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【クリロナ韓国欠場問題】韓国現地報道は「主催者批判」も。当事者の声「試合中、何度も意見したが…」

今夏のアジアツアー、シンガポールでの試合で歓喜するクリスティアーノ・ロナウド(写真:ロイター/アフロ)

問題の根底には「無理なスケジュール設定」

日本のメディアでも大いに話題になった「クリスティアーノ・ロナウドの韓国での欠場問題」。

7月26日に開催されたKリーグオールスター戦で来韓したユベントスのうち、真打ちクリスティアーノ・ロナウドが1分もピッチに立たなかった。本来は「最低45分出場」が契約事項に入っていたとされるにもかかわらずだ。会場のソウルワールドカップスタジアムでは最大40万ウォン(約4万円)を支払ったファンが後半にやきもきし、「ロナウド」コール、そして「メッシ」コールをしたというものだ。

日本のメディアでは「試合欠場」が大きく切り取られ、それに怒るファンという構図が見出しになっていた。しかし、問題は「試合欠場」だけではなかった。

当日の様子を、現地ポータルサイトや現地記者のSNSで見ていたが、試合前から「関連イベントのキャンセル」の連続で、最後の最後で「クリロナ欠場」という最大の問題が起きた、というところだった。

YTNは「稀代の詐欺劇」とさえ報じた

問題の根底には、主催者側が”試合当日に韓国入国”さらに”入国後もタイト”というスケジュールを組んだ点があった。

試合までの流れはこうだった。

24日。ユベントス、韓国での試合キックオフ48時間前に中国で試合。クリスティアーノ・ロナウドは数少ない「フルタイム出場選手」だった。

25日。ユベントスのチーム本体は中国でサイン会。

韓国ではクラブのレジェンド、トレセゲとダービッツのサッカークリニックが、本人たちの到着遅延により規模縮小されて開催。

26日 14:45 ユベントス、仁川国際空港到着。これがすでに中国の悪天候のため2時間遅延に。すでに20:00のキックオフ予定時間まで5時間15分しか残っていなかった。

クリスチャーノ・ロナウドの韓国入国の様子を報じるメディア。入国を心待ちにするファンの姿が見られる

16:00 ユベントス選手のサイン会の開始が遅れる。

17:00 サイン会が終了。一部選手が参加。

17:30 クリスティアーノ・ロナウドがサイン会現場に現れないことがファンに通知される。 「コンディション調整」が理由。このときは当然、試合に出場するものと思われていた。いっぽう主催側のイベント会社社長がファンに直接謝罪。「必ず全員のサインをもらって、ご自宅に届ける」。参加者からはため息が漏れたという。

サイン会中止の様子を伝える現地メディア

18:30 ユベントス、ホテル出発。

しかし、大渋滞に巻き込まれる。韓国ではこの時間帯のスタジアム周辺が大きく渋滞することなど、考えればすぐに分かること。

19:30 キックオフ予定30分前。Kリーグオールスターがウォーミングアップ開始。ユベントス選手はピッチに現れず。

(当然予定されていたユベントスの試合前メディアインタビューも中止に)

20:00 キックオフ時間。試合開始時間の遅延が発表に。20:50と発表。

20:06 ユベントス、ソウルワールドカップスタジアムに到着。

21:00 予定より1時間遅れでキックオフ

22:00 後半開始。クリスティアーノ・ロナウドはベンチに。この時点でSNSが「契約違反では」と騒ぎはじめる。

23:00 試合終了。クリスティアーノ・ロナウドはミックスゾーンで言葉を発することなくバスに。

試合後、急遽ブッフォンが厚意でインタビューに応じることに。KBSの女性アナウンサーが英語で問いかけるが、ブッフォンに通じず。後日、SNSでアナウンサーが「未熟な進行をお詫びします」と謝罪。

ちなみにブッフォンは試合に出場し、試合後も韓国のファンに丹念に挨拶した姿が現地で報じられた。

主催者側は「誰も彼に出場を強く要請できず…」。謝罪も

やることなすこと、すべて上手くいかないイベントだった。

もちろん日本のメディアで大きく報じられるように、「ファンの抗議」もニュースの大きな要素だ。

一方で韓国メディアではじつは「主催者の不手際」を指摘する声が大きい。クリスチャーノ・ロナウド欠場の違約金は、数千万円だという。こういった契約内容の甘さから、約束が守られなかった点。さらに天候という不測の事態での2時間ロスは不幸だったが、そもそもの日程の組み方に問題があったのではないかと。

Kリーグの委託を受け、イベントを取り仕切ったThe Festaという会社の女性社長ロビン・チャン氏に強い批判が集まっている。地上波SBSは、彼女とのインタビューを「単独報道」として28日に放送するくらいだから、関心の高さが伺える。

イベント会社社長インタビュー

韓国での報道では、ユベントスのサッリ監督は「筋肉系の負傷」を欠場理由にしたという。主催者側の主張はこういったところだ。

「試合中、ユベントスのネドベド副会長に対して”どうなっているのか?”と何度も聞いた。しかし”私も彼にプレーしてほしい。しかし嫌だと言っている。私が出来ることがなく、申し訳ない”との返事だった。相手の関係者はこの話ばかりして、行動を起こしてはくれなかった」

「ベンチまで行って、ロナウドの首根っこを掴み『試合に出て』と言うことは出来ない。それは無理というもの」

「中国でのスケジュールの記事を見て、すぐにユベントスに公式的に抗議をした。『コンディションに問題が生じるのではないか』と。ユベントス側の答えは『ロナウドは体力があるから大丈夫』だと」

「子どもたちと、ロナウドを愛する方々の失望感をどう補償すべきか。申し訳なく思っています」

また、SBSのこのニュースではユベントス関係者の音声で「クラブ側すべてが、ロナウドが間違いを犯したと話をしている」という内容を報じた。

韓国の主催者側は今週に再びユベントス側と接触し、契約違反の経緯と違約金の支払い交渉、謝罪の有無についての交渉を行うという。

韓国では2010年夏にもKリーグオールスターと海外強豪チームとの試合が組まれた。対戦相手はバルセロナ。メッシもまた「45分」の契約に反したが、後半途中からプレー。このときはKリーグオールスター相手に軽々と2ゴールを記録している。

このニュースで多くはなかなか気づかれないが、韓国のKリーグ所属選手たちはリーグ戦のオフ期間に試合に出場。3-3の好ゲームを繰り広げた。プレーヤーズファーストの観点から、国内組の選手たちの仕事ぶりは大いに労われるべきだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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