藤井聡太二冠が連続昇級!「世代交代」も鮮明に ―第79期順位戦を振り返る―
11日の順位戦B級1組一斉対局をもって、第79期順位戦の全日程が終了した。
A級では斎藤慎太郎八段(27)が8勝1敗で挑戦権を獲得。
注目の藤井聡太二冠(18)はB級2組を10戦全勝で駆け抜け、B級1組への昇級を決めた。
コロナの影響で年間通じての開催が危ぶまれた一年。年明けは緊急事態宣言の中で対局が行われた。
無事に全日程を終了したことに、当事者として感謝の念を抱いている。
20代の躍進
今期も藤井二冠は強かった。前期のC級1組に続いて、B級2組でも10戦全勝。順位戦での連勝は歴代3位タイの21まで伸びている。
来期は「鬼のすみか」と呼ばれる強豪揃いのB級1組で戦うことになる。
A級への昇級とともに、順位戦連勝記録がどこまで伸びるかにも注目が集まる。
タイトル獲得経験のある斎藤八段だが、初参加のA級順位戦でここまで躍進したのは予想を超える活躍だった。
名人戦七番勝負への登場で名実ともに将棋界を引っ張る存在になりつつある。
そして「4強」の一人、永瀬拓矢王座(28)もA級昇級を決めた。局後のインタビューで名人挑戦への思いを語っており、すでに気持ちは来期に向かっている。
昇級者一覧をご覧いただくと、20代の棋士が多いことに気付かれると思う。
その中でも佐々木(勇)七段と高見七段が連続昇級で一気にクラスを上げた。
藤井二冠のライバルと目される増田(康)六段もB級2組に昇級した。
また、C級2組では全員20代かつ関西所属の棋士が昇級した。
これは藤井二冠の影響がありそうだ。身近に藤井二冠がいることで関西の若手棋士にはおおいに刺激になっているのであろう。
先日終了した三段リーグでも関西所属の2人が昇段を果たしたが、それも藤井二冠の影響があるのだと思う。
抵抗する山崎世代
20代が昇級枠を占める中、山崎八段と横山七段の活躍にも目をひかれる。
山崎八段は悲願のA級昇級を果たした。スタートから快調に首位を走り、後半に失速して2連敗でのフィニッシュとなったが、序盤の貯金が生きた。
横山七段もリーグ前半は快調に星を伸ばしていたが、年明けに2連敗。しかし今期から昇級枠が増えた(B級2組は制度変更で昇級が2名→3名に)ことに助けられた。
最終局も不利な形勢だったが、見事な逆転による勝利。終局後になかなか顔をあげられない姿に万感の思いを感じさせられた。
山崎八段と横山七段は同学年。20代の活躍が目立つ中で40歳の2人が意地を見せた。
苦戦する羽生世代とその下の世代
今期は羽生世代とその下の世代が苦戦した。
羽生九段はA級残留を果たしたが、全体では下から3番目の成績だった。
深浦九段のB級2組への降級は、2期前はA級に在籍していただけに衝撃的だった。
羽生世代の3歳ほど年下の世代も苦戦を強いられた。
三浦九段は、長年守ってきたA級の地位を手放すことになった。今期は1勝に終わり、2月の朝日杯将棋オープン戦での活躍など他棋戦の成績を考えると順位戦に星が集まらない一年だった。
同学年の行方九段は、昇級候補の一人だったが開幕から星が伸びず下から3番目の成績に終わった。今期からB級1組の降級枠が3つに広がり、制度変更の影響をモロに受けた格好だ。
野月八段は4勝6敗ながら、下から6番目の成績で降級点がついてしまった。
B級2組も今期から降級点の人数が変更になっており、旧来の制度であれば降級点がつかない成績である。こちらも制度変更の影響を受けた格好だ。
今期は実力が大きく落ちたとは思えない棋士が降級の憂き目にあった。
ちょっとした不調が降級につながるのが、各クラスの実力伯仲ぶりを表している。
来期に向けて
20代が活躍する構図は毎年続いており、それは今後も変わりないだろう。
藤井二冠の影響で関西が盛り上がっており、A級では来期も半数近くを関西所属棋士が占める。これは棋士の比率(関東所属棋士のほうがかなり多い)からすると関西勢強しといえよう。
他のクラスでも関西勢の勢いが続きそうだ。
また今期は実力者の降級が目立った。その分、その棋士たちの巻き返しもあるだろう。
来期もまた熱い戦いが繰り広げられる。
開幕は例年6月だ。そこまでに社会情勢が今より落ち着き、安心して順位戦を指せる、楽しめる状況が広がることを筆者としては願っている。