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【安物は買うな】排気量上がってもパワーダウンするかもよ?激安ボアアップキットの罠について(実体験)

DIY道楽のテツ元プロの溶接工で2児の父。バイク大好き&ママチャリ乗ってます

こんにちは!今回は「ボアアップキット」の意外な落とし穴についてお話ししたいと思います。ボアアップ、つまり排気量を増やすことで一見パワーが上がるように思えますが、安易に手を出すとパワーダウンすることも・・・。その理由と対策について詳しく見ていきましょう。

この記事から学べること:

・ボアアップキットの基本的な機能と目的

・安価なボアアップキットに潜むリスク

・パワーダウンが発生する技術的な原因

・パワーダウンを避け、望む性能を引き出す方法

●そもそも、なぜボアアップキットでパワーダウンするのか

ボアアップとは、シリンダーの径を大きくして排気量を増加させることです。理論的には、排気量が増えることでより多くの空気と燃料が燃焼室に取り込まれ、結果としてエンジンの出力が向上するはずです。しかし、実際にはエンジンの内部構造に対する理解が不十分であるため、改造したエンジンが元の設計意図と異なる動作をすることがあります。

特に安価なボアアップキットは、必ずしも各バイクの特性に合わせて設計されているわけではありません。たとえば、排気ポートの位置が適切でなかったり、内壁にバリが残っていることで空気流が乱れたりすると、エンジン性能が低下します。

●実例!排気量上がったのにパワーダウンした?

安価なボアアップキットを買ったのがそもそもの始まり。

で、届いたのがこちらのキット。

ノーマルと比べるとボアの大きさの違いは一目瞭然。排気量が50ccから65ccへアップします。たかが15cc?と思うことなかれ。数値は小さくとも実に30%の排気量アップだから、仮に1000ccだとしたら1300ccになっちゃうんだからその変化は期待したいところ。

加工バリが残っていることもあるという口コミだったので、シリンダー内壁をチェックしてみました。裏を見てびっくり。ぎりぎりまでボーリング加工されたスリーブが薄いったらありゃしない。

ノーマルのシリンダーに近いものをベースにボーリング加工したのでしょうか? 元々の排気量の設計ではないので スリーブが薄くなってしまうのは当然のこと。

・・・うん?ボーリング加工??

シリンダーを上から見たら強い違和感を感じました。すかさず、排気ポートの高さを測ってみると・・・

ノーマルに比べて約2ミリも違う!!

ぎゃーす。

●排気量を上げるとポート高さが変わっちゃうカラクリ

どうして排気ポートの高さが下がってしまったかというと、理由は簡単です。シリンダーを横から見ると、排気ポートはご覧の通り斜めに走っています。

なので、ボーリング加工で単純にボアを拡大してしまうと・・・ポートの位置が下がるのです!

こりゃ大変だ。

何が大変かというと、2サイクルは4サイクルのようにバルブの開閉によって吸気排気圧縮がしっかり制御されていません。爆発燃焼によって排気ポートから飛び出した圧力がチャンバー内壁に反射して戻ってきて、その排気脈動によって吸気された混合ガスを燃焼室に閉じ込めるという、なんとも計算しづらい複雑な性質をもっているのです。

構造はシンプルなんですけどね(笑)

ややこしい話は割愛しますが、ノーマルに比べて2mmも排気ポートが下がるということは、エンジンの性格がガラッと変わってしまいます。

暴力的にシンプルに言うと、ピーク回転が下がっちゃう。

高回転型のエンジンが、中回転型のエンジンになるということ。

それはつまり、スポーツバイクがカブみたいなビジネスバイクになる感じ。

その予想は当たっていて、このボアアップキットを組み付けてから実際に走ってみると、パワーバンドの回転域が全体的に2000回転も下がりました。

低回転でトコトコ走るエンジンになっちった
低回転でトコトコ走るエンジンになっちった

ボアアップして排気量が上がったのに、体感できるピークパワーは下がってしまったのです・・・ ・・・。

ちなみに、吸気ポート(掃気ポート)の高さも変わってしまうので、エンジンの性格は全然別物になってしまうのです。

排気量アップしてパワーアップするはずが、エンジン回転数が大幅に下がってむしろパワーダウンしてしまったというオチ。

●適切なボアアップキット選びと取り付けの重要性

正しいボアアップキットを選び、適切に取り付けることで、エンジンは最大限の性能を発揮することができます。キット選びにおいては、自分のバイクのモデルに合ったものを選ぶこと、また、購入する前にそのキットの評判やレビューを確認することが大切です。取り付ける際には、特に排気ポートの位置やシリンダー内の加工精度を細かくチェックし、必要であれば専門家のアドバイスを求めるべきです。

●具体的な問題解決のプロセス

1.適切なボアアップキットを選択する:自分のバイクと完全に互換性のある信頼できるメーカーのキットを選びます。

2.詳しいひとに相談する:取り付け前には、可能であれば経験豊かなメカニックに相談し、そのバイクにボアアップキットが適切かどうかの意見を聞きます。

3.取り付けの際の精度を確認する:シリンダーの内壁、排気ポートの位置など、エンジンの動作に直接影響する部分の精度を入念にチェックします。

4.テストランを行う:取り付け後は、必ず低速から高速まで幅広い条件でバイクをテストし、エンジン性能に異常がないかを確認します。

まとめと結論

ボアアップキットは確かに魅力的なパフォーマンス向上の方法ですが、選択と取り付けには慎重さが求められます。適切なキットと正確な取り付けがパワーアップの成功の鍵です。安易な選択が逆にパフォーマンスを落とす原因になり得るため、じっくりと検討し、必要なら専門の知識を持つ人に助言を求めましょう。

残ったシリンダーはスタッフが美味しく加工しました
残ったシリンダーはスタッフが美味しく加工しました

もっとも、トラブルをも楽しめて、そこからエンジン加工をしたいという猛者(?)にはむしろおすすめですが(笑)

この記事が皆様の参考になれば幸いです。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました~!

元プロの溶接工で2児の父。バイク大好き&ママチャリ乗ってます

こんにちは!DIY道楽のテツです。 父から「無いものは作る」精神、母からは道楽者の血を受け継いだ47歳二児の父です。 趣味は古いバイクや自転車をレストアして新たな命を吹き込むこと!バイクや自転車(特にママチャリ)、車のレストア、改造、修理、メンテナンスを楽しんでいます。また、何かを育てたり維持管理するのも好きなので、家庭菜園や掃除もやっています。 DIYは金属加工、100ボルト溶接、木工、家のリフォーム、工具の使い方など幅広く取り上げます。高価な工具も良いですが、コスパの高い百均(100円ショップ)の工具の使い勝手もレビューしていきたいと思います。お付き合いのほど、よろしくお願いします!

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