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イスラエルのホロコースト博物館「戦前のユダヤ人五輪選手」の写真や動画展示 ほとんどが収容所で殺害

佐藤仁学術研究員・著述家
1928年アムステルダム五輪での体操選手で前列はユダヤ人選手(ヤドバシェム提供)

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが支配下の欧州で約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。イスラエルのエルサレムにある、ヤド・バシェムは第2次大戦時にナチスドイツによって殺害されたユダヤ人らを追悼するための国立ホロコースト博物館である。

そのヤド・バシェムが2021年7月の東京五輪開催を機に、第二次世界大戦前のオリンピックで活躍したユダヤ人の選手らをオンラインで紹介している。「Jews and Sports Before the Holocaust: A Visual Retrospective(ホロコースト前のユダヤ人とスポーツ:バーチャル回顧展)」というタイトルで、世界中からアクセスできる。

スポーツの種目ごとに、活躍したユダヤ人選手らのモノクロ写真や当時の貴重な動画を掲載している。またユダヤ人選手のホロコーストによる、その後の運命も紹介されているが、ほとんどのユダヤ人選手が絶滅収容所で殺害されてしまっている。

1928年のアムステルダム五輪で体操で金メダルを受賞したエステラ・アグステリベ選手は1943年にアウシュビッツ絶滅収容所に移送されて、2人の子供と一緒に殺害されてしまった。アグシテリベ選手のアムステルダム五輪での体操競技の貴重な動画も公開されている。

ヤド・バシェムの広報担当のダナ・ポーラス氏は「何世代にもわたって、ユダヤ人の選手は各国のあらゆるスポーツ種目で活躍してきました。東京五輪にも多くのユダヤ人選手が出場しています」と語っていた。

戦後70年以上が経過しホロコースト生存者らの高齢化も進み、多くの人が他界してしまった。ヤド・バシェムなど世界各地のホロコースト博物館では、当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。

ホロコースト前のユダヤ人らの当時の写真や動画はとても貴重である。オリンピック選手だから、多くの写真や動画が各国の当局や放送局などに保管されて、現在まできちんと公式の記録に残っている。このようにホロコースト前の写真や動画と本人の名前が一致して、デジタル化されて現在まで残っているユダヤ人は恵まれている。

ホロコーストで殺害されてしまい、家族や親せきごと殲滅されてしまった人も多い。そしてホロコースト前の写真が一枚も残っていない生存者や、写真が残っていても、その写真が誰なのか全く手がかりがなくて、わからないユダヤ人もとても多い。

▼1928年のアムステルダム五輪で体操金メダルを取得して1943年にアウシュビッツ絶滅収容所で殺害されたユダヤ人のアグステリベ選手

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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