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40代男性、嫁姑の折り合いが悪く母はケアハウスへ。「認知症」が悪化し1年で「退去勧告」も居座れる?

太田差惠子介護・暮らしジャーナリスト
イメージ画像(写真:イメージマート)

 離れて暮らしていた親との同居。良かれと思っての決断であっても、さまざまな事情で折り合いが悪くなるケースもあります。なかには、配偶者と親の関係がうまくいかない場合も。そんなときに、親から「施設に入る」と言われると、子としてはほっとするかもしれません。ところが、高齢者施設はずっと暮らし続けることができるとは限りません。Eさんの母親も、せっかく自ら施設に入居したのに、1年もたたないうちに退去勧告を受けました。

Eさんの事情:退去勧告を受けているケアハウスに居座れる?

「母(70代)の身体が弱ってきたので僕らの家に呼び寄せて同居を始めたのですが、妻との折り合いが悪くて困っていました。そんなとき、母の妹がケアハウスに入居したのです。妹の様子を見に行った母が、『良いところ! 私も入る!』と言ったのです。

◎Eさんの選択

「母親の意向を尊重し、母親はケアハウスに入居。やれやれと思っていたのですが、1年もたたないうちに施設から『出ていってください』と連絡が来て困っています。このまま居座れないかな」

【解説】

退去勧告を受けた理由

 Eさんの母親は、ケアハウスへ入居後に認知症が進行しました。妹のみならず、他の入居者とのトラブルが生じて、施設から退去を要請されているそうです。

年齢とともに必要な介護は増える

 認知症の有病率は年齢が上がるほど高くなります。

 つまり、施設に入居後に認知症を発症したり、重度化したりすることがあるといえます。認知症に限らず、介護の必要度合いは加齢とともに高まっていくことが考えられます。 施設の介護力によっては、十分なケアを行えないケースもあるでしょう。

 高齢者施設は、大きく「住宅型」と「介護型」に分かれます。Eさんの母親が入居しているケアハウスは住宅型です。通常、住宅型では手厚い介護を行える体制にはなっていないのです。

契約書や重要事項説明書をしっかり確認!

 契約書や重要事項説明書には、退去となる要件が書かれているはずです。

 契約する前に、それらの書類をしっかり読み込み、わからないことは施設側に確認することが大切です。

 Eさんのケースでは、母親の状態が契約書に記載された項目に該当するなら、 居座ることはできません。

 新たな施設を探すか、自宅に連れて帰るしかないでしょう。

 ただ、もともと家族との折り合いが悪かったというなら、自宅に戻すことは現実的ではないかもしれません。特別養護老人ホームや介護型の民間施設に移るケースが一般的です。

<用語説明>

●ケアハウス

 家庭環境や経済状況などの理由により自宅での生活が困難であり、生活に不安のある高齢者向けの住まい 。

「住宅型」と、特定施設の指定を取った「介護型」がある。 食事や安否確認、レクリエーションなどのサービスを提供。原則 、個室で、食事は食堂で提供される。所得の低い人でも安心して生活できるよう助成制度を利用できる福祉施設という位置づけ。

『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』P81
『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』P81

●住宅型・介護型

 ケアハウスや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅には、「住宅型」と特定施設の指定を取った「介護型」がある。「住宅型」で介護が必要な状況になった場合は、在宅のときのように、外部の介護サービスを別途契約して利用する。「切れ目ない介護」は受けられないため、認知症が進行したり、介護の必要度合いが重くなったりすると住み続けることが難しくなり、「退去勧告」を受けることがある。

●重要事項説明書

 施設の概要や職員の配置状態、サービス内容、利用料など、施設選びに欠かせない情報をまとめた詳細な書面。見学時など早めにもらって不明点を確認したい。

※この記事は2024年11月7日に発売された自著『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』(翔泳社)から抜粋し一部改編し転載しています。

介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会)の資格も持ち「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年遠距離介護の情報交換場、NPO法人パオッコを立ち上げて子世代支援(~2023)。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第3版』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版』(以上翔泳社)『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)『知っトク介護 弱った親と自分を守る お金とおトクなサービス超入門第2版』(共著,KADOKAWA)など。

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