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【京都市下京区】創業120年の魚屋さんが作る天然魚中心の弁当がめちゃうま 店主は七条活性化のキーマン

HOTSUU地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 「創業は分からへんけど、明治初めの鳥羽伏見の戦いのときに、刀を預けに来た兵士がいたとの逸話もあるし、120年以上は経っとるわなあ」と語るのは、西七条の魚屋さん「魚晴」の店主・岸田智之さんです。現在は七条中央サービス会の会長として、「七条通界隈つながる商店街委員会」会長も務めます。

 この場所で生まれ育ち、幼いころから七条界隈の変遷を見てきました。そんな魚晴の5代目に2023年4月1日、お話を伺いました。岸田さんは、幼いころから家業の手伝いをして育ち高校を出てから2年半、老舗料理屋で修行の後、20数年4代目の下で働きました。

 当時は、「大晦日などは夜中の3時ころまで店を開けとった。会社終わりに、ぶりを毎年1本買いに来る人たちもいて、商圏も広かったわなあ。大型スーパーや量販店もなかった時代やった」のだそう。店を継いでから後も、天然魚しか扱っていないこだわりの魚屋さんであると同時に仕出しも手掛ける二刀流でやってきました。

 しかし、中央市場が近く、八百屋や魚屋などが乱立してもなお、潤ってきた七条通界隈にも時代の流れは容赦なく押し寄せました。商店街でも、「しもたや」と呼ばれる、お店をやめても中に住んではいる現象がみられるようになり、魚屋もまた天然ものの魚もだんだん取れなくなってきて、家庭では魚一匹買って料理することも少なくなっていく中で、店頭販売のいわゆる「前売り」も減少していきます。

 そんな中、新型コロナ禍がさらに追い打ちを掛けてきますが、一方でデイサービスなどの福祉施設などから、安くて美味い「魚晴」の弁当を使いたいと注文が入るように。「時節を見て臨機応変に対応するのも商売の極意、注文を聞いてやってるほうが固いし、何より、うちの味を買いたいとの要望に応じることが、地域のニーズに応えていることになる」と、現在は仕出し中心で営業されています。

 この日も、50個~60個の大量注文で、ご夫婦で一から手作りの弁当作りに追われていました。デイサービスや近所の高齢者向けに、一口大にしたり、あげものはNG、ごく刻み、ひじきやキュウリの酢の物はだめといった細かい要望にも応えなければなりません。

 実はお弁当を一つ食べさせていただいたのですが、魚やだし巻き、おばんざいなど栄養満点な上に、めちゃくちゃ美味い。天然物やなるだけ自然に近いものをといったこだわりは弁当でも健在のようです。毎日でも飽きないようにと、ハンバーグやお肉の日もちゃんとあるのだとか。

 この街を愛する岸田さんは、小学校にゲストティーチャーとして出かけて行くこともあります。「平安時代には西市があり、平清盛や新選組ゆかりの地もある、この辺の街がどういう町か知ってもらいたい」と話します。

 街づくりでは、1つの商店街でできないことをみんなでやろうと呼びかけ、「七条通界隈つながる商店街委員会」を結成して、8つの商店街での共同の取り組みも進めてきました。あるときは魚屋ならぬ一日限りの居酒屋店主として地域交流の場を提供することも。

 「空き店舗を使って、これからの世代に来てもらうとか、工夫して若い人も受け入れていきたい。子どもたちも地域全体で見守っていけるような街にならんとあかんな」と話す岸田さんは、店の前を通る地元の小学生にも必ず声をかけているのだそうです。新型コロナ禍を乗り越え、かつての賑わいを取り戻すべく始まった取り組みはこれからです。

魚晴(外部リンク) 京都市下京区西七条北東野町19 075-313-5364

地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 「YAHOO!ニュース ベストエキスパート2024 地域クリエーター部門 特別賞」を受賞 京都をこよなく愛する地域ニュースサイト号外NETの京都市担当タウンクライヤ―です。四国から大阪の元地方紙記者。観光ガイドをしながら京都時空観光案内2024(観光ガイドのための京都案内マニュアル)全19巻や「やさぐれ坊主京を創る 前田玄以の生涯」(京都文学賞一次審査通過)はじめ、京都を題材にした小説なども執筆しています。

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