南北「ファーストレディー」全比較 尹錫悦大統領夫人VS金正恩総書記夫人
尹錫悦(ユン・ソクヨル)第20代大統領の誕生で韓国では新「令夫人」(ファーストレディー)となった金建希(キム・ゴンヒ)夫人に注目が集まっているようだ。
大統領選挙期間中は経歴詐称や不正な資産運用疑惑などが問題にされたため「君子危うきに近寄らず」ではないが、表面に出ることはなく、夫との二人三脚の遊説も一度もなかった。それだけに5月10日の大統領就任式では一躍脚光を浴びていた。
メディアではおしとやかで控えめな性格と伝えられ、また金建希夫人本人も自ら「内助の功に徹する」と公言したことから夫とのツーショットの行動は控えるのではとみられていたが、尹大統領が大統領就任式を前に恒例となっている国立ソウル顕忠院を訪問した時は金建希夫人も同行し、献花、焼香していた。これが、金建希夫人にとってはファーストレディーとしての初の公式活動となった。
続いて、顕忠院参拝後にソウル汝矣島の国会前で4万人以上の出席者が集った大統領就任式に臨んだが、全国にテレビ中継された大統領就任式は金建希夫人にとってまさに華やかなデビューの場となった。
そして、今度は、夫の初の外遊(スペイン)に付き添い、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議では晩餐会などの場でファーストレディーとしての役割をそつなくこなし、国内での受けもよかった。そのため大統領室は支持率が一向に上がらない尹大統領よりもむしろ国民に人気のある夫人を浮かび上がらす広報活動に余念がなかった。
金建希夫人は1972年生まれの今年50歳。歴代の大統領夫人としては38歳でなった朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の陸英淑(ユ・ヨンスク)夫人、41歳でなった全斗煥(チョン・ドファン)大統領の李順子(イ・スンジャ)夫人に続いて3番目に若い。ちなみに前任者の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の金正淑(キム・ジョンスク)夫人は63歳でファーストレディーとなっている。
しかし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の李雪主(リ・ソルジュ)夫人は金建希夫人以上に若くしてファーストレディーとなっている。
李雪主夫人は1989年生まれの今年33歳。金建希夫人より17歳も若い。金正恩総書記が正式に最高指導者となった2012年にファーストレディになっている。当時まだ23歳であった。
金建希夫人も李雪主夫人も共に9月生まれであるが、金建希夫人は今年62歳になる尹大統領とは一回り歳が離れているが、李雪主夫人は38歳の金総書記とは5歳違いである。
二人の出会いは、金建希夫人の場合は母親の知り合いによる紹介で夫に会い、2年間の交際期間を置き、2012年3月に40歳になる前にゴールインしている。尹大統領の一目ぼれで、口説き文句は「一生、君のためご飯を作ってあげる」だったそうだ。
一方、李雪主夫人の場合は金建希夫人よりも3年早く、20歳になった2009年に金総書記に嫁いでいる。李夫人は19歳の時に夫の叔父である張成沢(チャン・ソンテク)氏の推薦で人民保安部(警察庁)合唱団に入団。夫との出会いは2009年1月に当時25歳の正恩氏が合唱団の公演を鑑賞し、見初めたことによる。
学歴をみると、金建希夫人は京畿大学芸術学部卒となっているが、淑明女子大学にも通い、美術を学んでいる。またソウル大経営専門大学院では経営を学んでいる。一方の李雪主夫人は高卒である。映画俳優や歌手を多く輩出する中高一貫校にあたる6年制の金星学園を卒業している。
金建希夫人は大学で学んだことを生かし、会社を立ち上げ、美術やデザイン関連のイベント事業を手掛ける一方で、安養大学や国民大学で兼任教授として教壇に立っていた。この時に大学に提出した履歴書に記した経歴や受賞歴が詐称とわかり、大統領選挙では夫の足を引っ張ってしまった。
幸いにも対立候補の李在明(イ・ジェミョン)候補の夫人にも疑惑が発生したことで相殺され、事なきを得たが、約70億ウォンの個人資産がある金夫人の事業絡みの疑惑は未だくすぶったままである。
一方、高校生の時に韓国の仁川で開催されたアジア陸上大会に応援団として選抜され、訪韓歴のある李雪主夫人は銀河水管弦楽団の専属歌手となり、2011年2月に夫が中国大使館職員らと共に鑑賞した銀河水管弦楽団の音楽会では「まだ言えないわ」という歌を披露していた。金建希夫人が美術家であるのに対して李雪主夫人は歌手出身である。
李雪主夫人はこれを最後に歌手活動から身を引き、翌年の2012年7月6日にディズニーのキャラクターそっくりの着ぐるみが登場し、米国映画がバックスクリーンで流されるなど異色の公演として話題となった牡丹峰楽団の公演会場に夫に連れ添い、姿を現した。李夫人にとってはこれがファーストレディとしての初の公式デビューとなったが、この時点ではまだ金総書記の正式な夫人であることは明らかにされていなかった。
しかし、金総書記が珍しく女性を同伴させたことに内外の関心が集まったこともあって北朝鮮のメディアは19日後の7月25日に陵羅人民遊園地竣工式に2人が揃って出席した時、初めて「李雪主夫人」と紹介していた。ちなみに北朝鮮の最高指導者が夫人を公の場に出したのは後にも先にも1994年にカーター元大統領が夫人を連れ添って訪朝した際に金日成(キム・イルソン)主席がカウンターパートナーとして夫人の金聖愛(キム・ソンエ)を同伴させて以来、実に18年ぶりのことであった。
李雪主夫人は2018年3月に夫の初の訪中に同行し、金建希夫人より先に外交デビューを果たしており、2018年4月27日に板門店で開催された南北首脳会談にも同席したことで「李雪主」の名前は韓国に広く知れ渡っている。