【獣医師の告白】野良猫は「ほとんど生き残れない」 なぜ殺処分より交通事故死が多い?
コロナ禍で、ストレスを感じ、そして孤独を味わっている人も多いでしょうね。
そんな中、屋根や車の上でのんびりしている野良猫を見ると、「いいなぁ」と思っていませんか。しかし、猫の殺処分の数より、交通事故死の方が多いという現実があります。そして、1〜3月に交通事故死が増えるのです。今日は、それはなぜなのか理由を見ていきましょう。
猫の殺処分の数より交通事故死が多い
「大分市猫の適正飼養・管理ガイドライン」によりますと、交通事故などによる猫の死体の回収頭数は、2013年度2631頭、殺処分数が725頭です。2012年度も交通事故などによる猫の死体の回収頭数は2757頭、殺処分数は905頭です。表を見ていただければ、交通事故死は殺処分数よりずっと多いことが分かります。決して大分市だけ特別にこういう状況なのではなく、全国的にも同様の傾向が見られています。
なぜ、猫の交通事故が多いのか?
野良猫は、交通事故で命を落とす子が多くいます。その理由はなにかを具体的に見ていきましょう。
・発情
人の月経周期は、約1カ月ごとで、犬は約半年ごとなので、猫も時間周期で発情が来るように思われがちです。しかし、猫は時間ではないのです。日に当たることで、発情が来ます。
猫は季節繁殖動物で、一定の季節に繁殖活動を行う動物なのです。長日性季節繁殖動物と呼ばれて「日照時間」が長くなるとメス猫が発情するのです。
簡単に説明すると、猫は、自然界では日照時間が長くなると雌が発情します(人工的な環境によって、光に当たる時間が長いと発情します)。
1月から9月が猫の発情期間なのです。発情期になると、雌は交配相手を求めて活発に動き回ります。1回の発情期で複数の雄と交配するので、周りに雄が集まってきて雌を取り合いをします。そのときに相手を求めることに没頭して交通事故に遭いやすいのです。それに加えて、1~3月は比較的暗くなるのも早いので、交通事故も増えるのでしょう。
・真空行動
猫の行動の中に「真空行動」というものがあります。それを見ていきましょう。
真空行動とは?
飼い猫でも、なにも環境の変化などがないのに突然、全速力で走り回る子もいます。夜中の運動会といわれる行動ですね。そして、突然、この行動も終わります。飼い主から見れば、発作などの病気かもと思うこともあるほどに激しいです。このような「大暴れ」を「真空行動」と呼びます。
なぜ真空行動をするか?
猫はもともと「狩り」をする動物です。
飼い猫や保護猫で餌をちゃんともらっている場合は、狩りなどをしなくてもいいわけけです。捕獲するネズミに気づかれないように飛びかかるとか、迫りくる危険から身をかわすといったこともなく、のんびりと暮らしています。
そんな生活をしていると鬱積したエネルギーが爆発して、真空行動をするのです。室内飼いの子が、この真空行動を家でする場合は、もちろん交通事故になりません。
一方、外にいる地域猫などが、「狩り」をしたい欲求が強くなると、危険な環境下で、このような真空行動をしてしまいます。そのため、周りが見えなくなり交通事故に遭う危険性があるのです。
猫のなきがらを見つけたら?
路上で傷ついた猫や息絶えた猫を発見しても、どうしたらよいか分からないという人が多いでしょう。
もしすでに息絶えているようであれば、その地域の清掃局が担当です。
息がある、もしくは生死が分からない場合は、動物愛護センターが担当であるケースが多いようです。
地域の行政によって名称が違うこともあります。
その他には、道路は、管理者によって異なり高速道路と国道などの国土交通省管轄なら、道路緊急ダイヤルで対処してくれます。
番号は全国共通「#9910」。
通話は無料で受付は24時間です。使用できる電話はNTTの固定電話、ドコモ、au、ソフトバンク各社の携帯、各携帯電話会社の電波を使用している格安SIM携帯(IP電話は使用できません)。
野良猫を交通事故に遭わせないためにできること
野良猫がこの世からいなくなると、つまり、全ての猫が完全室内飼いになると、交通事故に遭うことはないです。
いま、そうは言ってもなかなか難しいですね。それで私たち人間にとって、他にできることは、以下のことです。
・野良猫の不妊去勢手術
発情期になり、雌猫が、雄を求めて動き回ると交通事故に遭うリスクが高まります。不妊去勢手術をしておくと、少しはそのリスクを減らせます。
・ドライバーの人は、猫の行動を理解する
安全運転で走行していても、猫は1~3月、特に活発になるので、猫がいそうなところは特に注意してくださいね。そして、真空行動をとって、急に走り出す動物だということも覚えておいてください。猫は、突然に突っ込んでくる動物だということなのです。
まとめ
野良猫は、餌や水、そして寝る環境にも恵まれていません。その上、動くと交通事故に遭う可能性もあります。人知れず、路上でなきがらになっていることもあるのが現状です。そんなことを踏まえて、野良猫がいない日本になることを願っています。