Yahoo!ニュース

iPhone用レトロゲーム機エミュレータ、アップルが解禁!まもなく初代プレステゲームも遊べる可能性

多根清史アニメライター/ゲームライター
(写真:ロイター/アフロ)

今月初め、アップルはApp Reviewガイドラインを改訂し、App Storeでのレトロゲーム機エミュレータ・アプリの配布を認める一節を追加しました。これまで許されていなかったiPhone用のゲーム機エミュレータ、つまり「元のゲームハードの動作をソフト的に再現する」アプリが、ついに解禁されたわけです。

その後、様々なことがありつつ、数日前には任天堂製ゲーム機(NINTENDO64やニンテンドーDS以前)エミュレータ「Delta」が配信開始。それに続き、まもなくセガサターンや初代プレステ等に対応した多機種エミュレータ「Provenance」がApp Storeでの配信に向けて作業中だと明らかになりました。

ファミコンやGBA、N64やDSまで対応する「Delta」がアップル公認に

Image:Testut Tech
Image:Testut Tech

この「Delta」というエミュレータは、以前から非公式アプリストアAltStoreで配信されていたもの。バージョン1が登場したのが2019年であり、すでに5年ものアップデート・修正を重ね、豊富な機能を備えつつ安定性を実現しています。

少し話を遡ると、iPhone用ゲームボーイ・エミュレータ「iGBA」が一時的にApp Storeに登場。それは単なる無許可クローンアプリであり、パクリ元になったのがオープンソースプロジェクトの「GBA4iOS」。作者のRiley Testut氏がそうボヤいたこともあり、アップルは「機能は承認したが、模造アプリだと分かったから」として削除した次第です。

今回のDeltaはGBA4iOSの進化形であり、対応ハードも機能も増えた決定版と言えるものです。その仕様は、ざっと次の通り。

  • 対応ゲーム機:NES(海外版ファミコン)/スーパーファミコン/NINTENDO64/ゲームボーイ/ゲームボーイカラー/ゲームボーイアドバンス/ニンテンドーDS
  • 対応コントローラー:Nintendo Switch Proコントローラー、Joy-Con/Nintendo Switch Onlineコントローラー(ファミコン、スーファミ、N64)/PS4、PS5/Xbox One S、Xbox Series X/MFiゲームコントローラー/Bluetooth & 有線キーボード
  • ステートセーブ(その場セーブ)や各種チートコード対応
  • セーブデータやコントローラーのマッピング(割り付け)もクラウド経由で同期可能

公開から数日が経ちましたが、記事執筆時点でも問題なくダウンロード可能。完全に無料で広告もなし。ユーザーの行動を追跡していないことはアップルも確認しており、任天堂系レトロゲーム・エミュレータの決定版と言えそうです。

初代プレステやセガサターン対応の「Provenance」も配信準備中

Image:Provenance
Image:Provenance

Deltaの大人気(日本でも無料エンタメアプリのランキングで、TikTokに次ぐ2位)に続くように、やはり有名なレトロゲーム機・エミュレータ「Provenance」の開発者らがApp Storeで配信準備を進めていると明らかにしました

こちらも数年前から非公式アプリストアで配布されていた経緯があり、ぽっと出のアプリではありません。当初のサポート機種はファミコンやスーファミ、セガのメガドライブやゲームギア等に限られていましたが、今では初代PlayStationやセガサターン、任天堂のバーチャルボーイにも対応。

また現在進行形で、PS2やドリームキャスト対応に取り組んでいることも確認できます

Provenanceプロジェクトのリーダーは、App Storeに提出する前に「新ルールを調査」するとコメント。また「ベータ版」にも言及しているため、フル機能のままでは出せない、ないしリリースできない可能性もなくはないようです。

ちなみに、アップルの共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏は、1999年に開催されたMacWorldの基調講演にてMac用のPlayStationエミュレータを大々的に紹介していました。その意味では「解禁」というより、一周回った原点回帰なのかもしれません。

海賊版ゲームデータのダウンロードは絶対ダメ。懲役刑や罰金の可能性あり

これらレトロゲーム機エミュレータには、ゲームソフトのデータは付いてこず、ユーザーが自分で用意する必要があります。

アップルはAppレビューガイドライン4.7にて「レトロゲームのコンソールエミュレータアプリは、ゲームのダウンロードを提供できます」と規定。つまり、アプリにウェブやクラウドストレージからダウンロードできる機能があっても許可されます。

ただし「デベロッパは、アプリで提供されるそのようなすべてのソフトウェアについて、当該ソフトウェアが本ガイドラインおよび適用されるすべての法令に準拠していることを確認することを含め、責任を負うものとします」とのこと。

要はゲームメーカーの著作権を侵害するデータを同梱してはいけませんという、当たり前の原則を確認しています。

また日本では、制作者側に無断でインターネット上に配信しているゲーム等をダウンロードすることは、即違法です。たとえ自分が所有しているゲームだとしても関係なく「侵害コンテンツのダウンロード」として2年以下の懲役または200万円以下の罰金、またはその両方を科される可能性があります

安全かつ合法的に遊ぶ方法の1つは、ユーザーが自作して無料で公開している「ホームブリューソフトウェア」。たとえば「Homebrew Hub」で検索すると、いくつか見つかるはず(ただし使用は自己責任でお願いします)。

もう1つは、所有しているゲームソフトから自分で吸い出すこと。その手段については説明を控えますが、こちらもネットで検索すれば情報は得られるでしょう。

繰り返しになりますが、くれぐれも「海賊版ゲームデータをネットからダウンロードしない」ことは徹底したいところです。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

多根清史の最近の記事