Suica(スイカ)情報、売るなら運賃割引を
■Suica情報が貴重なマーケティング情報に
JR東日本がICカード乗車券「Suica(スイカ)」の乗降履歴情報を販売していた問題で、25日にJR東日本は記者会見を開き、陳謝するとともに、販売を一時停止する方針を明らかにした。利用者に無断で情報を販売していたことに対して利用者から約150件の苦情が寄せられたことに対応したものだ。
そういうことをやっていたJR東日本の姿勢への疑問も、もちろん、ある。同時に、Suicaの利用情報が「売り物」になっていたということにも驚く。
それを買って、どう利用しようというのだろうか。わざわざ買うのだから、そこから利益を得るために利用するのはまちがい。
JR東日本から情報を購入していたという日立製作所に問い合わせてみた。「購入していたのは、個人情報部分を切り離したものです」と前置きして、利用方法について広報担当者は次のように説明した。
「駅の乗降状況を分析して、その地域に、どの年代の方がどれくらいいるのかという情報に加工していました。そして、それを利用したいというところに販売を開始したところでした」
■JR東日本の安易な姿勢が問題
「利用したいところ」というのは、「たとえば、その地域に出店を計画している飲食店などです」(広報担当者)という。駅周辺に飲食店などが出店する場合、どの時間帯にどういう年代の人が駅を利用するかという動向をつかむことで、集客人数を予想する。それが採算に見合うものなら出店を実行するが、採算が見込めないとのデータであれば出店をみあわせて損を事前に防ぐことができる。
それだけ価値のある情報なのだ。これまでも調査員を立たせて実際に人の流れをカウントさせるなど、いろいろな方法で情報は集められ、使われてきている。
そうしたものの一環として使われようとしていたのだが、「Suica情報を使うのは初めての試み」(日立製作所広報担当者)であり、情報としての質も高いところから商売としては期待されていたようだ。日立製作所では営業を開始したばかりであり、その出鼻をくじかれたような格好だ。
問題化してJR東日本は、売っていたデータに個人が特定される情報が含まれていないことを強調するとともに、「ご要望のお客さまには、社外への提供分から除外できるようにします」とホームページで提示している。ただし、「ご要望」は「お客さま」のほうから連絡しなければならない。
つまり、利用者が手間をかけて連絡しなければ、「了解したとします」というわけだ。ちょっと、傲慢といっていい姿勢ではないだろうか。使わせてもらうには、使うほうが手間をかけるべきである。
そもそもSuicaを利用したところで、運賃に割引があるわけでもない。そのSuicaの情報を売って利益を得るのであれば、情報を渡している利用者に運賃割引などの還元があってしかるべきである。謝れば済むと安易に考えず、利用者からほんとうの理解をえられる方策をJR東日本はとるべきではないだろうか。