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東京仕込みの本格焼鳥で地元をトリコに。九州の鶏の魅力が随所に光って【貴/福岡】

今回、冒険するのは福岡県福岡市・高砂の「貴」。福岡で「やきとり」といえば、鶏も豚も牛も焼き上げる博多串焼きが主流だった。それが最近は〝鶏〟にこだわり抜いた焼鳥専門店も増えている。ここ「貴」の店主・細永さんも10年前までは東京の焼鳥屋で研鑽を積んでいたそうだ。これは、期待の予感。

焼鳥フルコースは〆まで鶏三昧

西日本一の繁華街、中洲。その喧騒から逃れるように川を渡ると一転、町の落ち着きを肌に感じる。なかでも高砂は観光客というよりも地元客が通うような店が集まる一帯。ここ「貴」もその一つだ。

店内は潔く、L字カウンターだけ。居酒屋のような賑々しさはなく、むしろしっとりと。焼鳥と1本1本向き合いたい……そんな客が自然と集まってくる店だと思う。

よだれ鶏、鳥刺し、マリネサラダ
よだれ鶏、鳥刺し、マリネサラダ

前菜、焼鳥に〆のごはんまで付いたフルコース。蕎麦前ならぬ〝焼鳥前〟の肴は、むね肉のよだれ鶏に、鳥刺し、マリネサラダ。むねにもも、ささみ、レバー。

これも、しっかり管理・処理された鶏が出回るという九州ならではお楽しみといったところ。ついついビールにいってしまったのだけれど、この流れなら、最初から白ワインや日本酒で……というのもアリかもしれないなぁ。

ささみ
ささみ

せせり
せせり

「ふくらはぎ」の濃いうまみにKO!

「貴」が焼鳥に使うのは鹿児島の地鶏・黒さつま鶏がメイン。部位によってはもっと若い鶏も使うこともあるし、今話題の高坂鶏を交えることもあるようだ。

待ちに待った1本目は、定番のささみ。噛めばふっくら、しっとりほぐれていく。表面はややオイリーに仕上げていて、トゥルンとした口あたりが印象的。

2本目のせせりも鉄板の味わい。このままスタンダードなネタが続くものかと思ったら……

ふくらはぎ
ふくらはぎ

ここで現れたのが、ふくらはぎ! もも肉の下部にあるうまみ豊かな肉だけを集めてミルフィーユ状に打った串だ。とくに地鶏のふくらはぎは好物。全国を見てもふくらはぎの肉だけでネタにする店は少ないので、これは嬉しいサプライズ。

噛めば「濃さ」が口の中に押し寄せてくるよう……。ギュムギュムと跳ね返るように弾力豊かで、うまみの余韻もじんわり。うーん、3本目にして今日イチの予感がする(おかわりしたい)。

レバー
レバー

スナップえんどう
スナップえんどう

やげん軟骨
やげん軟骨

こうなると俄然、食欲に火が付くというもの。レバーはしっとり、とろけるよう。九州だから甘めのタレかと思いきや、思ったよりもくどくない。あと味も軽く、何本でも食べられそう。

さらに、サクサクと砕けるスナップえんどう、コリコリとしたやげん軟骨。食感の緩急を楽しむかのようないい流れ。

厚揚げ
厚揚げ

お、ここで厚揚げ。最近は厚揚げを串ネタにする店も減ってきているのでちょっと新鮮。

火傷上等。ハフハフと息を弾ませる。厚揚げは熱すぎるほどいいんだ。

手羽
手羽

つくね
つくね

さぁ、手羽が出たなら、寂しいけれどコースも終盤ということ。黒さつま鶏の手羽は地鶏らしいうまみをもっている。手羽中と手羽元を一つにまとめて、ボリューム抜群。

コース最後のネタはパンッと張りのよいつくね。もも肉やふくらはぎは串に使っているので、このつくねはむね肉が主体だそう。味わいはさっぱりとしながらもうまみを閉じ込めた、〆にふさわしい1本といえる。

そぼろ丼
そぼろ丼

最後は粗挽きのそぼろ丼。いやぁ、このフルコースで物足りないなんてことはないと思う。しっかり串を楽しめるうえ、文句なしに腹も満たされる。まさに〝鶏三昧〟だ。

帰り際、炭を片付けていた細永さんに聞いてみれば……修業先の東京を離れ、地元に店を開いてからもう10年になるのだとか。「博多串焼き」ではなく、あくまでも「焼鳥」を貫いた10年。鶏も試行錯誤を重ね、黒さつま鶏に行き着いたのだと思う。

1本1本の串に表れているように、「貴」は実直な店だ。福岡まで900km弱。東京の焼鳥文化の種は、しっかり花開いていた。

店舗情報
【店名】
【最寄り駅】西鉄平尾駅
【住所】福岡県福岡市中央区高砂2-13-7
【予約】090-5471-5983
【定休日】不定休
【串のアラカルト】なし
【鶏メモ】黒さつま鶏、日向鶏、高坂鶏ほか

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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