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「ブラック企業」に「ホワイト企業」? 「ブラック社員」に「ホワイト社員」? 

横山信弘経営コラムニスト
ブラック企業? ホワイト企業? 何だか、わからなくなってきた……

「ホワイト企業」という言葉に違和感を覚える

「ブラック企業」という言葉が随分と浸透してきました。「ブラック企業」とは、労務的に著しく問題があり、就職活動をする学生や求職者たちに推奨できない企業を指します。言葉の定義を正しく理解しているかどうかはともかく、新聞や雑誌でも頻繁に取り上げられ、「ブラック企業」という言葉の認知度は急速に高まっていると言えるでしょう。

そして昨今「ブラック企業」を反転させた言葉――「ホワイト企業」という言葉も登場してきています。経営コンサルタントして、この「ホワイト企業」という言葉には強い違和感を覚えます。「ブラック」と対比させて「ホワイト」ですか、短絡的すぎませんか、と問いたい気分です。

福利厚生の制度が充実し、社員が安心して働くことができ、離職率も低い企業が「ホワイト企業」なのでしょうか。不当に過剰労働を強いる「ブラック企業」を特定し、政府が指導するというのならわかります。これは糖尿病対策をするため、メタボリックシンドロームという言葉を広めた方向性と似通っています。おかげで「メタボリック」や「メタボ」という言葉は広く知れ渡り、一般的に使われるようになりました。働き盛りの中高年の方々が「メタボにならないよう気を付けないと」と意識することで、生活習慣病になるリスクを下げる効果があります。

しかし「メタボリックシンドローム」を反転した言葉は存在しません。痩せている人、マッチョで健康優良児など、「非メタボ」を特定する言葉などないのです。そういう意味でも「ホワイト企業」などという言葉は必要ないと私は考えます。

現場に入ってコンサルティングをしていると、わかります。外部から見ると「福利厚生が充実している」「離職率が低い」「育休を取りやすい」企業であっても、問題が山積みの企業はいくらでもあるのです。現時点で業績がよくても、再現性のない製品・サービスに支えられている企業も多く、3年後、5年後にどうなっているかはわかりません。現時点の制度や、一時的な数値で勧められる企業かどうかを判断するのは危険です。

「ブラック社員」がいるなら「ホワイト社員」もいる?

最近、さらに「ブラック社員」という言葉も聞きます。勤務態度に問題のある社員のことでしょうか。「ブラック企業」の風土に疑問を持たない社員のことでしょうか。インターネットで検索すると、いろいろな定義が散見されます。組織風土を乱す自己中心的な社員であれば「モンスター社員」のほうが私はしっくりきます。なぜかというと、「ブラック社員」などという言葉が出てくると、また反転したくなるからです。つまり「ホワイト社員」という言葉の登場です。

もし「ホワイト社員」を定義するなら、「ブラック企業」の共犯者的な「ブラック社員」を懲らしめるホワイトナイト(白馬に乗った騎士)のこと? それとも、勤務態度が素晴らしく、経営者が称賛するような成果を出す優良社員のこと? もしそういう社員がいたとしても「ホワイト社員」という呼称で指定していいことなどありません。その年、成果を出したというのなら「社長賞」を出すとか表彰すれば良いだけですから。

「ホワイト企業」という言葉も同じです。「著しく問題がある」の反対は「著しく問題がない」でもなく、「素晴らしく優良である」でもないのです。「著しく問題がある」の反意語など存在しないため、「ホワイト企業」などという言葉を使うこと自体に疑問がわきます。就活に励む皆さんを迷わせるような言葉は、あまり広めたくありませんね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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