一人暮らしの食生活のよりどころの変化をさぐる
衣食住の言葉にある通り、日常生活において食事は衣服や居住地と共に重要な要素。一人暮らしでは自分の食事は自ら用意する必要があり、調達場所の確保は言葉通り死活問題となる。その時代による変遷を、総務省統計局が2015年9月に発表した「2014年全国消費実態調査」の単身世帯に係わるデータから確認していく。
次以降に示すのは単身世帯における消費支出(税金や社会保険料をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)のうち、消費先が調査票上で明記されている、食料に該当する項目の金額に関するルート別金額シェア。食料に該当するのは料理のための材料やお弁当などの出来合い品、お酒、調味料、さらには学校給食、外食費全般も含まれる。また、直近分となる2014年分で「その他」項目に関するデータ上の不具合の可能性が強い状況が確認されているため、その項目をのぞいた上での比率再計算を、検証可能なすべての年において実施している。
まずは30歳未満。
若年層はコンビニを多用するイメージがあるが、時代の流れにおいてもあまり変化が見られない。それどころか今件の食料に限れば、1999年以降漸減している。定価販売を嫌ってのものと見てよいだろう。昨今ではコンビニは惣菜関連に注力している動きもあるが、少なくとも単身若年層世帯には効果は無い。
同時に一般小売店も減少しているが、これは「店舗減」「お値打ち商品が少なめ」、特に前者の影響が大きい。例えば昔ながらのお豆腐屋さん、八百屋さん、お肉屋さんなどがどれだけ自分の行動領域内に残っているか、改めて思い返してみれば、理解はできるはず。
代わって増えてきたのがスーパー。このことから、若年層の食生活は、「少しでも安いものを調達しよう」との意向が強まりを見せていると考えてよい。
続いて30歳~59歳。
一般小売店の減少、スーパーの増加は傾向・理由共に若年層と変わりない。注目すべきはコンビニの項目で、わずかずつではあるが増加の動き示している。直近でも比率そのものは若年層にはるかに及ばないが、今後コンビニ利用比率において、逆転現象が起きる可能性は十分にある。ざっくばらんではあるが、この20年間に一般小売店での利用が20%ポイント減少し、その減った分をスーパーとコンビニが半分ずつ分け合った形となっている。
最後に60歳以上。
かつては近所の一般小売店を多用していたが、大型スーパーの進出や地域小売店の閉店、価格の問題などで利用性向が逆転。直近では6割近くをスーパーに頼っている食生活を送っている。コンビニはわずかに4.4%。年と共に増加しつつあるが、まだ誤差の範囲でしか無い。また、デパ地下の活用もしているが、利用度合いに変化はあまり見られない。むしろ他の年齢階層では誤差範囲だったネット以外の一般通販の利用がそこそこ確認できるのが興味深い。
3つの年齢階層に仕切りわけして、一人暮らしにおける食料関連の購入先の変異を見た。意外なのは繰り返しになるが、若年層の食料に係わる出費におけるコンビニ利用額比率に、明らかな減少傾向が見られること。若年層の生活が厳しさを増し、より安価に食品が調達できるスーパーへのシフトが確認できることからも、時代の流れと共に定価販売のコンビニの利用をためらい、安い場所を探し求める動きが加速化しているのだろう。
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