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さよならマギー・スミス! 「ハリポタ」のメイン教師、4役5人がこれですべて天国へ

斉藤博昭映画ジャーナリスト
プレミアでのマギー・スミス。ロン役のルパート・グリントと(写真:ロイター/アフロ)

2024年9月27日、イギリスが誇る名優中の名優、デイム・マギー・スミスがこの世を去った。

アカデミー賞2度受賞のほかトニー賞やエミー賞も受賞し、俳優として最高のキャリアを重ねたが、近年の当たり役といえば、やはり「ハリー・ポッター」シリーズのホグワーツ魔法魔術学校副校長、マクゴナガル役だ。

変身術を得意とし、基本は厳しい教師だが、意外に情が熱かったりして、ハリーをクィディッチの選手に推薦したりも。威厳と優しさの美しいブレンドは、スミスならではの味わい。英国俳優の実力を存分に発揮してくれた。

このスミスの逝去で、「ハリー・ポッター」のシリーズ全編に登場したメインの教師役は、すべて天国へ旅立ったことになる。全編登場では、呪文学の小柄なフリットウィック教授役、ワーウィック・デイヴィスが健在(現在54歳)だが、メインどころとなれば、ダンブルドア、ハグリッド、スネイプ、そしてマクゴナガルという面々で、彼らを演じた俳優の姿をもう二度と見ることはできない。

その他のホグワーツの教師では、全編を通しての出番ではない、トレローニー役のエマ・トンプソン、ムーディ役のブレンダン・グリーソン、ロックハート役のケネス・ブラナー、ルーピン役のデヴィッド・シューリス、スラグホーン役のジム・ブロードベントらは、まだまだ現役の俳優として大活躍している。とはいえマギー・スミスのような重鎮の悲報はシリーズファンにとって切ない。

ちなみにマクゴナガルは、7作目『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』には出てこないが、続く『PART2』には登場。この2作はセットなので全編登場と言っていいだろう(フリットウィックも同様)。

リチャード・ハリス
リチャード・ハリス写真:ロイター/アフロ

ハリポタの教師役俳優の死去のニュースで、最初に話題になったのは、リチャード・ハリスである。1作目『賢者の石』、2作目『秘密の部屋』でダンブルドア校長役を務めた後、2002年、72歳でホジキンリンパ腫で亡くなった。『秘密の部屋』は遺作に。この最初の2作で、ダンブルドアはハリーの運命に大きな影響を与えたので、ハリスを失ったことは作品にとっても痛手だった。

しかし3作目『アズカバンの囚人』からダンブルドアを受け継いだマイケル・ガンボンが、俳優の交代を感じさせない力演でシリーズファンを安堵させる。ガンボンはシリーズ終了までハリーらの道標の役割を果たした。そのガンボンも2023年9月27日に肺炎のため死去。享年82歳。奇しくも、その1年後の同じ日にマギー・スミスが後を追うことになる。

「アズカバンの囚人」でダンブルドア役を託されたサー・マイケル・ガンボン
「アズカバンの囚人」でダンブルドア役を託されたサー・マイケル・ガンボン写真:REX/アフロ

そしてハリポタのファンはもちろん、世界中の映画ファンに衝撃を与えたのが、スネイプ役、アラン・リックマンの死であった。2016年、膵臓癌によって69歳の生涯を閉じた。リックマンのスネイプ役は、原作ファンからも絶賛されていた。ホグワーツの教授ながら、死喰い人でもあり、ハリーとの複雑な師弟関係をここまで精緻に表現できたのは、悪役にも独特の人間味をまぶすリックマンの実力に他ならない。生きていれば、まだ78歳。さらに多くの名作を残していたに違いない。

「ハリー・ポッター」のセットでのアラン・リックマン
「ハリー・ポッター」のセットでのアラン・リックマン写真:Splash/AFLO

森の番人から魔法生物飼育学の教授になったハグリッドも、ハリーらの心の拠り所となる人気キャラクターで、演じたロビー・コルトレーンの死去はファンを悲しませた。2022年、72歳で逝去。原作者ローリングの希望でコルトレーンの配役が決まったほど、俳優と役の奇跡の一体感だった。これで2022年から3年連続で教師役の名優が亡くなったことになる。ダンブルドア、スネイプ、ハグリッドはシリーズ8作すべてに登場したので、その喪失感も大きい。

ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンと写真に収まるロビー・コルトレーン
ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソンと写真に収まるロビー・コルトレーン写真:ロイター/アフロ

「ハリー・ポッター」の映画1作目が公開されたのは、2001年。すでに23年の歳月が流れたので、当時、大ベテランだった名優がこの世を去っていくのは無常だが、必然かもしれない。英国の伝統を身をもって体現し、子供たちの指針となる教師たちをそれぞれの個性とともに名演した彼らの演技は、時代を超えて人々の心に残り続けるだろう。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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