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大谷翔平のエンジェルス残留は8月1日前の契約延長しか道がないと考えるべき状況証拠の数々

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
オールスター戦でも自身の去就問題に関心が集まった大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【大谷選手の去就問題に揺れた今年のオールスター戦】

 MLBの2023年オールスター戦が現地時間7月11日に行われ、ナ・リーグが11年ぶりに勝利を飾り、無事幕を閉じた。

 期間中はホームラン・ダービーでブラディミール・ゲレロJr.選手が父に続きタイトル奪取に成功し、本戦ではMVPを受賞したエリアス・ディアス選手が受賞インタビューで感極まって涙をこぼすなど、様々な感動シーンを目撃することができた。

 だが今年のオールスター戦に関しては、最初から最後までメディア、ファン、さらに参加選手に至るまで関心を集め続けたのが、大谷翔平選手と彼の去就問題ではなかっただろうか。

 初日に行われたメディア・セッションでは、溢れんばかりのメディアが大谷選手を取り囲み質問攻めにした。ただシーズン終了後にFAとなる大谷選手の境遇を考えれば、あくまで想定内の出来事だった。

 それとは別に想定外のこととして多くの人々を驚かせたのが、本戦で打席に立った大谷選手に対し、地元シアトルのファンが自然発生的に「Come to Seattle(シアトルにおいで)」チャント(詠唱)を起こしたことだ。

 あのチャントこそ、大谷選手の去就問題にマリナーズ・ファンも高い関心を示しているとともに、できればマリナーズに入団してほしいという熱心な勧誘活動に他ならない。

【エンジェルス残留唯一の道は8月1日までの契約延長】

 だからと言って、このオールスター戦で何か新情報が飛び出したわけではなく、今も大谷選手の去就問題は謎のままだ。これまで同様、状況証拠を確認しながら推測していくことに何ら変わりはない。

 その上で現状を整理すると、大谷選手がエンジェルスに残留するかどうかは、8月1日のトレード期限までに契約延長に合意する以外に道はないと考えるべきだという結論に至る。

 順を追って説明していこう。

 まず前述のメディア・セッションの場で、大谷選手は米メディに対し、改めてポストシーズンに進出したい、ワールドシリーを制覇したいという思いを口にしている。

 「もちろん年々(勝ちたい気持ちが)強くなってますね、負ければ悔しいし、(ポストシーズンに)行けなかったら悔しいというのはその通りなので…。優勝したことがない以上、優勝したいなと思うのは自然かなと思います」

 この発言を踏まえた上で、エンジェルスの現状と将来性を考えると、今シーズン終了後FAになった大谷選手がエンジェルスに戻ってくるとはどうしても考えにくい。

 またエンジェルスもFA市場に回った大谷選手に対し、総額5億ドルを超えると目されている大型契約を用意する資金力を有していないというのが、大方の米メディアの認識だ。

 つまりエンジェルスが大谷選手を残留させるためには、FA市場で予想されるような大型契約になる前に、彼と契約延長に合意するしかないということになるわけだ。

【契約延長できなければトレード放出は必至?】

 そして契約延長できる期間が8月1日までに限られてくると考えるのは、球団経営というビジネス面によるものだ。

 仮に大谷選手がシーズン最後までエンジェルスに在籍し、シーズン終了後にFAで他チームに移籍したとしよう。この場合エンジェルスが得られるものは、クォリファイングオファー(大谷選手がFAになった場合、エンジェルスは間違いなくクォリファイングオファーを提示する)の規約に則り、翌年のドラフト指名権だけになってしまう。

 球界随一の敏腕記者として知られるケン・ローゼンタール記者が「オオタニの代償がドラフト指名権では割に合わない」と指摘しているように、何の見返りもないまま大谷選手に去られるのはチームにとってこれ以上大きな損失はないのだ。

 それを踏まえると、大谷選手と契約延長できないと判断したエンジェルスが、将来を見据え複数の若手有望選手を得るため大谷選手をトレードに出すしかないと判断するのは、ごく自然な流れといえるわけだ。

【大谷選手のトレードとチーム再建を提言する球界OBたち】

 実はオールスター戦期間中に、日本でも有名な球界OBたちが大谷選手のトレードを提言している。同試合の中継を担当したFOXで解説者を務めるデビッド・オルティス氏、アレックス・ロドリゲス氏、デレック・ジーター氏の3人だ。

 彼らの発言を抜粋しながら、以下に紹介しておきたい。

 「自分が現役時代のエンジェルスはプレーオフで対戦すると感じさせるチームで、2人ではなく複数の選手たちがチームを牽引していた。

 今こそ彼らはチーム再建が必要であり、将来を見据え3~5人の有望選手を得られる最大の好機を迎えている」(オルティス氏)

 「エンジェルスが今後5年間でワールドシリーズを制覇したいのなら、まずオオタニをトレードし、続いてトラウトをトレードすべきだ。

 そして5、6人のドラフト1巡目選手を揃えた上で、セオ・エプスタインのような編成担当責任者を迎え入れ、チームを委ねるべきだ」(ロドリゲス氏)

 「2人の意見は納得できるものだが、オオタニと契約できるかどうかを最も理解しているのはエンジェルスのフロント陣だ。それを予想するのは難しいことだ。

 ただオオタニをトレードに出すのなら、トラウトを納得させることを含め間違うことはできない」(ジーター氏)

【8月1日までの水面下交渉ですべてが決まる】

 やや慎重な発言をしているジーター氏の言葉通り、大谷選手のトレードを機に現在のチームが一気に瓦解することになりかねない。大谷選手を是が非でも残留させたいと公言していたマイク・トラウト選手は間違いなく失望するだろうし、トレード拒否権を破棄してトレード志願する可能性すら考えられる。

 それは裏を返せば、オルティス氏やロドリゲス氏が指摘するところのチーム再建に他ならないのだが…。

 これまで大谷選手はシーズンに集中するため、シーズン中の契約交渉にかかわりたくない旨の発言をしている。だが大谷選手はオールスター戦期間中に代理人のネズ・バレロ氏と会食しており、バレロ氏はすでに大谷選手の胸中を確認できたと考えていいだろう。

 8月1日までの残り2週間で、ペリー・ミナシアンGMとバレロ氏の間で水面下の交渉が繰り広げられることになりそうだ。

 昨年トレードを完全否定していたナショナルズが、トレード期限前にフアン・ソト選手を成立させたことが端的な例だが、ここに記した現状を踏まえれば、大谷選手が何の動きもないまま、8月2日以降もエンジェルスに在籍している姿を想像するのが難しい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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