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ウクライナ製のお手頃価格の自律型監視ドローン「Chaklun」導入

佐藤仁学術研究員・著述家
(ウクライナ軍提供)

電子戦には強いがリアルタイムのデータ転送はできないので長時間にわたる監視向き

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民用品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ウクライナ政府はウクライナ軍が監視・偵察、攻撃で使用するためのドローンを調達するために、政府が運営しているメディアを通じて世界中に寄付を呼びかけている。「drone(ドローン)」と「donation(寄付)」を掛け合わせて「dronation(ドロネーション)」という造語も作っている。

2023年3月にはウクライナ製の監視・偵察ドローン「Chaklun」を導入したことを発表した。「Chaklun」はウクライナ語で「魔法使い」の意味で、ドニプロのエンジニアが開発した。簡単に運用することができて1機につき約2000ドル(約25万円)と安価である。最近、ウクライナ軍では民生品ドローンを改造して爆弾を搭載してロシア軍に落下して攻撃を行っている。だが「Chaklun」は監視・偵察専用のドローンで爆弾を搭載して落下させる攻撃用には使用できない。飛行前に組み立てて、飛行するフライトマップを設定すると自律的に飛行することができる。ジャミング(電波妨害)に強いので電子戦で迎撃されにくい。

ただし「Chaklun」はリアルタイムに撮影した動画を送ることはできない。撮影した動画や写真データはドローンに格納されており戻ってきてから分析用に使用する。電子戦に強いと言われているがロシア軍に迎撃されて回収されてしまったら撮影したデータを読み取られる可能性もありうる。

そのため他の監視に使用している小型民生品ドローンのように敵軍を発見して即座に爆弾を投下したりミサイルを撃ち込んで攻撃することはできない。上空から長時間にわたって森の中の様子などを監視するのに適したドローンである。

▼ウクライナ製監視ドローン「Chaklun」を紹介するウクライナのメディア

▼ウクライナ製監視ドローン「Chaklun」を紹介するウクライナのメディア

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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