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自らマリナーズとの決別の道を選択した菊池雄星に勝算はあるのか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
菊池投手の来シーズンの所属先はどこになる?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【マリナーズGMが発した言葉の意味】

 MLBがオフシーズンに入り、最初の大きな行事だったGM会議が全日程を終えた。

 すでに日本でも、各チームのGMや会議に集まっていたエージェントらの発言が紹介されており、オフシーズンの各チームや大物FA選手たちの動向が少なからず垣間見られた。

 そんな中、MLB公式サイトで紹介しているマリナーズのジェリー・ディポトGMの発言が、個人的には大きなニュースとなった。

「I wish him well.(彼がうまくいくことを願っている)」

 この表現は、別れが決まった相手に対しよく使用される常套句だ。ディポトGMが発した“彼”とは、菊池雄星投手のことを指している。つまり彼は、菊池投手との別れを口にしたと受け取ったのだ。

【マリナーズ再契約の可能性はほぼゼロに】

 もちろん菊池投手が自ら保有していた、来シーズン年俸1300万ドル(約15億円)を保証するオプション権を破棄しFAになった時点で、すでにマリナーズから離れてしまっているのだから、別れの言葉を発することに何の違和感もない。

 ただマリナーズがマリナーズ、菊池投手の双方ともにオプション権を破棄すると発表した際、オフシーズン初日というあまりに早い対応に、あくまで個人的ながらすでに水面下で契約見直しの交渉が始まっている可能性を疑っていたのだ。

 実際昨年オフにヤンキースが、オプション権を破棄したブレッド・ガードナー選手とオプション権より廉価な年俸で再契約している。菊池投手もそうした可能性があると踏んでいたわけだ。

 それが今回のディポトGMの発言で、マリナーズが菊池投手と再契約することはほぼゼロに近いことが確認できた。さらにディポトGMは上記の発言以外にも、以下のように菊池投手について発言している。

 「少し驚いている。彼は我々のチームに残った場合に起こりえるだろう可能性について考えたのだと思う。だがそれと同時に、我々も彼がチームを離れ、他に行ってしまうリスクがあることも分かっていた」

 この発言からも、現地メディアのみならずディポトGMにとっても、菊池投手がオプション権を破棄したことは予想外だったことが理解できるし、何ら事前の話し合いを行っていなかったことが窺える。

【オプション権破棄は菊池投手自らの判断】

 日本の複数メディアが報じているところでは、菊池投手のエージェントを務めるスコット・ボラス氏は、今回のオプション権破棄は菊池投手の判断だったと説明している。

 今回の菊池投手の判断にはボラス氏からの提言もあっただろうし、ディポトGMが指摘するように、マリナーズに残留した場合の可能性について考えた上でのものだったはずだ。

 ただMLB公式サイトが、菊池投手のオプション権破棄でマリナーズは2人の先発投手を必要としていると論じているように、菊池投手は多少の不確定要素があるものの、来シーズンも先発候補の1人だったことは間違いなさそうだ。

 それを踏まえた上で、3年間の実績(70試合登板で15勝24敗、防御率4.97)を元にしてFAとして他チーム移籍を目指すのは、かなりリスクが高いと考えてしまうのだが…。

【投手有利の本拠地球場でも成績は芳しくなかった】

 ボラス氏はすでに他チームから接触を受けていることを明らかにした上で、菊池投手の契約に楽観的な見方をしているようだ。

 一方で、まだオプション権破棄が発表される前の米メディアの予測は、「オプション権を行使する」か「破棄した場合は日本球界復帰」の二択しかないというかなり厳しいものだった。

 前述通り、菊池投手の3年間の成績は決して芳しいものではない。ましてやマリナーズの本拠地球場は、MLBの中でも屈指の“投手有利”の球場だと知られている。

 ESPNがまとめている今シーズンの「ボールパーク・ファクター」でも、マリナーズの本拠地球場はマーリンズ、レイズ、メッツ、カージナルスに次いで得点しにくい球場だった。

 だが今シーズンの菊池投手の本拠地での成績は、13試合に登板し2勝4敗、防御率4.21と、敵地での成績(16試合に登板し5勝5敗、防御率4.61)とほぼ同じだった。3年間の通算成績でも、まったく同様の傾向が見られる。

 果たして菊池投手とボラス氏に勝算はあるのだろうか。今後の行方を見守っていくしかない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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