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サントリーが6度目優勝へ王手。意図した「アンストラクチャー」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ボールを追いかけるバレットは現役ニュージーランド代表の司令塔(写真:つのだよしお/アフロ)

 サントリーは5月16日、日本最高峰ラグビートップリーグのプレーオフ準決勝でクボタに26―9で勝利(大阪・東大阪市花園ラグビー場)。23日の決勝(東京・秩父宮ラグビー場)ではパナソニックに挑み、最多記録となる6度目の優勝を目指す。

 この日は鋭い出足の防御の裏に、正確なキックを放った。接点は攻守両面でコントロール。わずか1トライながら快勝した。

 試合後のオンライン会見は、リーグ側の回線トラブルの影響で大幅に短縮(長距離を伴う試合があった場合、チームの帰りの新幹線の時間は決まっていることが通例)。サントリー側ではミルトン・ヘイグ監督、中村亮土キャプテンが話した後、選手4名が談話を残した。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ヘイグ

「(途中まで日本語で)いいゲームでした。前半は、いいキックディフェンスをしました。後半はプレッシャーを相手にかけ、いい結果が得られてよかった」

中村

「きょうはクボタという素晴らしいチームに対して準備してきたことが出せた。すごくいい試合になった。残りは勝っても負けても1試合。もう1週間いい準備をして臨みたいです」

--防御の裏側へ鋭いキックを放っていた。

中村

「キックをしながらテリトリーを取っていくプランもありましたし、これまでディフェンスで課題が多かったなかで、それを修正してノートライに抑えたのが自信になりました(隣のヘイグ監督が頷く)」

--キックには相手を背走させる意図があったのか。

中村

「キックか、パスかの判断を(状況に応じて)しますので、クボタさんのディフェンスはよく、簡単にはゲインできないと思ったので、キックを蹴ってアンストラクチャー(混とん状態)を作って、自分たちのゲームに持ち込んでいく…と」

--自軍がトライを奪った直後にあたる前半36分、自陣深い位置で鋭いタックルを放つやすぐにジャッカルを決めました。

中村

「僕の役割は(防御ラインの)外側で内側をコントロールしてディフェンスすること。穴を見てピンチの箇所を埋めていくことも、(自身が)できるところ。そういう判断をしながらいいディフェンスができた。僕だけじゃなく、他のメンバーとつながってディフェンスできたのがよかった」

--ジャッカルは多かった。

中村

「特に意識したことはないですが、ブレイクダウンのバトルはクボタさんも強みにしていますし、そこで負けたら勢いに乗られる。そこで負けないようにしよう、とは話していました」

--0―3とリードされていた前半20分、スタンドオフのボーデン・バレット選手がドロップゴールを決めました。

中村

「あれは、彼の判断です。膠着状態だったので、メンタルのところではだいぶ楽になった。気の抜けない試合展開が続いていたので、点を取った後のハドルでは毎回『キックオフから集中してやっていこう』と話していました」

--クボタの大きなフォワードに対し、ラインアウトでクリーンなボールを出させなかった。

ヘイグ

「タイ・マカイザックコーチが6か月間、フォワードたちと準備してきています。クボタさんはラインアウトが強み。リズムを与えないようプレッシャーをかけるプランがあり、考えてディフェンスしていた。相手のリズムに乗らせなかったのはよかった。相手がラインアウトを捕った後もプレッシャーをかけ、いい形で攻めさせなかったのがよかった」

--ディフェンスがよかった。エッジでのコリジョン。

ヘイグ

「(NECとのプレーオフ2回戦では)最後の20分くらいのディフェンスがハッピーではなかった(合計31失点)。そこから時間もあったので、1対1のタックルにフォーカスし、トレーニングを積んできました。主将の亮土がしっかりとディフェンスを引っ張りチームとして1対1でも負けないいいディフェンスができた」

--アタッキングチームが守り勝ったことの意味。

中村

「今季のスタートとして『アタッキングラグビーを掲げるためにもトップリーグで一番のディフェンスチームになろう』と話してきた。毎試合の課題を修正しながらベストなディフェンスができて、よかったと思います。パナソニックさんもアタック力のあるチームですが、自信を持って臨めそうです」

--パナソニックへのイメージは。

ヘイグ

「ディシプリンが素晴らしく反則が少ない。自陣ではあまりプレーしたくないチームだというイメージです。ディフェンスも強いチームですが、自分たちはアタックでチャンスを得点に繋げることを確実にやらないといけない。またこちらも選手全員が努力してディフェンスで相手に失点されないようにすることが大切だと考えています」

中村

「対パナソニックのプランはありますが、サントリーが積み上げたものをしっかり出せる準備がしたいです」

--試合後、対するクボタのフラン・ルディケヘッドコーチと話し合っていました。

ヘイグ

「ルディケとは彼が来てから特に今季素晴らしいラグビーをしているので、称賛の言葉を伝えました。今日についての感謝もしました」

--今回は2日前に大阪入りしています。

ヘイグ

「準備のための時間もあったので、移動も2日前にした方がよりフレッシュに戦えることで、早めに入りました」

スタンドオフボーデン・バレット

「決勝へ進めて嬉しく思っています。プレーオフでタフになることは想定していましたし、チャンスを得点に繋げないといけなかった。ともに戦った仲間たちを誇りに思っています」

スクラムハーフ流大

「質の高いクボタというチームに対して準備してきたことを出せて、残りの1週間を勝ち取れてよかったと思います」

ウイング江見翔太

「1週間しっかり練習してきたことがグラウンドで出せた。チームメートのみんなと準備をして、いい試合ができたと思う」

フランカー小澤直輝

「チーム全員で準備した結果。また次に向けてしっかりと出したい」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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