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畏れ多くも陛下に球拾いを… イギリス留学時代の友人が明かす意外な素顔

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
天皇陛下と雅子さま(写真:ロイター/アフロ)

 61歳になった天皇陛下は、これからどのような令和の皇室を築こうとされているのだろうか?約37年前に陛下と同時期にオックスフォード大学に留学し、交流があった岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田 創(たかだ はじめ)さんに、当時のことをインタビューした。

■世界屈指のオックスフォード大学の指導法

 2021年の世界大学ランキングで5年連続第1位を達成したオックスフォード大学は、まさに名門中の名門大学。教育指導の特徴は「チュートリアル制度」と呼ばれる、指導教授がそれぞれの学生にテーマを与え、一対一で行われる授業だ。学生は週一回、指導教授とディスカッションを行い、次の週までの宿題が出される。

「アメリカの大学だと、学生が何百人もいる中で授業を受けるのですが、オックスフォード大学はマンツーマンでの指導です。担当の教授が手厚く指導してくれます」

と、高田さんは話す。

 ご留学当時、陛下の指導教授となったのは、オックスフォードとケンブリッジの両大学で博士号を取得し、世界的な知の巨人と言われた経済史学者のピーター・マサイアス教授だった。

 天皇陛下は、このマサイアス先生の薫陶を受け、中世ヨーロッパの交通史をご研究。

 留学を終え帰国直後の記者会見で、陛下はこのように述べられている。

「オックスフォードの生活を通じて自分でものを考えて決定し、行動に移すことができるようになったと思います。この態度はできるだけ今後も続けていきたいと思います」

 自分でものを考えて決定し、行動に移す。ご留学中の経験は、その後の陛下の人生に大きな影響を与えたようだ。

■人生の中で一番自由度が高い時期

 海外の地とはいえ、筆者のような日本人の感覚からすると、陛下がキャンパス内を歩いていたら「日本のプリンスだ!」と騒がれたのではないかと想像するが、これについては高田さんから意外な答えが返ってきた。

「オックスフォード大学には、実は世界各国のプリンスがいましたから、知る人ぞ知るという感じでしたね。アラブの王様の息子もいましたし、アウンサンスーチーさんもオックスフォード大学の卒業生です」

 オックスフォード大学では普通の学生として過ごすことができ、陛下の人生の中で一番自由度が高い時期だったのではないかと高田さんは語る。

 また、陛下は学生生活を送る中で、これまでと違う世界の中に一人で入って行き、友達を作り、人間関係を作り上げていくという経験もされた。文化も習慣も異なる海外の地で暮らしたことは、世界の中の日本や皇室の存在を意識するきっかけとなられたのではないだろうか。

■テニスを通して触れた陛下の素顔

 即位後、天皇陛下が国民から高く支持されているのは、飾らず親しみやすいお人柄もあるのだろう。そうした陛下の素顔が分かるエピソードを、高田さんが話してくれた。

 ある日、高田さんは陛下からテニスのお誘いを受けて、オックスフォード大学の学生たちが使用できるテニスコートに行った。陛下は上級者レベルだが、高田さんはテニスを嗜んだことがなく、案の定、打った球が外れたところに飛んで行ってしまった。

「コートの外へ出た球を、畏れ多くも陛下が小走りで追いかけて拾ってくださったんです。しかも、それが一度ならず何度も陛下に球拾いさせてしまい、とても恐縮しましたが、陛下は何事もなかったかのように、笑顔でコートに戻ってプレーを続けていらっしゃいましたね。本当に申し訳なくて、その日は確実に返すことだけを心掛けました」

と、振り返る。

 高田さんはこの日の出来事で、学生仲間の自分たちに対しても気遣いがある、陛下のお人柄に感激したという。

■陛下が築かれる令和の皇室

 陛下はこれからどのような皇室を築かれるのだろうか。高田さんはエコノミストの視点から、令和の時代、日本は持続性のある姿や世界の中でのプレゼンスが求められると分析。グローバル化がますます進む中において、陛下がオックスフォード大学で経験されたことが今後の国際親善での基礎となり、足掛かりとなっていくのではないか、と考えている。

「令和は陛下が世界の中で、日本の姿をお示しになる時代ではないでしょうか。雅子さまもオックスフォード大学で学ばれた元外交官ですし、両陛下ともにそういったことができる方々だと思います」

 そしてコロナが収束したら、高田さんは両陛下で訪れて頂きたい場所があるという。

「思い出の地、オックスフォードに、ぜひ両陛下で行っていただきたいです。陛下が自転車で通られた小径など、今も昔の路地が残っています。センチメンタル・ジャーニーになるのではないでしょうか」

と語る高田さん。去年春に予定されていた両陛下のイギリスご訪問が延期となっているため、それが実現する可能性もありそうだ。

 陛下の著書『テムズとともに』(学習院教養新書)の中に以下のような記述がある。

「再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まってくれたらなどと考えてしまう」

 まさにオックスフォードは、天皇陛下にとって忘れがたい青春の1ページなのだろう。

前半記事:https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20210223-00221486/

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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