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サンウルブズ2連勝へ。「自称副キャプテン」立川理道、チーム愛の源とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真中央が立川。守備時の危機察知力でもチームを救う。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに今季から初参戦する日本のサンウルブズが、5月2日、1週間の休息を経て練習を再開。7日のフォース戦に向けての戦術確認と身体慣らしに時間を割き、トレーニング後はボールを転がして得点を競い合うレクリエーションを楽しんだ。日本代表でもあるセンターの立川理道が取材に応じた。

4月23日、第9節でチーム発足後初勝利を決めた。

昨秋のワールドカップイングランド大会で4強入りしたアルゼンチン代表に相当するジャガーズを東京・秩父宮ラグビー場に迎え、36-28と撃破。ここまで不慣れなアウトサイドセンター(13番)をしていた立川は、この日は得意なインサイドセンター(12番)として先発フル出場した。持ち前のゲインライン(攻防の境界線)への仕掛けで魅せた。

9点差を追う後半16分には、敵陣22メートル線左スクラムを経てスタンドオフのトゥシ・ピシからパスを受け、タックラーを引きつけながらの短いパスでアウトサイドセンターのデレク・カーペンターのトライを演出(直後のゴールも決まり、スコア23―25)。1点リードで迎えたノーサイド直前には、敵陣ゴール前右中間のスクラムからの攻撃で、タックルされるピシを援護。自らだめを押した。

チームは17日までの約3週間、シンガポール、南アフリカでの長期遠征を敢行した。4戦全敗に終わったなか、立川は国内帯同組のメンバーに近況報告のメールを送信。帰国後は、チーム全員で屋形船に乗る交流会を企画した。

身長180センチ、体重95キロの26歳。奈良県天理市出身で、天理大学ではキャプテンを務めた。日本代表としては昨秋のイングランド大会の予選プール全試合に出場し、過去優勝2回の南アフリカ代表などから3勝を挙げた。ここ数年来、前キャプテンの廣瀬俊朗(昨季限りで引退)や五郎丸歩副キャプテンと多くの時間をともにした。

この日のグラウンドから帰りのバスまでの道のりは、頭部を覆う狼の被り物をかぶって通過しようとしていた。

以下、立川の一問一答の一部(7、8、10個目以外はすべて当方質問、編集箇所あり)。

――立川さん、よろしいですか。

「あ、バレました?(笑顔でかぶりものを脱ぎ、立ち止まる)」

――1週間の休息を経て、フォース戦に臨みます。

「1週間、しっかりリフレッシュしたので、きょうは身体を動かすところから始まって、明日以降、アタックディフェンスを通して細かいところを…。ジャガーズ戦の嬉しい気持ちは皆、持っていると思うのですが、おごらずにやっていきたい」

――戦い方のイメージは。

「順目、順目(同じ攻撃方向)にフラット(ゲインラインに近い位置)にアタックをしていく。その大まかなところは上手くいったジャガーズ戦と変わらないです。ただ、そのなかでバリエーションを増やしながらやっていきたいです。向こうも分析をしていると思うんで」

――ジャガーズ戦は12番でプレーしました。

「僕のずっとやってきたポジションですし、やりやすい部分はありました。ただ、カーペンターも13番に慣れているわけではないので、ディフェンスでは入れ替わったりもした。この形は、引き続きかなと思います」

――12番。ご自身からリクエストを出したのですか?

「特に希望は出していないですけど、田邉(淳アシスタントコーチ)さんも僕のベストポジションが12番だとわかってくれていました。どこかのタイミングで…とはずっと言われていて、それがジャガーズ戦だったというだけで」

――狼のかぶりものは、どうされたのですか。

「これは『ディフェンス頑張った賞』。試合後にネイサン(・メイジャーディフェンスコーチ)が選んで、僕の前はカーキー(ナンバーエイトのエドワード・カーク)、その前はカーペンターと、獲った人が順に手渡ししていく感じです」

――ツイッターで「選手間投票によるチーム内MVP獲得」を発表していましたが…。

「それはまた別。ダブル受賞です」

――オフはどう過ごしましたか。

「トレーニングをしながら、天理に帰ったり。あとは家族と過ごして…という感じです」

――天理といえば、天理大学の同級生でもある井上大介選手が初キャップ(国際間の真剣勝負への出場の証)を取得しました。4月30日、若手主体で臨んだ日本代表のスクラムハーフとして、アジアラグビーチャンピオンシップの韓国代表戦に途中出場。85―0で勝ちました。

「色んなキャップの取り方がありますが、あそこでキャップを獲れるというのは、あいつの運であり実力であると思うので、それは本当に嬉しく思っていますし、またこれからもチャンスはあると思う。しっかりアピールしてもらいたいですし、一緒に出られたらいいと思います」

――井上選手、今日の午前中はサンウルブズの練習に出ていたようですが。

「そうですね。午前中だけ、一緒にやりました」

――練習後にレクリエーションを楽しんでいましたが。

「だいたいいつも、月曜日にはああいう感じで。ミニチーム(選手数名で作られた4つのグループ)があるので、それぞれに分かれて、また明日からスイッチを入れられるように…と」

――ファンの方は、どうしても2連勝を期待してしまいます。

「フォースとも力の差はそんなにないと思っています。ホームでの試合も残り少なくなっていますし、しっかりと分析しながら、自分たちの形に持って行けるようにやりたい。2連勝は簡単じゃないと思うので、準備をしっかりとやりたいと思います」

――(輪が解けた後)屋形船、乗られたようですね。

「南アフリカから帰って来て、また結束できるようにチームディナーがしたいね、と」

――遠征中も、国内滞在組に近況報告のメールを送っていた。

「まぁ、そんなにしょっちゅうではないですけど、『コンディション、どうですか』と。僕もブランビーズにいた時(2014年、留学)、このチームにコミットできるのかを見出せなかった。『いる意味ない』と思う選手がいたら残念というか、もったいない。そういうのを失くしたいな、と」

――リーダーですね。

「僕も廣瀬さんたちからアドバイスをもらいながら。ディナーも、田邉さんに話して『やるべきだ』と言ってもらってやったことです」

――公表はされていませんが、サンウルブズの副キャプテン、なんですよね。

「…自称、です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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