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日本を信頼できる? 好感を持てる? 諸外国の国民の思惑は二極化

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 他国から日本はどのように思われているのだろうか。(写真:アフロ)

・2018年時点で日本に好感を持てる人の割合は、欧米3か国は肯定的な意見が6~8割台。中韓では2~3割台。

・日本に好感を持てる人の属性別動向では欧米諸国では男性の好感度が高く、女性は低め。若年層が高めで高齢層はやや落ちると。タイは属性別の差異があまり無く一様に高い。

・日本を信頼できるか否かでも好感を持てるか否か同様に、米英仏タイは信頼できる派が多数、中韓は信頼できない派が多数。

日本への好感度の実情

国家同士の関係はその国全体の利益、歴史観、周辺国とのつながり方など多要素によって形成されるため、単純な国民感情のみで決定されることは滅多に無い。一方で多くの国で採用されている民主主義的政治治世下においては、国民の意志が多々反映されるため、国民の強い意志により国政そのものが変化を受けることもある。今回は新聞通信調査会が2018年3月に発表した、諸外国のメディアに関する世論調査「諸外国における対日メディア世論調査(2018年調査)」(※)などの内容から、国そのものの施策にも影響を及ぼすかもしれない、国民ベースにおける日本への信頼度合い、好感を持つか否かについて確認を行う。

次に示すのは日本への好感度合い。設問は日本に加え調査各国を評価回答対象としており、選択肢も強弱肯定的、強弱否定的の計4つのみとなっている。次に示すのは肯定的=好感を持つ人の割合。直近年分に関しては属性別の回答率も開示されているため、こちらもグラフを作成する。

↑ 日本に好感を持てるか(とても+ややの合計)
↑ 日本に好感を持てるか(とても+ややの合計)
↑ 日本に好感を持てるか(とても+ややの合計)(2018年)
↑ 日本に好感を持てるか(とても+ややの合計)(2018年)

欧米3か国は肯定的な意見が6割台から8割台、イギリスがやや低めだが、これは2015年時点で公開されていた回答内容から推測するに、「分からない」が多く他項目を圧迫しているだけであり(選択肢には存在しないが、回答しなかったものと考えられる)、大勢としてはほぼ同じと解釈できる。他方、他項目でも日本への好意度の高さを示しているタイは肯定派が9割を超えている。これらの国の動向は経年推移では大きな変わりは無し、むしろ上昇する国もあるほど。

韓国はといえば、この類の他調査同様、日本に対する反発心が強い。肯定派は3割程度。直近年ではやや上昇し4割に近づいたのが目に留まるぐらい。中国は2015年の時点では質問自体ができなかったので空欄となっているが、動向としては韓国とほぼ同じ。むしろ好感を持てる人の割合は、韓国よりも少ない。

属性別動向を見ると、欧米諸国では男性の好感度が高く、女性は低め。若年層が高めで高齢層はやや落ちるといった、共通の動きを示している。タイは多少の誤差があるがほぼ高めで、70代以上では100%もの値が出ているほど。

他方中国では10代が低めな以外は法則性の類は無し。韓国では男女間の差異は無いものの、年齢階層別では異様なまでに10代の値が高い。他項目になるが「メディアに期待する日本についての報道内容」では、韓国の10代の回答値で「国際協力、平和維持活動」「ファッション・アニメ・音楽」「観光」と複数項目において他の年齢階層と比べて高い値を示していることから、これらの要素が好感度に影響している可能性はある。

日本への信頼度合いの実情

それでは好き嫌いでは無く、信義則の観点などで、日本を信頼できるか否かの実情はどのような実態なのだろうか。設問原文は「日本を信頼できる国だと思いますか」。選択肢のスタイルは好感を持てるか否かの時と同じ。

↑ 日本を信頼できるか(2018年)
↑ 日本を信頼できるか(2018年)

大よそ好感を持てる・持てないの時と同じ動きで、方向性がさらに強化された雰囲気。米英仏タイは好感度合いの時と比べて肯定意見は変わらず、中国と韓国は否定意見が一層強い結果が出ている。またイギリスの「分からない」が多く、肯定意見の絶対値が押し下げられる現象は、今件からも確認ができる。中韓ともに日本を信頼に足る国と考えている人は2割程度でしか無く、強い否定意見を持つ人は中韓ともに4割近く。もっともこの動きは同様の他調査でも大よそ同じ結果が出ており、驚くには値しない。

なおグラフ化及び詳細精査は略するが、属性別では諸国でほぼ変わりが無いものの、韓国では若年層ほど信頼できるとの意見が多く、中国では逆に若年層ほど少ないとの結果が出ている。さまざまな理由、思惑、背景があるにせよ、日本に対する各国のスタンスが透けて見えそうな結果ではある。

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※諸外国における対日メディア世論調査

直近年分はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2017年12月から2018年1月に行われたもので、アメリカ合衆国・フランス・韓国は電話調査、イギリス・中国・タイでは面接調査で実施されている。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。対象年齢は中国以外は18歳以上、中国も同様だが70歳以上の回答者は1名のみのため属性別では除外されている。回収サンプル数は各国約1000件。過去の調査もほぼ同様の調査スタイル。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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