「2021年の新型コロナ」を最前線の看護師と振り返る 到来必至の第6波に備えるコロナ病棟
第6波前夜
2021年12月30日現在、どこの新型コロナ病棟にもまだ空きがある状況です。今後オミクロン株の市中感染が増えてくれば、コロナ病棟に「嬉しくないにぎわい」が戻ってくるかもしれません。
実際、軽症中等症病床における入院患者数が、時短要請が解除された10月の数値にリバウンドしつつあります(図1)。
書籍執筆にあたり、全国津々浦々たくさんの看護師からヒアリングを行いましたが、総括として「2021年の新型コロナはどうだったか」を振り返ってもらいました。2020年とは異なり、2021年の新型コロナは、未曽有の感染拡大による医療逼迫が大きかった1年でした。
「当たり前の看護ができなかった」
医療逼迫というのは、患者数に対して医療従事者のマンパワーが不足することを指します。身の回りのことができるほど元気な新型コロナの患者さんばかりなら、ケアする側も安心できるのですが、関西第4波(2021年4~5月)・関東第5波(2021年7~9月)では、施設によっては6~7割の患者さんが酸素吸入を要する状況でした。点滴がつながっていますし、酸素を吸った状態ではトイレすら簡単に行けません。重症度に比例して看護の必要度が上がっていき、医療従事者の業務が逼迫してしまいました。
新型コロナ病棟のレッドゾーンの中で個人防護具(PPE)を着用していると、フェイスシールド越しに見えるコロナ病棟は別世界のようにうつることもありました。患者さんとの距離感というのはとても大事で、特に直接ケアにあたる看護師にとっては、患者さんから得られる「五感」の情報がPPEによって遮断されてしまった弊害が大きかったのです。
「重症化が想定外にはやかった」
2021年のコロナ病棟では、多くの患者さんが重症化しました。大学病院などの重症病床はすでにいっぱいで、残念ながら転院させることができなかったケースもありました。
しかし、出口がふさがれた状態でも、次々と患者さんが入院してきました。重症化した患者さんは、転院待ちの最後尾に並ぶしかありませんでした。「現在病棟で危ない患者さんは誰ですか?」「〇〇さんです」「えっ!?あの人は軽症だったはずだけど!」ということもしばしばありました。
新型コロナの従来株はここまで肺炎を起こさなかったのですが、関西第4波のアルファ株、関東第5波のデルタ株は肺の中を炎が焼き尽くすように肺炎が広がり、酸素飽和度が時間単位で低下していくケースがしばしばありました。
オミクロン株ではこれほど重症化することは多くないというデータがそろってきているため、あのときのような医療逼迫にはつながらないかもしれません。むしろ、そうあってほしいですね。
「患者さんや家族の思い」
原則、コロナ病棟の面会はできない病院がほとんどでした。タブレットを使ってオンラインで面会してもらうことが多かったのですが、画面越しなので耳が遠い高齢者には不向きで、何より温かみを感じることが難しいです。
新型コロナの患者さんが亡くなった後、納体袋や棺の中で家族と再会することもありました。死の間際、家族にPPEを着用してもらい、面会を許可していた病院もありましたが、ほとんどの病院ではそれが叶いませんでした。
第6波以降に向けて
オミクロン株がどのような第6波を形成するのかはまだわかりません。第6波が過ぎても、第7波・第8波が来る可能性もあります。
しかし、自治体や政府の尽力により、病床は大幅に増床され、宿泊施設の収容人数もかなり増えました。新型コロナワクチン接種もすすみ、次々と治療薬も承認されています。
多くの医療従事者が今後の波に備えているとは思いますが、できればもう2022年は医療逼迫を経験したくないところです。
※本記事のエピソードの一部は「新型コロナ病棟ナース戦記: 最前線の現場で起きていたこと」(メディカ出版)より抜粋しています。