Yahoo!ニュース

9月13日に党人事・内閣改造! 永田町で年内解散も囁かれる中、岸田首相がまず行うべきは……

安積明子政治ジャーナリスト
木原副長官を伴って、外遊する岸田首相(写真:つのだよしお/アフロ)

主要ポストはそのままか

 岸田文雄首相は9月13日、党人事と内閣改造を行う予定だ。連立を組む公明党の山口那津男代表にも8日に連絡し、確定的となった。茂木敏充幹事長や西村康稔経産大臣、高市早苗経済安全保障担当大臣の残留などが報道されている。

 なお今回の内閣改造はまず何より、来年に行われる総裁選を目指してのものであることは否定できない。ここに来て年内解散が囁かれるようになったが、有権者向けの奇をてらった“サプライズ”になることは可能性として低いだろう。

 来年の総裁選で続投する意欲満々の岸田首相。そのためにはライバルたちの勢力を削ぐ必要がある。茂木氏も西村氏も高市氏も、自民党総裁への野心は満々。とりわけ留意すべきは、54名のメンバー(参議院議長在職のために会派離脱中の尾辻秀久氏を除く)を擁する平成研のトップである茂木氏だ。

次期総裁選を狙う茂木幹事長は野に放てない?

 茂木氏については、幹事長交代説も根強かった。資金と人事を掌握する幹事長は、選挙には絶対的なパワーを発揮する。交代説の理由は、茂木氏により大きな権力を握らせないためだ。

 だが茂木氏を野に放てば、次期総裁選に向けて活動を活発化させることは明らかだ。岸田首相より2歳年上の茂木氏は今年10月に68歳の誕生日を迎えるが、その次の総裁選まで待てば70歳を超えてしまう。

 しかも閣僚として遇するにしても、茂木氏は外務大臣や経産大臣といった重職は経験済み。次に起用となると、財務大臣のポストになるだろう。

 しかし財務大臣の椅子には志公会(麻生派)の鈴木俊一氏が座っており、それを動かすのは困難だろう。そもそも2012年12月に自民党が政権を奪還して以来、財務大臣のポストは麻生太郎元首相が率いる志公会が独占し続けている。

 それならば、幹事長は茂木氏の留任しかない。しかも茂木氏は、新設された衆院東京28区を巡って公明党の石井啓一幹事長と対立。石井氏をして「自公の信頼関係は地に落ちた」とまで言わしめた。

次期公明党代表と目される石井氏と茂木氏の関係はよくないと言われている
次期公明党代表と目される石井氏と茂木氏の関係はよくないと言われている写真:Natsuki Sakai/アフロ

 最終的に岸田首相と山口代表が党首会談を行い、自公関係は修復。茂木氏を幹事長職にとどめるのは、「茂木総裁では自公関係がうまく行かない」と公に示す意味もある。

「木原隠し」の改造か

 また岸田首相が要職ポストを変えたくないのは、「木原隠し」の意図があるのだろう。木原誠二官房副長官は、妻の元夫の不審死について週刊文春に報じられ、満身創痍の状態。8月1日には立憲民主党の質問書に対して「週刊文春を刑事告訴している」と文書で回答したものの、その様子はうかがえず、説明のための記者会見も開かれていない。

 その木原氏を岸田首相は、続投させる意図が見える。8月にキャンプデービッドで行われた日米韓首脳会談に木原氏を同行させ、9月にインドネシアで行われたASEAN首脳会議、インドで行われたG20首脳会議にも木原氏を伴った。

「一時は憔悴しきった印象だったけど、今はもうこれまでと変わらない様子だよ」

 最近の木原氏の様子を、自民党関係者はこのように述べている。週刊文春の報道のインパクトがあまりにも大きく、一時は「次の衆議院選での当選は困難」とまで言われた木原氏だが、岸田首相は「本人(木原氏)が(妻の元夫を)殺したわけではない」「どう見ても“シロ”だろう」と始終擁護。岸田首相は長男・翔太郎氏を総理秘書官に“大抜擢”したことで「親バカ」と揶揄されたが、それ以上の「上司バカ」ぶりで木原氏は救われた印象だ。

 しかし木原氏を官房副長官に留め置く限り、「文春スキャンダル」の影は付きまとう。永田町ではいま、11月14日公示・26日投開票節など、衆議院の年内解散説が飛び交っている。それを乗り越えるために、あえて大規模な党人事や内閣改造を避けようとしているのだろうが、その反面、「変わり映えしない」「問題をうやむやにしようとしている」といった印象が否めない。

解散総選挙のラストチャンス

 8月の内閣支持率は、産経FNNの共同調査では前回比0.2ポイント増の41.5%で、日経テレ東の調査でも前回比2ポイント増の42%、そして讀賣新聞の調査では前回と変わらず35%だった。これで「内閣支持率は下げ止まった」と解釈するなら、次期衆議院選は早い方が良いだろう。

 ただし野党は政党支持率が低いとはいえ、けっして侮れない。共倒れを防ぐために「選挙協力」を行うことはありうる話だ。実際に福岡県内では、11の小選挙区のうち7つの選挙区で立憲民主党と国民民主党が候補者調整を行っている。

 また国民民主党が主張してきた「トリガー条項凍結解除」には立憲民主党も賛成し、8月25日には補助金の延長とともに、経済産業省に申し入れを行った。玉木雄一郎代表が率いる国民民主党の提唱する「対決より解決」が自民党だけに対するアピールでなければ、これを軸に両党の協調は進められても不思議ではない。

トリガー条項凍結解除を主張する国民民主党の玉木代表。同じ主張の立憲民主党とどこまで協力できるのか
トリガー条項凍結解除を主張する国民民主党の玉木代表。同じ主張の立憲民主党とどこまで協力できるのか写真:つのだよしお/アフロ

 9月13日に行われる党人事・内閣改造は、岸田政権のこれからの命運を左右するラストチャンスといえる。もし“サプライズ”があるとするなら「木原氏更迭」しか選択肢はなく、それが実現すれば大きく空気が変わるはずだが、木原氏を“右腕”とする岸田首相にその決断できるかどうか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

安積明子の最近の記事