Yahoo!ニュース

ウクライナ軍、ソ連製地対空ミサイルで"レーザー誘導爆弾"搭載の監視ドローン「Orlan-30」撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
ソ連製地対空ミサイルStrela-10(写真:ロイター/アフロ)

2023年5月にウクライナ軍の防空部隊がソ連製の地対空ミサイル(surface-to-air missile:SAM)「Strela-10」でロシア軍の監視・偵察ドローン「Orlan-30」を迎撃している動画を公開していた。カメラの精度が高い「Orlan-30」にはレーザー誘導ミサイルも搭載されていた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

ロシア軍は主にロシア製の監視・偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまに「Eleron-3」でも偵察を行っているが、ほとんどが「Orlan-10」か中国製の小型民生品ドローンで監視・偵察を行っている。そのためカメラの精度が高い「Orlan-30」が撃破されるのはめったに見かけない。しかもレーザー誘導ミサイルを搭載していた「Orlan-30」は珍しい。

ウクライナ軍では撃破したロシア軍のドローンや戦車、輸送トラックなどをSNSで公開して世界中にアピールしている。ロシア軍がウクライナに軍事侵攻してから数か月は、ロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」を破壊した写真も多くSNSで公開していた。だが「Orlan-10」以外の監視・偵察ドローンが使用されて、それを迎撃して破壊したものを見かけることは少ない。

「Orlan-30」以外では「ZALA 421-16Е2」といったレアなドローンが迎撃されて写真や動画が公開されることもあるが、ほとんどが監視ドローンなら「Orlan-10」、攻撃ドローンならイラン製軍事ドローンの「シャハド136」である。

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。今回のレーザー誘導ミサイルを搭載した「Orlan-30」も地対空ミサイルによる破壊なので、明らかにハードキルで破壊されている。

このような監視・偵察ドローンは発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。

監視・偵察ドローンに対してこのようなミサイルシステムで迎撃して破壊するのはコストパフォーマンスが低い。だが偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。ロシア軍に対しての迎撃能力の誇示にもなり、抑止につながりうる。

▼ウクライナ軍防空部隊がソ連製の地対空ミサイルでロシア軍のレーザー誘導ミサイルを搭載した監視ドローン「Orlan-30」を迎撃(2023年5月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事