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スタジアム動員好調のセリエA、年末開催は成功だったのか?

中村大晃カルチョ・ライター
2017年12月30日に開催されたインテル対ラツィオの一戦も観客は6万人超(写真:ロイター/アフロ)

今シーズンのセリエAにおける大きな変更点の一つが、クリスマス時期の日程変更だ。年末の試合開催は成功を収めたのだろうか。

◆表彰台には届かず

1月4日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が紹介したデータによると、12月22日と23日に開催された第18節、同29日と30日に行われた第19節の平均観客動員数は、一定の成果があったことを示している。

『ガゼッタ』によれば、第18節の平均観客動員数は2万6462人で今季4位。第19節は2万5503人で同6位だった。シーズン上位の動員数だったことからも、これまでなかった年末の試合がある程度のサッカーファンをスタジアムに呼び寄せたと言うことができる。

ただ、トップだった第11節(10月28~30日)の2万8024人をはじめとする“表彰台”には届かなかっただけに、大成功というわけでもないようだ。それでも、初の試みだっただけに、少なくとも継続する価値があることは示したと言えるだろう。

◆今季全般が好調

だが、『ガゼッタ』はそもそも今季の動員が好調だとも指摘している。前半戦終了時点でリーグ全体の平均観客動員数は2万4579人。2008-09シーズンの2万4825人に続き、過去10年で2番目に多い数字だ。昨季の前半戦終了時からは、じつに15%も増えている。

また、動員数だけでなく、入場率も好調だ。今季は70.9%と過去10年で最多。前述の08-09シーズンでも60.1%で、それ以外の過去8シーズンはいずれも50%台だった。

入場率アップに貢献しているのが、大きなスタジアムを拠点とするビッグクラブたちだ。例えば、インテルは平均動員数が5万8283人と昨季から30%も増えている。12月30日のラツィオ戦でも、今季4位となる6万1852人がサン・シーロを訪れた。首位ナポリもサン・パオロの動員が昨季比で53%アップ。オリンピコが本拠地のローマも、インテルと同じく30%の動員増を記録している。

セリエの問題点の一つとして指摘されて久しいだけに、観客動員数が上向きなのは朗報だ。特に年末は、リーガエスパニョーラやブンデスリーガが中断しているだけに、国外にセリエをアピールする機会にもなりやすい。

◆過密化との兼ね合い

一方で、この時期の過密日程が議論の的となるプレミアリーグでは、有力クラブの指揮官たちが次々に苦言を呈している。圧倒的な強さで首位に立つマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は、現在の日程が「アーティストである選手たちを殺す」と強い表現で改善を訴えた。

英『BBC』電子版は、2017年12月のプレミアリーグにおける負傷数が、8月から11月までの月平均と比べて32%増えているというデータを紹介している。これによると、過去5シーズン、ほぼ常に12月の負傷数は大きくアップしているという。

放映権料を支払うテレビ局の意向に左右されるのはやむを得ないとの見方があるのも事実だ。『BBC』電子版のアンケートでも、1月4日19時(日本時間)の時点で、最も多くのユーザーが「クラブは放映権料を受け取っており、日程を受け入れるべき」と回答している。

だが、グアルディオラ監督が言うように、主役である選手たちが負傷しては本末転倒だ。『ガゼッタ』も、解決策を見つけるのは容易でないとしつつ、「グアルディオラは正しい。選手たちはアーティストだ。そしてアーティストは守られるべきだ」と記している。

イタリアでは今週末のセリエA第20節から約2週間の中断期間に入るだけに、イングランドとは状況が異なる。ただ、ウィンターブレイクの先送りでバランスが保たれるのか、変更の影響は今後も注目されるだろう。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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