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14年ぶりに観客動員数が100万人割れ やはりファンから見限られたジーターCEOとマーリンズ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
昨年オフの大幅リストラ以降ファンの信頼を失ったデレック・ジーターCEO(左)(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 マーリンズが現地23日、ホーム最終戦を戦い終えた。この結果今シーズンの年間観客動員数が明らかになり、MLBダントツ最下位の81万1104人に終わったことが判明した。年間観客動員数が100万人を割ったのは2004年のエキスポス(現ナショナルズ)以来のこと。また2002年に記録していた球団ワースト記録(81万3118人)をも塗り替える低調ぶりだった。

 マーリンズが観客動員で苦戦を強いられるのは、シーズン開幕前から予想されていたことだ。昨年デレック・ジーター氏を中心とする投資グループが、ジェフリー・ロリア前オーナーからチームを買収に成功。ジーター氏はそのままチームのCEOに就任しチーム運営に乗り出したが、急激な予算削減を目的に主力選手たちを次々に放出したことで、地元ファンから批判を浴びることになった。

 実際本欄でも、開幕シリーズを終え厳しい船出となったマーリンズの惨状を報告していたが、結局シーズンを通してファンの冷ややかな反応が変わることはなかったようだ。今シーズンの最多動員試合は開幕戦の3万2151人で、それ以降で2万人を突破したのはわずか4度のみ。ホーム最終戦で1万3595人を集め、何とか平均動員数を1万人の大台(1万14人)に乗せることができたが、ワースト2位のレイズでもホーム74試合で平均1万4431人を記録しており、すでに年間観客動員数も100万人を突破している。

 年間観客動員数100万人割れはエキスポス以来ということからも、ある意味球団経営の上で“危険水域”といえるだろう。当時のエキスポスは1998年からずっと動員数が100万人割れが続く惨状ぶりだった。1999年12月に前述のロリア氏がチームを買収し再建に乗り出したが、状況が好転することはなかった。結局ロリア氏は2002年2月にチームを見限り、新たにマーリンズを買収するとともにエキスポスをMLB機構に売却している。この間一度も動員数が100万人を突破することはなかったし、MLB機構に代わる新オーナー誕生とともに、2005年に本拠地をワシントンDCに移転せざるを得なくなった。

 もちろんチームの収入源は、観客動員によるチケット売り上げだけではない。スポンサー料や放映権料も主要収入源だ。だが地域住民から関心のないチームに、喜んで高額の料金を払い続ける企業、TV局は存在しない。現状が続けば、将来必ず影響がでてくるだろう。

 これまでのジーターCEOの言動を見る限り、年俸総額を引き上げる考えはなさそうだ。逆に現在の年俸総額を維持するため、今もチームに残るウェイン・チェン投手らの高額選手が放出される可能性すらある。もし現在ナ・リーグの最低勝率を争っている若手中心の選手層で、来シーズンも戦っていくようなことになれば、観客動員が大幅に改善させることはないだろう。

 果たしてジーターCEOに起死回生の打開策はあるのだろうか。オフに入ってからの彼の動きに注目が集まるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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