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『笑う大晦日』で漫才を披露したチュートリアル徳井義実が「変態」でも愛される理由

ラリー遠田作家・お笑い評論家

2021年12月31日放送の『笑って年越したい!笑う大晦日』で、チュートリアルの2人が出演して、久々にテレビで漫才を披露した。ネタの冒頭で徳井義実は「あの徳井です」と名乗り、相方の福田充徳から「どの徳井やねん」とツッコまれていた。

徳井は、2019年に税金の無申告が発覚したことで芸能活動をしばらく自粛していた。その後、テレビの世界に戻ってきてはいたが、それまでに比べると仕事量は減っていた。今回、漫才の中でも自ら騒動をネタにしてみせたことで、完全復活を印象づけることに成功した。

徳井はアイドル顔負けのルックスを誇る「イケメン芸人」として知られていた。「よしもと男前ランキング」では2003年度から2005年度まで3年連続の1位を獲得して堂々の殿堂入りを果たした。男らしくて優しげな甘いマスクで多くの女性ファンを虜にしていた。

幼馴染みの福田とコンビを組み、2006年に『M-1グランプリ』で優勝してからはテレビの仕事も急増した。最近ではバラエティだけでなく、数多くのドラマに出演して、俳優としても存在感を示していた。

そんな徳井の芸人としての持ち味は、ときに狂気すら感じさせるギリギリの妄想&変態トークである。高校時代には、遠足になぜかエッチな本を3冊持ってきたことから「エロ番長」というあだ名をつけられていたという。

また、その頃から女装癖があり、妹の服を着て近所を出歩くこともあったというのだから、その変態ぶりは筋金入りだ。普段は落ち着いた雰囲気の徳井が、下ネタを話すときだけは前のめりになって目を輝かせる。世の中には下ネタを苦手とする人も多いが、不思議と徳井はそのことで嫌われている感じはしない。なぜ、徳井さんの下ネタや変態エピソードは多くの人に受け入れられているのだろうか。

同級生とコンビを結成

チュートリアルの2人について語られるときによく持ち出されるのが、とにかくコンビの仲がいい、ということだ。2人は昔からの幼馴染みで、幼稚園、小学校、中学校、高校、予備校で同じ時間を過ごしてきた。見た目は対照的な2人だが、笑いのツボが同じ、物事のとらえ方が同じで、何時間も話し込んでいても飽きない関係だったという。芸人になってからもその仲の良さは変わっていない。

また、徳井は、芸能界における人付き合いがあまりなく、芸能人の友達がほとんどいないと公言していた。徳井と仲の良い芸能人というと、スピードワゴンの小沢一敬が有名だが、徳井いわく「小沢という窓から芸能界を見ている」というくらい、他の人とはつながりが薄いようだ。

ピュアで親しみやすい「永遠の少年」

そんな徳井は、売れっ子になった今も、どこかピュアで親しみやすい雰囲気があり、子供っぽい感じが漂っている。性的なことを話していてもいやらしさがないのはそのせいだ。いわば、徳井は「永遠の少年」なのだ。

大人の男性がTPOもわきまえずに繰り出す下ネタは、他人に不快感を与えてしまうこともあるが、子供の下ネタはかわいげがあって愛らしい。幼馴染みの福田と共に芸能界に入り、今でも気の置けない男同士で楽しく過ごしている徳井は、変態じみたエピソードもまっすぐな目で堂々と語る。そこに純粋さが感じられるから嫌みがない。

徳井の下ネタの根底にあるのは、長年にわたって純粋培養されてきた「少年の心」なのだ。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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