くの場合特定の個人の過失の有無を調べないと補償の請求ができないこともあり、特定の個人を原因とする調査を行いがちで、大きな問題になっています。誰かの責任を追求するための調査では、罪を問われたくないために、情報が隠される可能性があります。これでは医療安全は達成されません。補償と医療事故調査の分離、ひいては業務上過失致死傷罪のあり方を考え直すことが必要だと思います。
コメンテータープロフィール
1971年横浜生まれ。神奈川県立柏陽高校出身。東京大学理学部生物学科動物学専攻卒業後、大学院博士課程まで進学したが、研究者としての将来に不安を感じ、一念発起し神戸大学医学部に学士編入学。卒業後病理医になる。一般社団法人科学・政策と社会研究室(カセイケン)代表理事。フリーの病理医として働くと同時に、フリーの科学・医療ジャーナリストとして若手研究者のキャリア問題や研究不正、科学技術政策に関する記事の執筆等を行っている。「博士漂流時代」(ディスカヴァー)にて科学ジャーナリスト賞2011受賞。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。近著は「病理医が明かす 死因のホント」(日経プレミアシリーズ)。