6月5日から始まるインドネシアの「レバラン」とは?捨てていた規格外コーヒー豆の種子でコーヒーアロマ?
2019年5月中旬、筆者がインドネシアに渡航した際は、「ラマダン」と呼ばれる断食月だった。
インドネシアでは、2019年は、5月5日から6月4日までの1ヶ月が断食月で、6月5日から6月6日は「レバラン」である。6月5日は「環境の日」でもある。
イスラム教には断食の時期があり、年によってその時期が異なる。断食が明けると「断食明け大祭」(レバラン)だ。日本のお盆休みや正月のように、レバラン前後の一週間ぐらいが休暇になる。
2019年のレバランについては、2018年11月13日、インドネシア政府が「2019年6月5日〜6日」と発表していた。2019年は、6月1日から9日までが9連休となる。一年で最も大きな休暇となり、インドネシアでは皆が楽しみにしているそうだ。
インドネシア・ジャワ島在住のysm141@ジャワさんが、ツイッターに、レバラン前日(6月4日)の現地の様子をあげておられ、掲載のご快諾を頂いた。
インドネシア滞在中に、日本とは異なる食文化を発見したので、いくつか紹介してみたい。
日没近くの空港では到着時に軽食が配布されていた
たまたまかもしれないが、ちょうど夕方(日没)近くに日本からの飛行機がジャカルタの空港に到着し、そこでは、箱に入った軽食が配られていた。
箱を開けると、パン・水・ナツメ(ナツメヤシの実のドライフルーツ。デーツとも呼ばれる)が入っていた。
エミレーツ航空は、2019年5月、ナツメを100万個提供したそうだ。
断食を終えたら「まずはデーツ」
長い時間にわたる断食を終えて、すぐにボリュームのある食事をかきこむのは、消化器官に負担をかけてしまう。
そこで、まずはナツメヤシの実のドライフルーツ(デーツ)を食べる。
ラマダン期間中には、スーパーマーケットなどに、たくさんのデーツが積まれる。
「預言者ムハンマドは、一日の断食が終わるとデーツを食べた」という言い伝えもあるそうだ。
断食明けには「クパット」と呼ばれる、ヤシの葉で編んだものの中にコメを入れて調理する、餅のようなものも定番だ。
ラマダン中は夕方のレストランが予約でいっぱい!
ラマダンは断食月。といっても、1ヶ月間、絶食をするわけではない。日没(日が沈んで)から、翌朝、日の出まで、つまり、夕方以降から翌日の日の出までは、食事をすることができる。
インドネシア滞在中は、レストランで夕食を予約する方がたくさんいた。ショッピングモールなど、レストランが集中する場所では、どの店もほとんど予約でいっぱい・・・という場合もあった。
インドネシア、西ジャワ州の都市、ボゴールのショッピングモールにあるフードコートは、家族連れやカップルなどで賑わっていた。
スーパーにはラマダン・ハンパー(食品詰め合わせ)が山積み
スーパーマーケットやショッピングモールの食品売り場には、"RAMADAN HAMPERS(ラマダン・ハンパー)"と書かれた、食品の詰め合わせパックがたくさん積まれていた。長期休暇中、帰省する時など、このハンパー(詰め合わせ)をお土産に持って行くのだそうだ。
かつてイギリスの植民地だったマレーシアでも、同様の習慣があるとのこと。
インドネシアではスンバコ(Sembako)とも呼ばれるらしい。
都市部と地方とでは違いがあるようだが、買い物は、人々の楽しみのようだ。
チップス人気
これも地域によって異なると思うが、ジャカルタ市内の各ショッピングモールやスーパーマーケットの食品売り場では、ポテトチップスなどの揚げた菓子が人気だった。
仕事で渡航した際、お世話になった、ASEAN(アセアン)事務局の方に教えて頂いたのが、芋の一種であるキャッサバを薄くスライスして揚げた「キャッサバチップス」だった。
