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WSの大舞台で大谷翔平が“鬼門”ヤンキースタジアムを攻略できるかが勝敗を左右する?!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ヤンキースタジアムで成績を残せていない大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【コミッショナーもWS初出場の大谷選手に注目】

 ドジャース対ヤンキースという2013年以来となる両リーグのシード1位同士の激突が実現した今シーズンのワールドシリーズ。また長年にわたりMLBの歴史を彩ってきた名門チーム同士の対決だけに、シリーズ開幕前から例年以上の盛り上がりを見せている。

 今回のシリーズに多大な期待を寄せている1人が、ロブ・マンフレッド・コミッショナーその人だ。FOXスポーツで放送されている朝のトークショー番組「ブレックファースト・ボール」に出演した同コミッショナーは、「これまでワールドシリーズといえば、ムーキー・ベッツやホワン・ソトがヘッドラインになってきた。今回オオタニとジャッジが出場していることは我々にとって本当に幸運なことだ。できれば7戦まで戦って欲しい(笑)」と、現在MLBを代表するスラッガー同士の対決を喜んでいる。

 さらに大谷翔平選手に関して、パドレスとの地区シリーズ第5戦が日本で約1300万人にライブ視聴されていたことを明らかにするとともに、米国内で大谷選手がもたらす影響について「現在球界最強の選手と評されている選手がリーグ最大の晴れ舞台に登場するのは、我々にとって素晴らしい機会だ。それを最大限に活用していきたい」と期待を寄せている。

【ちょっと気がかりな大谷選手の対ヤンキース成績】

 マンフレッド・コミッショナーのみならず、大谷選手が今ワールドシリーズの主役の1人であること、そして彼の活躍がシリーズの流れを大きく左右するだろうと誰もが考えていることだと思う。

 今シーズンは史上初の「50-50クラブ」を達成するなど、打者に専念しながらMVP受賞(しかも誰も成し遂げたことがない3度目の満票受賞という声も多い)が確実視される活躍を見せ、間違いなく大谷選手はチームをワールドシリーズに導いた立役者の1人だった。

 だがそんな大谷選手でも、対ヤンキースという側面だけで見ると、ちょっと気がかりなデータが存在している。

 今シーズンのドジャースがヤンキースと対戦したのは、6月7~)日の3連戦のみだったが、大谷選手は3連戦すべてに先発出場し、12打数2安打(.154)、0本塁打、1打点に終わっているのだ。

【対ヤンキース成績はOPS.899を残す】

 ただ例年6月がになると好調を維持してきた大谷選手だったが、今シーズンに限っては12本塁打を記録しているものの、月間打率では4、5月で3割以上を記録しながら初めて3割を割り込んでいた(.293)。

 また大谷選手の打撃が爆発し始めたのは8月中旬以降だったので、6月時点の成績がどこまで参考になるのかも分からない。

 しかもエンジェルス時代を含めた大谷選手の対ヤンキース成績は、26試合に出場し、91打数19安打(.209)、9本塁打、18打点を記録。打率こそ低いものの、出塁率(.327)と長打率(.571)が高く、OPSは.899を残しており、決してスラッガーとして悪い成績ではない。

【大谷選手にとってヤンキースタジアムはまさに鬼門】

 ところが敵地ヤンキースタジアムだけの成績で見てみると、今シーズンの3試合を加えた全16試合の打撃成績は、59打数8安打(.136)、4本塁打、8打点に止まっている。しかも出塁率(.239)と長打率(.373)も低調で、OPSも.612でしかない。

 ちなみに大谷選手が10試合以上出場している球場の中では、パドレスの本拠地ペトコパークでのOPS.564に次ぐ低さだ。ただペトコパークでの出場試合数12試合中先発出場は8試合のみなので、ペトコパークでの打席数(37)はヤンキースタジアム(68)を大幅に下回っている。

 こうしたデータを見る限り、ヤンキースタジアムは大谷選手にとってまさに鬼門といえないだろうか。

 今回のワールドシリーズは、ドジャースがホーム試合アドバンテージを得ており、ヤンキースタジアムでの試合は第3~5戦の3試合だ。

 果たして大谷選手は過去のデータを覆し、敵地3試合(どちらかがスイープすることになれば2試合)で彼の本来の打撃を疲労することができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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