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「ワールドカップにようこそ」。試合開始からエンジン全開で油断がまったくなかったトルコ

青木崇Basketball Writer
試合開始直後から攻防両面で日本をコントロールして勝利をつかんだトルコ(写真:ロイター/アフロ)

Welcome to the World Cup!

 13年ぶりにワールドカップの舞台に戻ってきた日本に対し、トルコはまったく油断をしていなかった。ティップオフから3分強で13対3とリードを奪い、最後まで試合の主導権を手放すことがないまま19点差で快勝。開始から間もない時間帯で日本が3本連続でターンオーバーを犯したシーンは、「これが世界だ」というトルコからの強烈なメッセージだった。

 オンボールだけでなく、トルコのディフェンスはオフボールでも非常に厳しかった。NBAキャリア11年のアーサン・イルヤソバは、八村塁が得意とするスポットでボールをもらえないように対応。渡邊雄太もウイングでボールをなかなかもらえないことに加え、オフボールのスクリーンを使ったプレーは、パスをもらうはずの選手がディフェンダーにコースを遮られ、ボールが渡るところまで至らない。「スカウティングの部分でかなりわかってしまっているのがあったと思うんですけど、親善試合では(ボールが)もらえていたところが、シンプルに一つ目で壊されてしまっている。スクリーンでも壊されてしまい、ディナイでセットプレーを壊されてしまうというところがありました」と篠山竜青が振り返ったように、日本はショットクロック残り数秒から無理なシュートを何度も打たされていたし、ジェディ・オズマンの「アーサンが八村に対して素晴らしかったし、チームとしてもディフェンスがよかった」という言葉にも納得できる。

 トルコを率いるウフック・サリジャコーチは、日本を徹底的にスカウティングし、速攻で走られることを非常に警戒していた。選手たちにその意識がしっかり浸透していたことは、速攻からの得点で15対11と上回ったことでも明らか。ディフェンスにおける高い集中力について質問すると、サリジャコーチは「その通りだ。日本は本当に素晴らしいチーム。今日は19点差で勝てたけど、決して簡単な試合じゃなかった。速攻で簡単に得点を許すわけにはいかない中で、我々はとても強いパフォーマンスを見せた」と返答。司令塔として8アシストを記録したドグス・バルバイも、「ディフェンスでいい仕事ができたと思う。速攻に持ち込んだ時の日本は、非常に危険なチームになって大量得点を稼ぐからね。でも、我々はしっかり分析と準備をしてきたし、日本をタフな状況に直面させることができてよかった。我々にとって最もフォーカスしていたことはディフェンスで、オフェンスはその次。ハーフコートのディフェンスはよかったと思うし、ボールをもらおうとする選手をしっかりディナイし、簡単に得点させなかった」と語っていた。

 トルコのフィジカルなディフェンスと質の高いハーフコート・オフェンスによって、この試合での日本は世界レベルで戦うことの厳しさを真正面から受けたと言える。ファジーカスが「自分たちはトルコに100%の力を出させたと思う。“ワールドカップにようこそ、最高レベルのバスケットボールにようこそ”ということだね」と語れば、渡邊雄太も「トルコがフィジカルなディフェンスをしてくることも、ハードにディナイすることもわかっていた。準備はしっかりやってきたつもりだけど、フィジカルで相手が上だった。でも、僕たちにとってはいい経験になったし、ここから学ぶしかない」と話したように、この敗戦を悲観的に捉える必要はない。

 ただし、3年前の五輪最終予選で対戦した際、71対87で敗れたチェコとの次戦は、2次ラウンド進出への希望をつなぐビッグゲームというだけでなく、東京五輪で世界レベルの戦いができるチームへと成長するうえで大きな意味を持つ。トルコから送られた強烈なメッセージを無駄しないためにも…。

 

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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