電動自転車の公的助成の効果!車の利用が減少、排ガス削減につながる結果に/オスロ
ノルウェーといえば、電気自動車(EV)の普及先進国として世界的に知られている。減税や駐車場の無料化など、政府による手厚い支援策の効果だ。今、左翼陣営や緑の環境党が権力を握った首都オスロでは、環境に優しい街を目指し、新しい動きが起きている。
「環境のためなら、EVは今後さらに支援していくのだろう」と思うかもしれないが、実はそうでもない。例え、排ガスをださなくとも、車というものは、道路のスペースを独占する。エネルギーが何であれ、「車」というものに対して、緑の党の人々は否定的だ。2019年秋までに目指す、中心地のカーフリー計画でも、一般自動車となる、EVも排除対象となる。
そのため、自転車の利用者をもっと増やそうと、ノルウェーでもほとんど普及していない、電動自転車の支援対策にオスロは乗り出した。
市の環境・通信局は、試験的プロジェクトとして、2016年以降の購入者には、購入価格の20%、最高約6万円(5000ノルウェークローネ)を補助することを決定。結果、約1000人の市民がそのサービスを利用した。
この試みは、実は、地元では報道機関や反対勢力の与党政権などから、「バカげている」と大きな批判を浴びていた。筆者は外国人記者として距離を置いてみていたのだが、「どうして、ここまでバッシングを浴びているのだろう」と、驚いたほどだった。
それには、一部の急上昇中の「緑の党嫌い」派からの抵抗もあった。加えて、決して価格が安くはない、電動自転車を購入しようとする人々には、「富裕層」が多く、補助金がなくても買うことができる。そのお金を、別の政策に使ったほうが合理的だという批判もあった。だが、その点でいえば、EVの支援策を導入した際にも、同じことがいえただろう。
賛成派は、電動自転車を購入するきっかけにしてくれればと、主張していた。
バカにされていたプロジェクトだったが、その結果がでた。交通経済機関は、補助金で電動自転車を購入した669人を対象に調査。3日、下記の驚きの結果が発表された。
- 電動自転車の利用者は増加、車の利用率を16%減少させた
- 補助制度をきっかけに、購入を決意した人は半数に及ぶ
- 普通の自転車から、電動自転車に変えた場合、走行距離が12~18キロメートル増加
- 補助制度をきっかけに、自転車の利用率が30%増加し、その他の交通手段を利用する割合が減少。道路での歩行(マイナス4%)、交通機関(マイナス10%)、車(マイナス16%)
- 補助制度をきっかけに、二酸化炭素の排出量は、1日437グラム(1年で87キログラム)減少
- 他の自治体では、電動自転車の売上率は30%以下。対し、補助制度をきっかけに、オスロでの販売店での売上は50~90%増加した
ノルウェー国営放送局NRKの取材に対し、70歳のクリステンさんは、車を運転することがほとんどなくなったと答える。「とても満足しています。新しい友達ができたみたい。補助金がなくても、購入することはできたとは思います。でも、もっと安い、あまり良くないものを買っていたでしょうね。買おうと決意するまでに、もっと時間もかかっていたと思います」。
ノルウェーは、EVの優遇政策が参考例として他国で注目を浴びている。筆者も、日本の企業などから、よく問い合わせを受けるほどだ。新しい発想なので、批判を浴びがちな電動自転車の優遇政策だが、今後浸透していきそうだ。
国営放送局の取材に対し、環境・通信局局長のベルグ氏は、「今後は車の利用者をターゲットとして、電動自転車のさらなる補助制度を検討していきたい」と回答。車に依存した生活から抜け出せない人々に、新しい選択肢を自治体が提供する構えだ。
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Photo&Text: Asaki Abumi