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「生理休暇」や「不妊治療休暇」という呼び名をやめませんか。別の名称を使う企業の事例をご紹介

小酒部さやか株式会社 natural rights 代表取締役
ビジネスウーマンのイメージ(写真:アフロ)

「生理休暇」とは、生理による体調不良などで働くことが非常に難しい場合に、休暇を取ることができる制度。労働基準法に定められているため、どの会社でも利用することができ、雇用形態にかかわらずパートやアルバイト、派遣社員など誰でも取得できる。

生理休暇の取得日数に制限はないが、有給か無給かは会社によって異なり、2015年の厚生労働省の調査によると、生理休暇を取得すると無給になる企業が多く、74.3%だった。

この生理休暇、2014年4月~2015年3月末の取得率は0.9%とわずかで、ほとんど活用されていない。50年前には26.2%が取得していたというデータがあるので、明らかに減少している。

上記文中の数値は、「平成 27 年度雇用均等基本調査」の結果概要から引用 

減少の要因としては、鎮痛剤やピルなどが一般的になり、女性が生理周期や体調を薬でコントロールできるようになった、という医療の変化が考えられる。また、女性の正社員登用が増え、生理ではなかなか休めない、という労働環境の変化も考えられるだろう。

が、しかし、私(筆者)個人的には、そもそもこの「生理休暇」というネーミングはどうなのか、と思ってしまう。会社員だったときに、私(筆者)は生理休暇を利用したことは一度もない。今まさに自分が生理中であると第三者(特に男性上司)に分かってしまうなんて、なんて恥ずかしい制度だろう、と思っていたからだ。

つい最近、不妊治療の保険適用が2022年4月開始を目指すとのニュースがあった。今後「不妊治療休暇」というのも検討されていく可能性がある。

参考:【独自】不妊治療「22年度保険適用」…政府の工程表が判明

治療と仕事の両立で苦労した女性たちからは、「不妊治療休暇」というネーミングでは使いづらい、という声が上がっている。

これを機に、「生理休暇」や「不妊治療休暇」など、直接的で使いづらい制度のネーミングを改めてみてはどうだろうか。

実際に別の名称にしている企業の事例を以下にご紹介したい。

<株式会社サイバーエージェントの事例>

(株)サイバーエージェントでは、女性の有給取得申請はすべて「エフ休(Female休暇)」に統一。上司や周囲に利用用途が分からないようにして、取得理由の言いづらさ、取得しづらさに配慮している。

エフ休(Female休暇)には、以下のものが含まれます。

(エフ休は、基本は月に1回の有給休暇だが、個々の状況により別対応している。また、当日取得も可能)

●妊活休暇

・子供を授かる為の通院等に取得できる特別休暇。不妊検査、不妊治療に利用

・本格的治療(体外受精、顕微授精等)で、入院・長期の休みが必要な場合は人事に相談。特別休職などで対応

●生理休暇

・生理日の就業が著しく困難な場合取得できる特別休暇

●婦人科治療

・婦人科系治療の為の通院等に取得できる特別休暇

・不妊検査より前の治療・通院(子宮、乳房の疾患・検査)に利用

●つわり

・つわりが重く就業が著しく困難な場合取得できる特別休暇

・安定期前(4ヶ月ぐらいまで)を目処。1週間出社できないような状態の場合は、人事に相談。傷病休職へ切り替えるなど対応

●妊娠中の検診

・妊娠初期、定期検診のための通院時に取得できる特別休暇

・妊娠23週まで4週に1日、24〜35週まで2週に1日、36週以降1週間に1日

●年次有給休暇

・理由を問わず取得可能。年1回、勤続年数に応じて付与

・最大40日、次年度まで持ち越し可能

上記のエフ休は、サイバーエージェントの独自制度である「macalon(マカロン)制度」の1つ。「macalon(マカロン)」とは、女性が働きやすい環境を実現するための支援制度で、2015年から導入している。

(「macalon」とは「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く」からとった名称)

ちなみに「macalon(マカロン)」には以下、8つの制度がある。

1.エフ休

2.妊活休暇

3.妊活コンシェル

4.キッズ在宅

5.キッズデイ休暇

6.認可外保育園補助

7.おちか区ランチ

8.ママ報

詳しくは、こちらを参照:女性活躍促進制度 「macalon」

ご紹介したエフ休のような別名称の事例を参考に、せっかくある制度が利用できないような状況を是非とも改善してもらえたらと思う。

不妊治療の保険適用、それに合わせて検討すべき「不妊治療休暇」を、そのきっかけにしてもらいたい。

株式会社 natural rights 代表取締役

2014年7月自身の経験から被害者支援団体であるNPO法人マタハラNetを設立し、マタハラ防止の義務化を牽引。2015年3月女性の地位向上への貢献をたたえるアメリカ国務省「国際勇気ある女性賞」を日本人で初受賞。2015年6月「ACCJウィメン・イン・ビジネス・サミット」にて安倍首相・ケネディ大使とともに登壇。2016年1月筑摩書房より「マタハラ問題」、11月花伝社より「ずっと働ける会社~マタハラなんて起きない先進企業はここがちがう!~」を出版。現在、株式会社natural rights代表取締役。仕事と生活の両立がnatural rightsとなるよう講演や企業研修、執筆など活動を行っている。

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