向かう先は「処刑場」…脱北者”最期の映像”に息飲む人々
国連で北朝鮮の人権問題を担当するエリザベス・サルモン特別報告官は2日、訪問先のソウルで記者会見を行い、「どんな脱北者であっても強制送還の対象となるのは非常に憂慮すべきことだ」との立場を明らかにした。
これは2019年に当時の文在寅政権が、亡命を求めた脱北漁民2人を「殺人犯だから」として北朝鮮に強制送還した事件を巡る発言だ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の報道によると、サルモン特別報告官は続けて、「強制送還禁止原則は国際人権法、国際条約などでよく整理された原則」であるとし「強制送還された人は拷問の危険にさらされる可能性が高いという立場が国連では確立されている」と強調した。
サルモン氏の指摘を待つまでもなく、この問題については韓国国内においても、違法であるとの主張が根強い。
そもそも朝鮮半島全体を自国の領土としている韓国の憲法によれば、北朝鮮は国家として認められておらず、北朝鮮国民は韓国の国民ということになる。それにもかかわらず、件の2人について適法な司法手続きも行わず、北朝鮮に引き渡してしまう行為は違憲と見なされる可能性が高い。
また、韓国の各種の法律には、同国に入国した北朝鮮国民を、本人の意思に反して強制的に送還できる規定はないのである。
実際、国家情報院は7月、漁民に対する合同調査を強制的に早期終了させた職権乱用などの疑いで徐薫(ソ・フン)元院長を検察に告発している。情報機関が元トップを刑事告発するからには、それ相応の証拠が揃っているということだろう。
こうした状況に加え、仮にサルモン氏が今後、韓国政府に対して文在寅政権当時の関係資料の開示を求めるとすれば、北朝鮮の人権問題から故意に目をそらしてきた同政権の内幕が、国際社会にさらされることにもなりかねない。
すでに韓国国内では、送還時の様子を収めた写真10枚と4分ほどのビデオ映像が、統一省により公開された。そこから見て取れる、まるで処刑場に引きずり出されるかのような光景に、見る人々は息を飲んだ。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
北朝鮮の内部情報筋が韓国デイリーNKに伝えたところによると、北朝鮮の保衛省(秘密警察は「50日間にわたり拷問を伴う取り調べを行った後、2人を処刑した」という。
文在寅政権の関係者たちは、南北関係の改善を優先し、その延長線上で人権問題の改善も図るべきだと言うかもしれない。その主張に全く理がないとは思わないが、国際社会の人権ルールに背く行為は、大きな代償を伴うということもまた事実と言えるだろう。