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音楽著作権管理団体ASCAPのブロックチェーン・プロジェクトについて

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出典:ASCAPウェブサイト

米国の大手音楽著作権管理団体のひとつであるASCAPがブロックチェーンを活用したプロジェクトのプレスリリース(ASCAP, SACEM, And PRS For Music Initiate Joint Blockchain Project To Improve Data Accuracy For Rightsholders)を出しています。

フランスの著作権管理団体SACEMとイギリスの著作権管理団体PRS For Musicと共に、ブロックチェーンを使った新システムを構築するという発表です。IBMの協力のもとに、オープンソースのHyperLedger Fabricのブロックチェーンを使用するようです。

ブロックチェーンを何に使うかというと、レコーディング(音源)の国際標準コードISRC(International Standard Recording Code)と音楽作品の国際標準コードISWC(International Standard Work Code)の連携を管理することを(少なくとも当面の)目的としているようです。

楽曲コードと音源コード間の連携を正確に取るという目的自体は重要と思います(ライセンス料の正確な分配に不可欠です)が、ここで生じる疑問は「なぜそのためにブロックチェーンが必要なのか?」ということです。現在使用しているであろうRDBMSにコード間の対応を示すテーブルを追加すれば済む話ではないでしょうか。

もし、既存のデータの非一貫性や品質問題を解決したいという話であるとするならば、それはデータ・クレンジング・ソフト(と多大な手作業)で解決すべき問題であり、ブロックチェーンは直接的には関係ありません(どういうデータ保管テクノロジーを使うかではなく、どういうデータを保管するかの話です)。

普通にRDBMSで解決すればよい話にわざわざブロックチェーンを使おうとする「ブロックチェーン言ってみたいだけちゃうんか」案件がたまに見受けられますが、(プレスリリースから判断する限り)これもそのひとつのように思えます。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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