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2013年シーズンを振り返って「小虎」のニュースあれこれ

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

きょうは、2013年に阪神タイガースのファームであった出来事をちょこっと振り返っておきます。題して「2013年の小虎重大ニュース!」。と言いながら私が覚えている範囲での、しかも独断で選んだものです。ご了承ください。

まず最初に挙げるべきは、平田勝男ファーム監督が3年ぶりに復帰したことでしょう。久しぶりに、現役時代からのトレードマークである大きな声が鳴尾浜のグラウンドに響き渡りました。「前回に比べたらオレも丸くなったよ」と平田監督は笑いますが、熱のこもった指導は以前と変わらず。チームの空気がまたキュッと、いえギュッと引き締まった感じです。平田監督の提案で、ファームにいる全員がズボンを膝まで上げて黒いストッキングを見せる“ジャッキー・ロビンソン・スタイル”になったこともニュース。故障や再調整で抹消された1軍選手も例外ではなかったので、これはレアものでした。ただ監督やコーチ陣も同じで、人を探すのに区別がつきにいのは…ちょっと困りますかね。

残念でならない一二三選手のケガ

ファンの皆さんにうかがうと、やはり一二三選手のケガが残念という声は多かったですね。7月14日の中日戦(鳴尾浜)の1回の守備で、先頭打者・野本選手のファウルフライをキャッチした際、左足を痛め担架で運ばれました。レフトフェンスの地面から1メートルくらいのところに、一二三選手のスパイクで蹴破った穴がずっと残っていたんですよ。このオフに修理されたでしょうか。そこに足が入ってしまったため大きなケガになったのかもしれません。診断は「第3楔状骨(けつじょうこつ)はく離骨折」。選ばれていた初めてのフレッシュオールスターゲームは辞退、後半の公式戦もフェニックスリーグも出られずじまいでした。

この前日までの4試合は4号2ランを含む15打数8安打6打点で打率が.533!順調にいけば7月のチーム月間MVPをも狙える成績で、平田監督は1軍初昇格の可能性をほのめかしていたくらいです。野手転向2年目で前半はまだ不安のあった守備も、この頃には打球の追い方が変わってきていました。特にケガ直前のソフトバンク戦(雁の巣)では同じレフトへのファウルボールを好捕していたし、いけるという自信を持ったはず。だからこそ攻めたのだと、今までの一二三選手ならあそこまで追わなかったと、私は思います。皮肉なものですね。でも11月下旬から約1か月、台湾のウインターリーグで実戦感覚を取り戻してきました。来年のブレークに期待しましょう。

なんだかホームランが多いと思ったら

もともとタイガースのファームは喜田剛選手、林威助選手、桜井広大選手らが打ちまくっていた2005年、2006年くらいまではホームランも多かったんですが、その後は停滞気味。2010年は野原将志選手をはじめ何人かが結構打ったので62本まで戻ったものの、この年はソフトバンクが107本とダントツでした。雁の巣はよく出ますもんねえ。しかし統一球が導入された2011年からは激減して、2012年の阪神はたったの27本でリーグ最少。最多のソフトバンクでも49本です。

ところが、2013年の阪神は5月に入ると突然ホームランがポンポンと出始め、1か月で公式戦13本!育成試合も合わせると20本も飛び出しました。ゴールデンウィークが終わったころでしょうか、こんな話をしていたのは。「ことしのボール、なんだか飛びますよねえ」「統一球が変わっていたりして?」「春先はそうでもなかったけど」「そのころはまだ去年の在庫があったんやろ(笑)」。その1か月後、以前より飛びやすい統一球に変わったのを公表していなかったことが判明した次第です。ファンをなめちゃいけません。

ちなみに2013年は、打った順番に一二三選手、西田選手、黒田選手、北條選手が公式戦初アーチ。荒木選手、小豆畑選手が育成試合ながらプロ初ホームランを記録しています。フェニックスリーグでは緒方選手に1号が出ました。森田選手はプロ初の2打席連発(2ランと満塁弾!)などを含む16本と自身初の2ケタで、ウエスタン・リーグ最多本塁打のタイトルを獲得しました。しかも森田選手の1発が出た試合は全勝ってのも頼もしい限りです。

驚愕の場外大ファウル!

