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YouTubeショート動画ですぐに学べる「アンネ・フランクに関してよく聞かれる10の質問」

佐藤仁学術研究員・著述家
(アンネ・フランクハウス提供)

ホロコースト教育に必須のアンネ・フランクとデジタルコンテンツ

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスの標的となり迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。1929年生まれのアンネ・フランクが生きていたら2023年6月12日で94歳になっていた。

アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。アンネ・フランクが1942年6月12日の13歳の誕生日に送ってもらった日記帳で日記を書き始めた。

現在でも世界中で多くの人に読まれている。またアンネ・フランクは世界中の老若男女にも人気がある。世界中の若者に人気のインスタグラムには世界中のアンネ・フランクのファンがアンネの当時のモノクロ写真や、アムステルダムにある「アンネの家」を訪問した写真をたくさん投稿している。

アンネ・フランクの生涯は「アンネの日記」を元にした映画、ドラマ、演劇、アニメ、マンガなどで世界中で作品の題材として取り上げられ、演じられている。それらはアンネの生涯を忠実に描いたノンフィクションである。またアンネ・フランクをモチーフにしたフィクション映画やドラマなども多い。アンネ・フランクと日記の中のキティを描いた創作アニメ映画「Where is Anne Frank?」などが有名である。

戦後約80年が経ち、ホロコースト生存者らの高齢化が進み、記憶も体力も衰退しており、当時の様子や真実を伝えられる人は近い将来にゼロになる。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。そしてデジタル化された証言や動画や映画は欧米やイスラエルではホロコースト教育の教材としても活用されている。

アンネの隠れ家を運営しているアンネ・フランクハウスはアンネ・フランクを紹介するためのデジタル化したコンテンツ制作にとても積極的で、アンネ・フランクが生きていた時代の貴重な動画を公開したり、アンネ・フランクが当時スマホを持っていて動画を撮影するというWEBドラマシリーズ「Anne Frank video diary」を制作しYouTubeで配信。アンネ・フランクの生涯を次世代の若者に伝えようとしている。またアンネの家をVR(仮想現実)で廻れるサービスもメタと共同で制作した。特にコロナ禍になってアムステルダムのアンネの家を訪問できなくなってからはオンラインでの様々な情報やコンテンツ提供にも注力してきた。また公式SNSでも多くのアンネ・フランクや家族の貴重な写真なども公開している。アンネ・フランクが動いている唯一の動画も公開されている。

15秒から30秒程度のショート動画だがかなりの情報量

アンネ・フランクハウスでは、YouTubeのショート動画を制作してアンネ・フランクの生涯やホロコーストをダイジェストで伝えている。「アンネ・フランクに関してよく聞かれる10の質問」というショート動画を10本作って公開している。このようなYouTubeのショート動画は子供や学生にホロコーストやアンネ・フランクを知ってもらうにはちょうど良い。15秒から30秒程度でコンパクトにまとまっているのであっという間に視聴できるが、かなりの情報量である。大人が見ても知らないことも多く勉強になる。ホロコーストはユダヤ人が600万人以上殺害されていることから内容も重たいので、子供や若者には当時の動画や映像を視聴すると気分を悪くしてしまう人もいる。

2023年1月にはアンネ・フランクハウスは「Anne Frank Knowledge Base」(アンネ・フランク・ナレッジベース)を開設した。Anne Frank Knowledge Baseではオンラインでアンネ・フランクや家族、匿ってくれた関係者や学校時代の友人などの情報、当時の様子を認することができる。またフランクフルト、アムステルダム、アウシュビッツなどアンネ・フランクに関係の深い場所が地図上で表示されて、その場所でのアンネ・フランクや関係者の情報を知ることができる。

アンネ・フランクハウスだけでなくアンネの90 歳の誕生日である2019年6月12日には、Googleがアンネ・フランクハウスと協力して、アンネが隠れ家に潜む前に子供時代を過ごした家、家族の思い出の写真、貴重な映像などを紹介するコンテンツを「Google Arts & Culture」で公開した。当時の貴重な写真や映像をデジタル化して公開、家の中をストリートビューで閲覧することができる。

欧米ではホロコースト教育が行われており、アンネの日記や映画などはホロコースト教育でも多く利用されている。ホロコースト教育ではホロコーストだけでなく、欧米で今も根強い反ユダヤ主義をなくすためにも行われている。

▼アンネ・フランクハウスが制作したYouTubeショート動画「アンネ・フランクに関してよく聞かれる10の質問」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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