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アウシュビッツ博物館開館75年を記念してデジタルフォトブック発刊

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

第2次大戦時にナチスドイツは約600万人以上のユダヤ人やロマ、政治犯、同性愛者などを殺害した。ポーランドに設置されたアウシュビッツ絶滅収容所では約110万人が殺害された。ホロコーストで殺害された約5人に1人がアウシュビッツで命を落とした。そして終戦2年後の1947年7月2日にアウシュビッツ絶滅収容所は、アウシュビッツ博物館としてオープンし、今年で75年を迎える。アウシュビッツ絶滅収容所は現在でも博物館としてホロコーストの悲惨さを伝えており、世界中から観光客が訪問している。

2019年には過去最高の230万人以上がアウシュビッツ絶滅収容所を訪問していたが、2020年は世界規模でのパンデミックの影響で、アウシュビッツ絶滅収容所博物館も一時閉鎖しており、2021年の訪問者数は56万人程度だった。最近ではオンラインやバーチャルでの展示にも注力している。それでも現在でもアウシュビッツ絶滅収容所は世界的な観光名所の1つである。

アウシュビッツ博物館では、開館75年を記念したデジタルフォトブック「75 Years of the Auschwitz-Birkenau Museum and Memorial」を制作して公開した。アウシュビッツ博物館のサイトからダウンロードすることができて世界中の誰もが閲覧できる。90ページにわたるボリューム満載の内容で、アウシュビッツ絶滅収容所での様子、戦後の博物館での収容所の保管の様子、世界中からの著名人や首脳らが訪問した際の様子、ホロコースト教育や記憶の継承に関する様子など75年間の博物館の歴史の貴重な写真を多く掲載している。また英語とポーランド語で解説もしており、ホロコースト時のアウシュビッツ絶滅収容所の様子や戦後のアウシュビッツ博物館の取組までわかりやすい。

積極的なデジタル化による記憶と歴史の継承。ツイッターフォロワー150万目指す

アウシュビッツ絶滅収容所博物館ではツイッターでも情報発信を行っている。アウシュビッツ絶滅収容所博物館のツイッターでは、毎日、アウシュビッツ絶滅収容所で犠牲になった方々の誕生日や殺害された日に、彼らの写真とともに生まれた場所、いつ殺害されたかを投稿している。110万人以上が殺害されたアウシュビッツ絶滅収容所なので、毎日誰かしらの誕生日である。さらに大量にある犠牲者の写真の他にも文書、遺品などをデジタル化して保管しており、それら貴重な歴史的コンテンツを毎日ツイッターで世界中に発信している。アウシュビッツ絶滅収容所博物館では、2019年8月に「解放75年を迎える2020年1月までに、ツイッターのフォロワーを75万人まで目指す」と掲げていた。当時は55万人程度のフォロワーだったが、2019年末には75万まで到達し、目標はクリアした。その後、アウシュビッツ絶滅収容所博物館では「フォロワーを2020年1月27日(国際ホロコースト記念日)までに100万人」と目標を上方修正し、この目標もクリアされ、現在のフォロワー数は130万を超えている。2022年末までにフォロワー数150万の目標を掲げている。

アウシュビッツ絶滅収容所の博物館のツイッターではホロコースト関連のニュースや犠牲者の情報、生存者の体験など決して明るいニュースや情報ではなく、目を覆いたくなるような写真や生々しい情報も多い。また当時のホロコーストの様子やニュースだけでなく、現代社会のヘイトスピーチや民族憎悪、欧米では根強く残っている反ユダヤ主義に対しても警鐘を鳴らしている。

ホロコーストを経験した生存者らの高齢化も進んでいる。遠くない未来にゼロになり、世界中の多くの人にとってホロコーストは歴史的な出来事になっている。だが、アウシュビッツ博物館では、アウシュビッツで起きた残虐な歴史を二度と繰り返さないように積極的な情報発信と記憶のデジタル化を推進している。アウシュビッツ博物館開館75年を記念したデジタルフォトブックもその一環での発刊である。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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