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カナフレックスが日本生命に打ち勝つ!! 第91回都市対抗二次予選が近畿と西関東で開幕

横尾弘一野球ジャーナリスト
最後を締めた宮城慎之介(左から2人目)にチームメイトが笑顔で駆け寄る。

 新型コロナウイルスの影響により、第46回社会人野球日本選手権大会と第45回全日本クラブ野球選手権大会が中止となった社会人球界で、今シーズン唯一の全国大会が第91回都市対抗野球大会だ。7月5日に埼玉県と滋賀県で開幕した一次予選が現在も各地で開催される中、代表チームを決める二次予選が西関東と近畿で幕を開けた。

 西関東はクラブチームが激突。勝利を挙げた甲斐府中クラブ、全川崎クラブ、JFAM EMANONが、それぞれ9月2日に三菱パワー、東芝、ENEOSに挑戦する。また、近畿では一回戦2試合が行なわれ、第1試合ではニチダイが7回コールドの10対0で泉州大阪野球団に圧勝。第2試合では名門・日本生命と新鋭・カナフレックスが対戦した。

 1回表にカナフレックスは一死満塁のチャンスを築くも、日本生命のエース・阿部翔太は落ち着いて後続を討ち取る。その裏、日本生命も一死満塁とすると、五番の廣本拓也が先制の左前安打を放ち、皆川 仁の左犠飛、上西主起の2点二塁打で4点を挙げる。どんな強豪でも、予選の出足は硬くなるもの。日本生命にもそんな雰囲気が漂ったが、この4点で一気に力強さを見せつけると思われた。

 だが、2回以降もカナフレックスが押しているような展開となる。3回表も連打と四球で二死満塁と攻め立て、新人の澤田裕基が右越えに3点三塁打、続く福田優人も右前に運んで同点とする。さらに、4回表二死一、二塁から江頭 駿の右前安打で勝ち越すと、日本生命の阿部は山本隆広にマウンドを譲る。一方、カナフレックスの先発を任された大西健太は、日本選手権の大舞台でも見せた安定感が光る。2回から6回まで日本生命の強力打線を1安打に抑え、その間に2点を追加して7対4とリードする。

 日本生命も7回裏に上西のソロ本塁打で追いかけるが、9回表にカナフレックスが2点を奪った時は、さすがの日本生命もこれまでかという空気が流れる。ところが、9回裏に一死満塁の好機を築くと、ルーキー・竹村 陸の中前安打、原田拓実のライト線二塁打で1点差に迫り、代打の切り札・高橋英嗣が打席に。詰まった二塁ゴロの間に三塁走者が生還し、土壇場で9対9の振り出しに戻す。やはり、日本生命を倒すのは至難の業だ。

9回裏に日本生命が4点差を追いついたが……

 延長に入ると、日本生命の四番手・藤井貴之が調子を上げ、10、11回と三塁まで走者を進めるも、カナフレックスもあと1本を許さない。そうして、試合時間は4時間を超え、12回からタイブレークに。表のカナフレックスは、四番の北川倫太郎が左前に弾き返して無死満塁とし、押し出し死球と福田の左前安打で2点。裏の日本生命は、廣本が送った一死二、三塁から福富 裕の左前安打で1点を返したが、なお一死一、三塁ではランエンドヒットの打球がセカンドライナーとなって併殺。一瞬の静寂のあと、カナフレックスの選手たちは優勝したような雄叫びを上げた。

 タイブレークは運にも左右されるとはいえ、日本生命の4投手に23安打を浴びせたカナフレックスの攻撃に「あっぱれ」と言うしかないだろう。創部8年目で、まだ都市対抗出場はないが、名門撃破は大きな自信と勢いになるはずだ。また、ツキにも見放されたという印象の日本生命は、第四代表トーナメント二回戦から代表権獲得を目指す。3連勝しないと予選敗退が決まる厳しい道のりになるが、個々の選手の実力は高く、投打のバランスも取れている。何とか底力を発揮してもらいたい。

 このように、劇的な試合が当たり前のようにあるのが都市対抗二次予選の魅力であり、怖さだ。10月16日に予定されている九州第二代表決定戦まで、各地で熱い戦いは続く。

(写真=Paul Henry)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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