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鈴木愛、渋野日向子も到達できない? 申ジエの史上初“平均ストローク60台”達成は一体、何がスゴいのか

金明昱スポーツライター
日本女子ツアーで史上初の平均ストローク60台を達成した申ジエ(写真:Nippon News/アフロ)

 今季の女子ゴルフツアーは鈴木愛の賞金女王で幕を閉じた。それに賞金女王争いを演じた渋野日向子が、最後まで女子ゴルフ人気を大いに盛り上げたのは確かだろう。

 だが、正直、もう少し称賛されてもいいし、もう少し大々的に報じられてもいいのではないか――と思う選手がいる。韓国の申ジエだ。

 それは今季の女子ツアーで史上初の平均ストローク60台を達成したからだ。正確な数字は「69.9399」で、日本女子ツアーでは前人未到の快挙。今後、この記録を更新する選手はなかなか現れないと言っても、決して大げさではないだろう。

 申ジエも最終戦のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップが始まる前、「年間平均ストロークは、日本ではまだ一人もいないので、自分の挑戦のテーマになりました」と意気込んでいた。

 最終的に賞金ランキングは3位に終わったが、大きな目標を達成したことには満足していたに違いない。

 これはどれだけ凄いことなのか。

 プロゴルフの世界において、平均ストロークは「実力のバロメーター」と言われる。簡単に言えば1ラウンド(18ホール)あたりの打数のことで、アマチュアならばゴルフのスコアは「100」を切れれば満足する人も多く、平均で「90」を切ることができれば、上級者ゴルファーだ。

 申ジエは3月から11月までほぼ毎週開催されるトーナメントで、今季27試合に出場し、こなしたラウンド数は「86」。

 プロのトーナメントはセッティングが難しく、天候にも恵まれないこともあり、その中で平均ストローク60台を達成したことは、毎試合、安定したプレーをし続けた証だ。

 ちなみに申ジエが新記録を達成するまで、年間平均ストローク1位の記録を持っていたのは、2016年のイ・ボミで「70.0922」。当時は2年連続賞金女王を達成したあとで、年間平均ストローク60台にも注目が集まっていたが、達成はならなかった。

 そもそも申ジエのこれまでの実績は突出しており、31歳になった今でも進化しているようにも見える。

 韓国ツアーで06年から3年連続賞金女王になり、通算20勝で永久シードの資格を得ている。

 09年には米ツアー賞金女王となり、10年には世界ランキング1位に輝いた。米ツアーは通算11勝で、メジャーの全英女子オープンは2度(08年、12年)も制覇した。

 日本ツアーにいたっては、通算22勝。しかも14年から今年まで、賞金ランキングは必ずトップ5入り(14年4位、15年3位、16年2位、17年5位、18年2位、19年3位)しているのだから、驚異的だ。

 日米韓の3カ国ツアーで賞金女王となった選手はまだいない。

 その資格を持つ申ジエは、「また来年もある」とこれからも日本でのプレーを楽しみにしている。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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