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土砂災害から身を守る!防災士が教える3つの危険な前兆と避難のタイミング

栗栖成之防災士ライター
出典:イラストAC

土砂災害は、3つの種類に分かれます。そのため、土砂災害ハザードマップにおいても「急傾斜地の崩壊・土石流・地すべり」に分かれて表示されます。

今回は、土砂災害の種類と前兆現象、命を守るポイントをお伝えします。

土砂災害の平均発生件数は、年間1,499件にもおよぶ

出典:政府広報オンライン 土砂災害から身を守る3つのポイント あなたも危険な場所にお住まいかもしれません!
出典:政府広報オンライン 土砂災害から身を守る3つのポイント あなたも危険な場所にお住まいかもしれません!

政府広報オンラインでは国土交通省のデータを用いて、上記のように「直近10年間の土砂災害発生件数」を公開しています。

平成30年の発生件数が飛びぬけて多いのは、西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨となった「平成30年7月豪雨」によるものです。

土砂災害が発生する年間の平均件数は1,499件と多く、1日あたり約4件も発生しています。これだけ多いとは、数字を見て驚いた人も多いのではないでしょうか。

種類別では「がけ崩れ」が最も多い、その次に土石流!

土砂災害の種類別に見ると最も多いのが「がけ崩れ」で、次に土石流となり地すべりは、いずれの年も発生件数が少ないのが分かります。

しかし、少ないとは言っても地すべりが起きれば大きな被害となるため、警戒が必要です。

「がけ崩れ」は急傾斜地で起きる!

出典:気象庁リーフレット 土砂災害は何に気をつけないといけないの?
出典:気象庁リーフレット 土砂災害は何に気をつけないといけないの?

「がけ崩れ」は前述したとおり、土砂災害の中で最も起きやすい種類の災害です。どのような個所が危ないのか?また、がけ崩れが起きる兆候を紹介しておきましょう。

  • ハザードマップで急傾斜地の崩壊区域に指定されている箇所
  • 傾斜が30度以上ある斜面は危ない
  • 大量の雨が斜面上側の土地に浸み込むと発生しやすい
  • がけから濁った水が湧き出る
  • がけに亀裂が入っている
  • がけ上から小石がパラパラ落ちてくる
  • がけから音がする

土石流は時速40キロ以上で流れてくる!

出典:気象庁リーフレット 土砂災害は何に気をつけないといけないの?
出典:気象庁リーフレット 土砂災害は何に気をつけないといけないの?

土石流は大雨によって山の斜面が崩れて、土砂が谷にある水や土に混じり合い一気に麓へ流れる現象です。

土石流は時速40~50キロで流れるため、発生すれば一瞬で建物など全てを巻き込んでしまいます。危険な個所と土石流が起きる兆候、次のとおりです。

  • ハザードマップで土石流警戒区域に指定されている箇所
  • 指定個所以外に小さな沢がある個所も危険
  • 山鳴りがする
  • 急に川の水が濁り、流木が混ざり始める
  • 腐った土の匂いがする
  • 降雨が続くのに川の水位が下がる
  • 立木が裂ける音や石がぶつかり合う音が聞こえる

地すべりは広範囲に起きる!

出典:内閣府 防災情報のページ 土砂災害対応型防災マップの特徴より
出典:内閣府 防災情報のページ 土砂災害対応型防災マップの特徴より

地すべりは土砂災害の種類の中で最も少ない災害ですが、発生すると移動量が広範囲となるため、甚大な被害が発生します。

現象としては、斜面の一部または全部が地下水の影響と重力によって、ゆっくりと斜面下方向に移動します。地すべりが発生しやすい個所と兆候は次のとおりです。

  • ハザードマップで地すべり警戒区域に指定されている箇所
  • 地面がひび割れ・陥没が起きる
  • がけや斜面から水が噴き出す
  • 井戸や沢の水が濁る
  • 地鳴り・山鳴りがする
  • 樹木が傾く
  • 亀裂や段差が発生する

土砂災害から命を守る3つのポイント!

土砂災害は地震や大雨で発生しますが、一たび起きれば命を失う確率が高い災害です。そのため、日頃からリスクをしっかり知っておくことが重要です。

そこでここでは、土砂災害から命を守る3つのポイントを紹介します。

ポイント1:自宅が土砂災害警戒区域に入っているか確認しておく

出典:ハザードマップポータルサイト 重ねるハザードマップを筆者加工
出典:ハザードマップポータルサイト 重ねるハザードマップを筆者加工

土砂災害ハザードマップには上図のように、以下の種類の警戒区域が表示されています。

・急傾斜地の崩壊区域(警戒・特別警戒)

・土石流区域(警戒・特別警戒)

・地すべり(警戒・特別警戒)

いずれも警戒区域が黄色で表示、特別警戒区域は赤色で表示されます。もちろん、赤色の特別警戒区域のほうが危険度の高い範囲です。

これらの警戒区域内に自宅が入っているなら、大雨や台風が襲う前に避難所へ移動しないといけません。ただし、警戒区域外であっても自宅付近に、がけ地や沢があれば注意が必要です。

ポイント2:土砂災害警戒情報に注意

出典:気象庁 土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)
出典:気象庁 土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)

土砂災害警戒情報は、大雨による土砂災害発生の危険度が高まったときに、都道府県と気象庁が共同で発表する防災情報です

この発表は「危険な場所から避難が必要な警戒レベル4」に相当するため、早急に安全な場所への避難が必要です。

土砂災害警戒情報は、ラジオやテレビ、防災アプリなどで知らされます。また、気象庁のキキクル(危険度分布)では、1kmのメッシュ単位で危険度を確認できます。

ポイント3:警戒レベル4で全員避難すること!

出典:内閣府防災ページ 新たな避難情報に関するポスター・チラシから抜粋
出典:内閣府防災ページ 新たな避難情報に関するポスター・チラシから抜粋

2021年(令和3年)5月20日から上記のように、警戒レベルが1~5となり警戒レベル4「避難指示」で全員避難が条件です。

従来では避難勧告と避難指示の2つが存在しており、避難勧告が発表されても避難しない方が多く、災害に巻き込まれる事態が多く発生。そのため、避難のタイミングを分かりやすくして「避難勧告」を廃止しました。

警戒レベル5「緊急安全確保」では、既に災害が発生している状況であるため避難は難しく「命が危険な状態」です。必ず警戒レベル4「避難指示」の段階で、全員避難しましょう!

地震で起きる土砂災害は、防ぎようがありません。しかし、予想できる大雨や台風などでは、土砂災害警戒区域や区域近隣に自宅のある方は、警戒レベル4「避難指示」で、確実に避難することが重要です。

早めの避難行動で、自分や家族の命を守りましょう。

防災士ライター

これまで、洪水・土砂災害・地震・津波・高潮など、あらゆるハザードマップを作成。2017年に防災士とひょうご防災リーダーの資格を取得。2014年からWEBライターとして活躍し、現在では経験と資格を活かしてさまざまなメディアに多ジャンルにて記事を投稿中!

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