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「ゴロフキン以来、カネロにとって最も難しい相手」 注目の一戦を地元メディアが展望

杉浦大介スポーツライター
Ed Mulholland/Matchroom

5月7日 ラスベガス  Tモバイルアリーナ

WBA世界ライトヘビー級タイトル戦

王者

ドミトリー・ビボル(ロシア/31歳/19-0, 11KOs)

12回戦

スーパーミドル級4団体統一王者

サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ/31歳/57-1-2, 39KOs)

 現地時間7日の夜、現役最強の称号を欲しいままにするカネロがリングに戻ってくる。スーパーミドル級の4団体を統一したメキシカンの次の標的は1階級上の安定王者、ビボル。勢いにのるカネロが2019年11月以来のライトヘビー級戦でも強さを発揮するのか。それともWBA王座を10度も守ってきたビボルがサイズとスキルを駆使して最強王者を苦しめるのか。

 シンコデマヨ週末のラスベガスを彩る戦いは、DAZNによってPPV配信される。注目のメガファイトを前に、4人の在米メディアにこの試合に関する3つの質問をぶつけ、試合の行方を占ってみた。

パネリスト

スティーブ・キム(元ESPN.comのメインライター。韓国系アメリカ人。業界内に幅広い人脈を持つ Twitter : @SteveKim323)

マルコス・ビレガス(Fight Hub TVの創始者、インタヴュアー。FOXのボクシング中継で昨年まで非公式ジャッジを務めた Twitter : @heyitsmarcosv)

ライアン・オハラ(リングマガジンのライター。コロラド州在住。丁寧な取材に裏打ちされた流麗な記事を執筆する Twitter : @OHaraSports)

ショーン・ジッテル(FightHype.comのレポーター。ラスベガス在住。全米を飛び回って取材し、著名選手からも信頼を得る Twitter : @Sean_Zittel)

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1. カネロが勝つためにやるべきことは

キム : カネロはビボルのボディを攻める必要がある。接近戦ではカネロの方がより快適に戦えることは間違いない。距離を詰め、相手がパンチを放つスペースをなくさせることがカネロの目標になるはずだ。

ビレガス : ビボルのジャブは警戒しなければいけない。ビボルはジャブを多用し、イン&アウトに激しく出入りしてくるだろう。カネロは懐に入ろうとしたときに右をもらわないように注意し、ポイントを確実に抑えること。ビボルは真っ直ぐに動く傾向があるので、試合が長期戦になれば、カネロはどこかでカウンターを打ち込む機会を見つけられるのではないか。

オハラ : カネロは彼が最も得意とすることをやるべき。相手の逃げ道をなくし、ビボルの武器を取り除いてしまうことだ。ビボルがリーチを生かせないように戦えば、より近い距離でミスを犯すだろう。

ジッテル : かつてセルゲイ・コバレフ(ロシア)、ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)は長いジャブを有効に使ってカネロを苦しめた。そして、ビボルも上質なジャブを持っている。カネロはまずはそのジャブを無効化するのが先決で、フロイド・メイウェザー(アメリカ)がやったようにスリップでかわすのもいいのではないか。ヘッドムーブメントを生かしながら相手のパンチを避け、前に出て、距離を詰め、右を打ち込み、カウンターを有効に使うべき。ディフェンスに気を使いながら、前がかりに攻めるカネロの姿が見れるだろう。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

2.ビボルが勝つためにやるべきことは

キム : ビボルはカネロを苦しめ、判定まで持ち込むだけのスタイルとメンタリティを持っている。数週間前にビボルのジムを訪ねたが、彼は最高の状態で、大舞台でも萎縮はしないだろう。”カネロ戦まで辿り着いた時点で勝利”といった考え方はしていないはずだ。スタイル的にも難しいし、フットワークに秀でていて、ナチュラルなライトヘビー級選手だけに、カネロにとって容易な戦いにはならないと見る。ビボルがフェアな採点を得られるかどうかに疑問が残るが、ポイントを明白に抑えるためにも、ビボルはジャブでアウトボクシングするだけでなく、どこかで右を強打する機会も必要になってくる。

ビレガス : 近年のビボルは“退屈な選手”とレッテルを貼られかけており、今戦では山場を作らなければいけないと考えているかもしれない。特にカネロが相手なのだから、もっと積極的にと考えても不思議はない。ただ、私はそうすべきだとは思わない。必要以上に積極的に攻めれば、カネロのカウンターを浴びる危険が出てくる。普段通りのボクシングに徹するべきだ。

オハラ : ビボルの仕事はカネロとは正反対で、相手を遠ざけておくことだ。12ラウンドにわたってそれを続けるのは難しいが、少なくとも前半は成功を収めるのではないかと思う。ビボルは素晴らしいジャブを持ち、コンディションは常に良好だ。殺傷能力はしばらく見せていないが、カネロに対抗するにはそれも必要になってくるだろう。

ジッテル : ビボルはゴロフキン対カネロのフィルムをよく見て、ゴロフキンのように戦うことだ。ビボルはゴロフキン同様に優れたジャブを持っていて、詰めにいかないことも多いものの、戦績が示す以上のパンチ力も持っている。コバレフやゴロフキンと同じようにジャブを重視し、いくつか自分なりの適応を施せば、ビボルは一定の成功を収めるかもしれない。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

3.試合予想は

キム : 素晴らしいマッチアップだと思う。どちらが勝つかは私にはわからない。はっきり言えるのは、ビボルは2018年に再戦したゴロフキン以来、カネロにとって最も難しい相手だということだ。

ビレガス : カネロが判定勝ちを飾ると思う。特に6回くらいまでは接った内容になるのではないか。コバレフ戦と似たような流れになり、おそらく判定勝負だが、カネロが11、12回くらいにKOしても驚かない。

オハラ : カネロの2−1判定勝ち。

ジッテル : カネロの判定勝ち。やはりカネロが仕事をやり遂げると思うが、ビボルは心身両面の強さを持っており、KOまで持ち込むのは難しいのではないか。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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