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総裁選で注目の議員票の動向、80名の議員がすでに態度を明らかに

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
「自民党総裁選2021 議員票動向」(作成は筆者)より、画面キャプチャ

自民党国会議員383名のうち、80名の議員が態度を明らかに

 自民党総裁選の告示が17日に迫る中、党員党友票の行方と同時に気になるのが議員票の行方です。自民党の国会議員383人は、1人1票を総裁選に入れる権利を有しています。党員党友票は河野太郎氏がやや優勢も、岸田文雄氏や高市早苗氏との差は想定より開いていないとの日テレ独自調査もあり、議員票の動向にも注目が集まっています。

 筆者は、自民党国会議員の総裁選における支持候補(予定)者の情勢を探るため、議員本人のホームページやSNS、YouTubeなどのコメントをはじめ、全国紙やテレビ、地方テレビ局や地方紙への意向表明を可能な限りモニタリングして、これらの情報を情報源のリンク付きでGoogleスプレッドシート「自民党総裁選2021 議員票動向」にまとめています。14日(火)正午現在、80名の国会議員が態度を自ら表明しています。現時点(14日15時)では、岸田氏支持を表明した議員が37名、高市氏支持を表明した議員が15名、河野氏支持を表明した議員が28名です。

 まだ自民党所属国会議員全体のうちわずか2割程度が表明しているに過ぎませんが、支持している議員の名前からは傾向も見えてきましたので、簡単に解説をしたいと思います。

岸田派の結束力が態度表明でも現れる「岸田文雄」氏

写真:つのだよしお/アフロ

 岸田氏への支持を表明している議員の多くは、岸田派所属です。岸田氏は菅首相が不出馬を表明する前から総裁選への出馬を表明しており、この時点から記者会見などを行ってきたこともあって、岸田派所属議員を中心に支持を表明している国会議員が現時点で最も多い状況です。

 特に記者会見の様子を投稿する若手議員が多いのが印象的であり、党員・党友票向けを意識したSNS活用を若手議員を中心に盛り上げようとする狙いを垣間見ることができます。また、現時点では3候補のうち、支持を表明している議員の平均当選回数(期数)が最も多い(衆議院のみ:4.7回)のも特徴的と言えるでしょう。

細田派を中心に固めつつある「高市早苗」氏

写真:アフロ

 高市氏への支持を表明している議員は細田派が多いのが特徴的です。また細田派以外からも保守系と呼ばれる議員の名前が目立っています。また、現時点では支持議員における参議院議員の割合が最も多い(25%)です。

 現時点では議員票が最も少ない状況ですが、ここ数日でTwitterを中心に表明をする議員も相次いでおり、二階派や無派閥の議員の支持表明も出てくるようになりました。支持を表明している議員の平均当選回数(期数)は衆議院では4.0回で、3候補の中では最も少ないことがわかります。

麻生派や菅グループ、派閥横断にもみえる「河野太郎」氏

写真:Motoo Naka/アフロ

 河野氏への支持を表明している議員は、麻生派に多くみられます。また、菅グループ(ガネーシャの会)や竹下派・石破派にも支持議員がいることがわかります。当初は支持を表明する議員が少なかったのですが、出馬表明記者会見以降、河野氏支持を表明する議員が増えてきているのが特徴的です。

 支持を表明している議員の平均当選回数(期数)は衆議院では4.04回で、高市氏とほぼ同じ傾向です。河野氏の支持は中堅・若手議員が中心のイメージがありますが、麻生派の期数の多い議員も支持を表明していることがわかります。期数の少ない議員はSNSで、多い議員は報道で表明するケースが多いのも特徴です。

議員票も党員党友票を揺るがすベンチマークに

 これらの議員票は、党員・党友票の動向を占うのにも有効です。議員票は29日の議員投票日に投票されるのに対し、党員・党友票は17日の告示後に「はがき」を郵送する形で行われます。多くの党員・党友票は地元国会議員の意向も気にしますし、地元国会議員が党員・党友票に「お願い」を電話や郵送でする形も考えられます。(自民党総裁選はいわゆる「公職選挙」ではないため、公職選挙法の適用外ですから、告示前の電話投票依頼や告示後の封書などでの依頼も可能です)

自民党総裁選挙の日程と仕組み(図は筆者作成)
自民党総裁選挙の日程と仕組み(図は筆者作成)

 コロナ禍で政治集会などが行われにくい状況でもあり、自民党総裁選も地方行脚での演説会開催を見送りインターネットなどでの合同演説会を開催する予定です。1回目の投票で議員票と党員党友票の合計で過半数を取れば、決選投票に持ち越すことなく新総裁が決まるわけですが、そのためにも国会議員票の動向にも注目していきたいと思います。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。

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