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藤井二冠・山崎八段・増田六段ら昇級目前!ー第79期順位戦B級1組~C級2組ー

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
昇級まであと1勝の藤井聡太二冠(写真:森田直樹/アフロ)

 第79期名人戦・順位戦は、B級1組~C級2組の各クラスで残り2戦となっている。

 藤井聡太二冠(18)はB級1組への昇級が目前だ。

 山崎隆之八段(39)は悲願のA級昇級へあと1勝としている。

 各クラスの現状と注目ポイントをまとめた。

B級1組

記事中の画像作成:筆者
記事中の画像作成:筆者

 山崎八段は11回戦で松尾歩八段(41)との死闘を制し、悲願のA級昇級が目前にきている。

 次戦に勝てば昇級が決まる。また、永瀬拓矢王座(28)か郷田真隆九段(49)が負けても昇級決定だ。

 昇級を逃すパターンは、自身が連敗して、永瀬王座と郷田九段が連勝する場合のみ。

 一見するとかなり薄い目のようだが、最終戦で郷田九段ー山崎八段戦が組まれていることもあり、12回戦で決まらないともつれてくる。

 もう1つの昇級枠は混戦だ。

 11回戦で郷田九段が敗れたため、抜け番だった永瀬王座が2番手に浮上した(前期成績にもとづく順位で永瀬王座のほうが上のため)。

 永瀬王座は残り2戦を連勝すればA級昇級が決まる。

 ただ、木村一基九段(47)も11回戦で勝って虎視眈々と逆転を狙っており、永瀬王座は一つの負けも許されない状況だ。

 現在B級1組でタイトルを保持するのは永瀬王座のみ。そう考えれば昇級は妥当にも見えるが、猛者揃いのこのクラスに簡単な相手はいない。

 第70期王将戦七番勝負も並行して戦う永瀬王座にとって、過密日程という見えない敵との戦いもある。

 今期から降級枠が3名に増えた残留争いでは実力者がピンチを迎えている。

 11回戦で敗れた深浦康市九段(48)は未だ2勝で残留が厳しい状況だ。

 一方、11回戦で勝利して3勝目をあげた行方尚史九段(47)は残留へ希望が見えてきた。

 12回戦は2月4日(木)に一斉に行われる。

 永瀬王座-行方九段戦が昇級と残留に絡む大一番だ。

B級2組

 9回戦で藤井二冠が中村修九段(58)との上位対決を制して完全に抜け出した。

 次戦で勝利すれば文句なし。負けても中田宏樹八段(56)か横山泰明七段(40)のどちらかが負ければB級1組への昇級が決まる。

 昇級はもう目の前だ。

 9回戦は残り2つの昇級枠をめぐる争いで大きな動きがあった。

 横山七段と佐々木勇気七段(26)による1敗対決があり、佐々木七段が終盤の逆転で制した。

 これで佐々木七段は2番手に浮上。次戦は2敗で追いかける大石直嗣七段(31)との直接対決だ。勝てば昇級が大きく近づくが、順位が良くないため負けると苦しくなる。

 横山七段は2敗に後退したものの順位が良いためまだ3番手だ。残り2戦を連勝すれば昇級が決まる。

 56歳での昇級を目指す中田八段が4番手につけている。

 10回戦は中村太地七段(32)との対戦。難敵だ。

 実力者が揃っていて、上位者も容易に星を伸ばせないのがこのクラスの特徴といえる。

 6名につく降級点(2つ取ると降級)の回避をめぐる争いも熾烈だ。

 2勝だとアウト、3勝だと順位が下だと危ない、という情勢である。

 10回戦は2月9日(水)に一斉に行われる。

 藤井二冠の昇級が決まるか、という点で世間の注目を集めるだろう。

C級1組

 9回戦に高崎一生七段(33)ー船江恒平六段(33)戦が行われ、大一番を制した高崎七段が全勝をキープして昇級まであと1勝としている。

 同じく全勝の増田康宏六段(23)は9回戦も勝って全勝をキープし、昇級まであと1勝としている。

 3つ目の昇級枠は混戦だ。

 高見泰地七段(27)は9回戦に勝って1敗をキープし、3番手に浮上。

 2敗勢は順位上位の棋士が相次いで敗れ、片上大輔七段(39)が4番手に浮上した。

 あと1つ勝てばいい高崎七段と増田六段は昇級濃厚といえる状況だ。

 高見七段は連勝すれば昇級が決まるが、最終戦に現在全勝の高崎七段戦を残している。ここに来て調子を落としている点も不安材料だ。

 順位戦のラストは大きなプレッシャーがかかる。高見七段には茨の道が続く。

 降級点は8名につく。順位戦参加者の中で最年長の青野照市九段(67)は未だ1勝で、負けると2つ目の降級点が決まりC級2組へ降級となる。

 10回戦は2月2日(火)に一斉に行われる。

 昇級と残留をかけた青野九段-高見七段戦が大一番だ。

C級2組

 黒田尭之四段(24)は8回戦も勝って全勝をキープした。残り2戦で1勝すれば昇級が決まる。ただ、残り2戦で若手強豪との対戦を残しており油断出来ない。

 1敗勢では、伊藤真吾五段(38)と黒沢怜生五段(28)が敗れて後退。その黒沢五段との直接対決を制した出口若武四段(25)は一気に2番手へ浮上した。

 7勝1敗の二人は連勝すれば昇級が決まる。逆に一つでも負けると順位が悪いため昇級の可能性はほぼなくなる。

 実績、勝率ともにこのクラスではトップクラスの大橋貴洸六段(28)と佐々木大地五段(25)も虎視眈々と昇級を狙う。2敗勢で現実的に昇級の可能性があるのはこの二人までだろう。

 C級2組では最終戦以外、2回に分けて対局が行われる。

 9回戦はまず1月28日(木)に半分の対局が消化され、残り半分は2月4日(木)に消化される。

 C級2組はここに微妙な勝負のアヤがある。残り2戦、負けられないプレッシャーの中で勝ち星を伸ばすのは誰か。

 10名につく降級点は、2勝だとアウト、3勝だとギリギリ、という情勢である。

 昇級争いも、降級点回避の争いも、前期成績にもとづく順位がモノをいう。特に今期はそれが顕著で、これぞ順位戦という戦いだ。

 各クラス残り2戦、まさに佳境を迎えている。

 観る側としては一番面白いところと言える。ぜひご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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