普段、ポテトチップスなどを食べないので、どうなのかな・・と思いながら買ったら、バーベキュー味の製品は、一袋すぐ食べてしまうほどだった。
他にも、ポテトチップスを砕いてチョコレートに入れた、板チョコタイプの「ポテトチップスチョコレート」も、意外なほど美味しく、おしゃれなパッケージだった。
コーヒーでアロマ作り
今回、筆者が出張した目的は、農林水産省ASEAN事業の寄付講座の一環で、ボゴール農科大学の大学院生たちに、農産物を食品ロスにしないための商品開発のワークショップや食品ロスの講義をするためだった。
2017年から渡航して各大学でワークショップと食品ロスの講義を実施しており、今回のインドネシアで6カ国目となった。
リアルタイムでアンケートを実施でき、その集計結果を瞬時にその場にいる全員に共有できるレスポン(respon)を使い、「どの農産物を商品開発したいですか?」と聞いてみた。
29名の結果は下記の通りとなった。
コメを希望した院生は1名のみだった。
一方、コーヒー希望者は9名もいた。
グループに分かれて、それぞれの農産物を加工することにより食品ロスにせず、日本へ輸出するなどにより、ビジネスとしても成果を得られる商品開発に取り組んでもらった。
ラマダン(断食月)中なので、昼休みも食事なしで、みな熱心に取り組んでいた。
そして、5つのチームが順番にプレゼンテーションを行った。
中には日本語で話し、日本語で挨拶するチームも・・・・(コーヒーチーム)。
生徒たちからは熱心な質問も次々寄せられた。
日本の青森県や愛知県に長く住んでいた経験を持つ、通訳のデディさんが、日本語からインドネシア語に訳してくれた。
プレゼンの結果、最優秀賞が選ばれ、コーヒーチームとマンゴーチームに、筆者が持参した日本のお菓子が進呈された(他のチームにも)。
最優秀賞受賞チームの1つ、コーヒーチームが発表した中には、これまで捨てていた規格外コーヒー豆の種を使い、アロマ(香水)を作る、という興味深いものもあった。
規格外のコーヒー豆かどうかは別にして、実際にコーヒーアロマは市販されており、大学への行き帰りの車の中に置かれていた。なかなかの香りだった。
香りへのこだわりが、いろんなところで感じられた。
前述のysm141@ジャワさんも、レバラン直前に市場に出回る、いい香りの花のことについて投稿しておられる。
賞味期限切れの食品、警備隊が立入検査で摘発?!
これは自分自身で確認できてはいないのだが、インドネシアでは、警備隊が立ち入り検査を実施し、賞味期限が切れている食品を摘発しているとのこと。
2019年5月16日付のじゃかるた新聞に掲載されているのを紙の新聞で読んだ。
「賞味期限は美味しさの目安に過ぎないはずだがインドネシアでは摘発の対象になるのか」の旨を、じゃかるた新聞の窓口にメールで伺ったが、8日間お待ちしてお返事はなかった。じゃかるた新聞公式ツイッターアカウントにもお送りしたが、お返事はなかった。
アジア経済ニュースは、2019年5月27日付の記事で「マレーシアではラマダン中の食品ロスが一週間で20万トンにも及び、年計算では1,000万トンになる」と報じていた。
異国の食文化への敬意を
以上、インドネシア渡航中に得られた情報を紹介した。
「食」は、単純に栄養素を摂るという行為ではなく、その国で暮らす人の考え方や文化そのものである。
食品ロスの観点で言えば、他の国では捨てているけれども日本では食べられているものもあるし、その逆もある。
単純に「捨てている→だから悪い」とは言いきれない。そこには違う考え方があるかもしれないからだ。
自国とは違う食文化を尊重し、理解する努力をしていきたい。
謝辞:インドネシアの写真掲載をご快諾頂いたysm141@ジャワさんに感謝申し上げます。