ホームランではないのですが、5月15日のオリックス戦(鳴尾浜)でオリックス竹原選手のファウルボールが高さ50メートルの防球ネットを越え、レフト側後方に立つ選手寮・虎風荘の窓を直撃したこと。これは重大ニュースのトップ項目にしてもいいくらいだと思われます。スタンドで試合を観ていて、単にファウルだと思いスコアブックに目を戻したら「ガッシャーン!」という音。は?ガッシャーンって…どこで何が割れたの?すると周りのお客様が「寮の窓に当たった」と。ええっ!鳴尾浜球場ができてから18年以上も試合を観ていますが、ネットを越えた上に寮まで届くなんて見たことない。

ベンチにいたオリックスのコーチ陣も、レフトを守っていた一二三選手も「越えた!割れた!」と証言しました。試合後に話を聞いた高木寮長いわく「当たったのは選手の部屋ではなく、4階のトイレの窓。高橋光信選手(現1軍打撃コーチ)が一度、練習中にネットを越える打球を打ったことがあります。でもボールは寮の手前に落ちていました。20年前には越えないと想定した高さで作られたもの。飛ばす力、ボールも変わってきたんでしょうね」とのこと。なお窓ガラスは2日後の試合中に修理されました。

やっぱりキャッチボールは必要でしょ

次に忘れてならないのは、試合中にベンチ前で行うキャッチボールができなくなった点。これは野球規則での禁止事項であり、世界基準に準ずるべきという意見が5月の実行委員会で出され、採択されたものです。ひとまずオールスター明けからファームで試験的に導入し、2014年には1軍でという段取りでした。日本では昔からなじんできた光景であり、これを見てピッチャーの交代や続投を察知するのはファンにとって楽しみのひとつ。テレビカメラもそこを映しますし、次の守備に備えてキャッチボールをする野手の守備交代を予測し合うのも観戦の常です。

ファンの間ではかなり不評でしたが、選手も苦労していたようです。7月27日の広島戦(鳴尾浜)で先発した白仁田投手は、プロ初完封勝利という素晴らしい結果だったものの「キャッチボールできないのがきつかった。疲れ方が半端じゃない。後半になるほど、それが溜まってくる」と困惑。しかも球場によっては近くにブルペンがないかもしれないからと、あえてブルペンでのキャッチボールもしなかったとか。慣れようと努力したんですよね。結局、実情に合わないということで見送られたわけで、災難でした。

シーズン前半から活発な入れ替え

1軍に昇格した選手が多く、小虎の励みになったようです。4月にはルーキーの緒方選手が早々に1軍を経験。7月の松田投手、西田選手、8月の金田投手(残念ながら登板はなし)も初昇格でした。白仁田投手や玉置投手など、ファームで好投を続けていた投手が1軍で結果を出せたのも嬉しいニュースですね。松田投手の活躍はもう「じぇじぇじぇ!」というくらいの感動でした。なお“小虎”を名乗ることなく1軍のローテーションに入ったルーキー藤浪投手は別格ということで、除外させていただきます。

それから、すべてを計算して数字を出したわけではないので感覚的なものですけど、長い試合が多かった印象です。阪神のファームにとっては3年ぶりとなる4時間超えの試合が2度もありました。6月29日に広島戦(由宇)が4時間6分、9月12日の中日戦(ナゴヤ)は2013年のウエスタン・リーグ最長となる4時間22分。どちらも延長はなく9回で、どちらも阪神がサヨナラ負けしています。さらに疲れが増したでしょう。

番外編としては、初めてイースタンの日本ハムと交流試合があり、鎌ヶ谷スタジアムで斎藤佑樹投手に会ったこと。さわやかに、かつ理路整然と質問に答える佑ちゃんを至近距離で見て感激しました。もうひとつ、秋田で開催されたフレッシュオールスターゲームを観戦するため朝早く伊丹空港へ着いたのに、しゃべっていて飛行機に乗り遅れた西田選手のお母さんとお姉さん。試合には十分間に合ったんですが、予定外の出費にションボリされていました。あきれながらも「僕がMVP獲って賞金を!」と張り切った西田選手。しかし公約通りの活躍も名前は呼ばれず…という大爆笑の思い出があります。すみません、また傷をよみがえらせてしまいましたね。

さて2014年はどんなシーズンになるのか。何よりも、小虎を卒業すること選手の多いことが一番です。皆さんも見守ってください。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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