Appleに好意的な意見陳述書に100人の世界のデザイナーが署名、サムスンのデザインへの認識を批判
Appleは2016年8月4日に、同社のウェブサイトで、Samsungとの間で争われているスマートフォンのデザインに関する裁判に関連して提出された、意見陳述書を公開しました。
この意見陳述書はまず、工業デザインの歴史を紐解いています。日本のタバコのパッケージデザインを手がけて売り上げを伸ばしたことでも知られる米国工業デザインの父レイモンド・ローウィ以来、デザインが消費者向け製品の販売を拡大させたこと、そしてビジュアルデザインが、消費者の心理の中で、製品そのものになることを説いています。
具体的な例としてコカ・コーラのガラスの瓶を挙げ、腰がくびれたガラスの便は、コカ・コーラのブランド認知と世界中への販売拡大との関連性を指摘しています。
そして、複雑なテクノロジー製品の成功に、デザインが活用されてきた経緯を紹介た上で、そのデザインを真似ることは、デザインに関する知的財産を侵害するだけでなく、簡単に市場参入ができる点、機能や品質、マーケティングといった、元のデザイン構築によって積み上げてきた消費者との関係性(=ブランド)そのものを侵害する事につながる、としています。
また、SamsungがAppleのデザインを「盗んだ」というAppleの主張を支持し、「Samsungはデザイン特許について完全に間違えている」と断じています。
100名を超える世界を代表するデザイナーが署名
この文書には、世界で活躍するデザイナーや教育者が署名しています。
工業デザインでは、ブラウン、日産、ベントレー、ゼロックス、インテル、HP、フィリップスといった企業のデザイナーが署名しており、中には、Samsungのデザイン研究機関のトップだったGordon Bruce氏の名前もありました。
ファッションではアレキサンダー・ワン、ポール・スミスといったトップデザイナー、そしてルイ・ヴィトン、カルヴァン・クライン、トゥミといったブランドでのデザイナーを務めている・務めていた人々が名を連ねています。日本人では、sacaiのデザイナーである阿部千登勢氏の名前もありました。
また、ハーバード、MIT、スタンフォード、UCバークレーといった米国トップの大学をはじめとする教育機関でデザインの教鞭をとっている人々の名も署名しています。
裁判の争点となるのは
この裁判は、SamsungのGALAXY Sシリーズが、iPhoneのデザインを模倣しているとして知的財産権を巡って争われており、Samsungに対し、10億ドル以上の賠償金をAppleに支払う評決が出ました。その後、iPhoneの形状や色に関しては知的財産の保護対象から外れて、5億4800万ドルに減額されました。
Samsungは、デザイン特許の侵害によってスマートフォン販売から得られる全ての利益が賠償対象となるべきではない、と主張し、最高裁判所での公聴会が2016年10月11日に予定されています。
今後の争点は、賠償額の認定で、デザインを真似た製品から得られる全ての利益から算出すべきか、デザインの侵害部分に限られるべきかどうか。
Appleの主張は当然前者であり、そのために、この意見陳述書を、Appleはウェブサイトで紹介した、という流れになります。