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去年1年の「落とし物」犬1万2722匹、猫4382匹 遺棄ではないのか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

去年1年間に、全国の警察に届けられた「落とし物」の数は、およそ2979万点と、これまでで最も多くなっています。これは、新型コロナの行動制限が解除されたことが大きな理由のひとつです。

そのなかでも驚くことは、警察に届けられた「落とし物」のなかには膨大な数の犬や猫などの動物も含まれていることなのです。

去年の落とし物「犬」が1万2722匹、「猫」が4382匹

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警察庁によりますと、去年、落とし物として全国の警察に届けられた動物は2万5535匹で、「犬」が1万2722匹、「猫」が4382匹、鳥やカメなど「その他」が8431匹だったとNHK NEWSが伝えています。

環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によりますと、「犬」の引き取り数は2万2392匹で殺処分数は2434匹、「猫」の引き取り数は3万401匹で殺処分数は9472匹です。

この「犬・猫の引取り数」は行政の動物愛護センターに引き取られた数を示していますので、警察庁との数字とは異なります。

動物愛護センターに引き取られた数は犬より猫のほうが多いですが、警察の落とし物では猫は犬などより少ないです。猫は捕獲しにくいので、落とし物として届けられることは少なかったのでしょう。

警察は犬や猫などのペットが落とし物として届いたときにどのような対応をしているのか?

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犬や猫を「落とす」という意味がよくわかりませんが、警察にはそのような理由で犬や猫がいるようです。

犬は、リードをつけて散歩に出る以外のときは家にいます。猫は、室内飼いが主ですし、そうじゃない場合でも外に出たら1匹で家に戻ってくるものです。

「落とし物」という言葉が使われていますが、これらのほとんどが遺棄ではないのでしょうか。

警察は、動物を飼育する環境が整っているわけではないし、動物専門のスタッフもいないので、苦慮しているケースもあるようです。実際の対応は以下のようになっています。

NHK NEWSによりますと、警察署で2週間程度飼育しています。その後は、動物愛護センターや愛護団体、愛好家の人たちのもとに預けられています。

警察に届けられた動物は「落とし物」として3カ月の保管期間があります。

拾った人が希望すれば、飼うことができます。その他には、やむをえず警察官や職員が、自宅で飼うことになるケースも多いということです。筆者の動物病院でも警察の職員が引き取った犬がいました。

なぜ犬や猫は落とし物としてこれだけの数なのか、その背景は

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令和元年(2019年)に、犬や猫の引き取り拒否に関する法改正が行われました。この法改正により、所有者の判明しない犬や猫の引き取りを条件付きで拒否できるようになったのです。

令和2年(2020年)6月1日から施行されています。つまり飼い主が飼えないという理由で安易に行政が引き取ってくれなくなったのです。

行政が安易に引き取ってくれない犬や猫は、落とし物としてどこかに遺棄されている可能性もあります。

このような「落とし物」の犬や猫は、環境省の発表している殺処分数から考えると、飼い主や里親が見つからず全てが殺処分されているわけではないです。

これらの犬や猫は、飼い主の元に戻ったり、愛護団体、愛好家の人たちに引き取ってもらったりしています。

まとめ

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なにかの事情で犬や猫がいなくなった場合は、諦めずに警察や交番に「遺失届」(いしつとどけ)を提出しましょう。一部の都道府県では、オンラインで提出できるシステムの運用も始まっています。

そうすると、見つかる可能性が高くなります。1年間に「犬」が1万2722匹、「猫」が4382匹落し物として届けられていますが、全ての子が迷子なら探す努力した飼い主の元に戻るはずです。

犬や猫を飼えば終生飼育が基本なので、どこかに落とす(遺棄する)という行動はなくなってほしいです。

犬や猫は、ひとりで食べたり飲んだりできないことが多いので、迷子にするということは命にかかわります。遺棄したり迷子にしたりせずにしっかり飼育しましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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